『斜陽の森』(5.1.1.)

森のざわめきが響く

鳥の囁きが渡る

川のせせらぎが絶えない

森の住人は
遠くの明かりを
見つめ

呟く
生きとし生けるもの
全てが囚われ人か、と

――明滅する明かりが
僕を引き戻す
いつの間にか
夜になったらしい

筆を置いた僕が
見た空には朧
涙浮かぶのは何故

絵の具を洗い落とし
ニスの薫る木に囲まれて
眠りに付く

目の前に
斜陽の森


『斜陽の森〜again〜』(5.8.8.)

幾月、幾年を経て
僕は久しぶりに筆をとった

有りはしない
でも、側にある
あの場所を描くため

森のざわめき
鳥の囁き
川のせせらぎ

そして
一人眠る
森の住人

蔭を落とした時
知らず溢れた涙を拭う

手に入らない幻想は
いつも優しく僕を誘う

振りきる様に進めた筆で
描き上げた絵を

窓のないアトリエに
そっと吊した

飛び立てない僕等のために


『Dear…』(Deep Clear Eyes)

慟哭、嗚咽、
大地に叩き付ける感情
吐く呪いの言葉で己を縛り

記憶、過去
それらは全て理想化されながら
心の中に居座る

どうしてだろう
もう逢えない事が
分かっているのに

どうしてだろう
初めからバッドエンドは
決まっていたと言うのに

何故と問うのは愚者の証明
されど問わずにはいられず
されど叫ばずにはいられず

どうしてこんなにも
愛しいのだろう
恋しいのだろう

人は大概にして
矛盾をその内に抱える
分かっていながらも
意味がないことなども
分かっていながらも
所詮は過去に浸るだけだとも

全ての出来事に
理由があるわけではない
しかし人は必然を騙る

全ての行動に
意味があるわけではない
しかし人は自浄を騙る

冷たい接吻(キス)の後
氷に抱擁
溶けて崩れたのは氷か僕か

……ああ
ああ何て
ああ何て澄んでいるのだろう

青にして藍
濃紺にして蒼
そして透き通る水色

夢の中での呼び声
逢えないと分かりつつも
さ迷い、さ迷い

上も下も右も左も
前も後ろすら分からぬ中
たゆたい、流され

泳ぎ
泳いで
泳ぎ疲れた岸で

貴女は微笑んだ
貴女が微笑んだ
そして僕等は

別れ(サヨナラ)のキスを交した

風がまた緑に変わる
積乱雲が遠のく
花火にはしゃぐ子供の声

潮騒
砂浜
何度も書いたハートマーク

アクアマリンの指輪
その片割れを
波に拐わせる

ターコイズのネックレス
それは今でも
写真立ての裏側の箱に

天に昇った
麦わら帽子

背を向けて
歩いていこう
君のいない世界を

君を無くした世界を


『art-ifiθal deθ-tiny,deθ-truc-tiOn』(CaptivAte〜浄化〜)

皹割れた大地が無辺に広がる
赤く燃える 空に鉄色の雲
ぽつり 落ちる 雨の雫は やがて滝となり全てを洗うだろう

大地に 所々ある 赤色の塊
その中に 一人の少女が
祈る姿勢のまま

嘆きは 花弁 涸れおちてなお 空を、地を、天を舞う
望みは 雪晶 留め置いても やがて消えゆく 空へ、地へ、天へ

響く金擦り音 荒い息音
片目は潰れ、片耳はもがれ、血は流れ
それでもなお

「あなたにあえて わたし 幸せだった…」
過去形は別れのしるし、訣別 永訣
灰を誘う 赫い、赫い月

「俺もだ おまえに逢えて 本当に良かった…」
過去形は嘆きのしるし、詠嘆 嘆息
三歩も動けず 倒れ 響く

慟哭

地から天に向かうように突き立つ 赤黒い交差した二本の柱
赤色が雨で流れ落ち 見えてきた文字
『勇敢な戦士にこの「千騎長」の称号を与えん』

何の役にも立たないのに
何の役にも立ちはしないのに
何の役にも立ちはしなかっただろうに

一本の柱は重みで倒れ
もう一本は、その重みで折られて倒れた

人々のエゴで始まった戦争は
人々のエゴを巻き添えに終結した
全てを巻き込んで終結した

乾ききった 大地のように
涸れきった 大海原のように
'無生産'を 大量に生産して

逃げる場所など 消してしまったのに
それでも逃げ場所を探す者達
かつての指導者 エリートという名の無責任者ら

「自分だけは 生き残れるつもりでいたのかしら?」
また一つ 銃声が告げる 死出の旅立ち

祈る少女は 涙を流す
その凍てついた 瞼から
赫く染まる 小さな足へと

遥か遠く また響いた巨大な爆破音
「嵐が来るね すぐに避難しないと」
避難する場所なんて あるはずがないのに

全てを優しく包みこむ 闇が迫ってくる
まるで、光に誘われる蛾のように
ふらり ふらりと闇の方へと

「いつしか 雲が切れて 光が差すだろう」
そう信じていた なのに
そう信じていた だから

力尽きて 倒れ
体が冷えて 心が安らいでいく
その狭間に 見えた 最期に

大地を 僕らを 烙々と見下ろす 赫い月


『まっさらな世界で』(The end of my spiritually)

まっさらな世界
足跡が次第に薄らぐ

掌を
そっと広げてみると

舞い落ちる壱と零
崩れていく世界の断片

まるで桜のように
まるで雪のように

遠くを見つめながら
煌めきの残り香を

身体の停止

遠くを見つめながら

霞む視界

遠くを

音が消え



断絶

零壱の断片が
全てをまっさらに染めあげる


『4 whom??』(CaptivAte〜浄化〜)

瞬くフラッシュ
飛び交う怒声
感情だけの罵声だらけの
人のアーチをくぐり

泣き崩れる人
自らを騙す偽りの涙
単なる劇場効果
本物の涙はここにはない

常識を歪め
それを常識と教え
常識を蹴散らし
それを常識と騙り

誰のための雑言
誰のための非難
パンドラに見える宝箱
みんな表面をなぞるばかり

誰も批判しない
誰も宣言しない
助言者のようなカオス
みんな混沌に染まるばかり

何故問わず
何故問えず
力で押し付け
力でねじ臥せ

表装だけ削った
浅薄な言葉ばかり飛び交い
歪曲したのはどちらか
愛出来ぬ哀しさよ
愛否定の愛しさよ

誰を否定した?
誰の肩を持った?
真理を隠しながら
デマゴーゴス共は騙る
彼は悪、これも悪
彼は正義、これは正義

悪の所以も言えやしないで
悪の根拠も作り上げて
二元論に退化した脳
衆愚の民に早変わり

暁の太陽の下
赫月の支配する世界

誰も味方はいないのかしら?


『イカロスの後継者』(CaptivAte〜浄化〜)

《それでもまだ、空を見続けるの………?》

荒れ狂う空
乱れる黒雲に
何度痛めつけられ

《それでもまだ、空を恋しく思うの…………?》

吹きつける風の
その鋭い刃に
幾度傷つけられ

《それでもまだ、空に笑顔を向けられるの……………?》

雷撃で羽根を崩され
炎で羽根を焼かれ
地に打ち付けられようとも

でも
君はいつも
笑顔で話すんだ

《好きになること、愛しく思うことに、………何の理由もいらない
例え痛めつけられ、傷付いて、地に落とされても、………それでもなお愛しく思えるから》


『ホワイトアウト』(V)

凄惨に………
ただひたすら凄惨に
雪は降り続く

全てを埋め尽すように
全てを包み込み
押し流すかのように

可憐、など
人の夢、など
全ては世迷い事に過ぎない

それは壁
思い上がりし人共を
押し潰さんとせんがための

それは刃
脆弱なる命を
奪い去らんとする死神の

凄惨に………
ただひたすら凄惨に
雪は降り続く

全てを白く染めるまで
全てを白に帰するまで


『麦藁の行方』(NORTH)

風の吹き晒す草原で
女は一人
遠くを見つめ立ち尽くす

神聖なる地を汚した
狼籍者達は
全てを奪い尽し

この地を統べる者と
称し、居座った

この地を取り戻すため
男達は立ち上がり
その陰で

女は一人
風に舞う麦藁帽子の
行方を見つめる


『inFilTratIon』(Innocent Walls)

警鐘が鳴り響く
どこかでしくじったらしい
排敵トラップの作動まで
そうかかりはしないだろう

爆音と破壊音
排敵のための自傷行為
派手にやればやるほど
こちらは逆に助かる

光学ステルスを作動
警鐘が一先ず止む
モニター上に映る
'missing!'の文字が目に浮かぶ

にやり笑みでTargetを確保
同時に派手に鳴る警鐘
シャッターがドアを塞ぎ
四方より迫り来る壁

警鐘、轟音、銃声
通気ダクトより漏れる風音
蹴破れぬ壁を蹴上がり
置き土産を残して

脱出、そして轟音

吹き付ける熱風
同時に鳴る通信機
漏れるノイズの羅列に
頷き、漢は炎に背を向ける


『執行者』(Karma)

地より抜きし
血染めの刃

全ての罪を
一身に受け

全ての罰を
一身に負う

その行動は
建前のみ正当
実在はただ
他者を傷付けるもの
他者を殺めんとするもの

例えその行為が
他者に憎まれる
それだけの物でしかなくとも
例えその行為が
他者に恨まれる
それだけの物でしかなくとも

例えその事が
己の体に
消えることなき傷がつけども
例えその事が
己の心に
癒えることなき傷がつけども

かの者は
こう呟くだろう
己に語るように
己に呟くように


これも業なのだろう、と


『或る男の言葉』(冥)

戻れはしないことなど

生きて帰れる希望は

無いことなど

初めから知っていた

承知していた

何故お前は行くのかと

問うものの気持も分かる

命を賭してまで

行う価値があることなのかと


………俺はその言葉に

笑顔で答える事が出来る


『Yes.』


例え行く先が

只の価値のない屑だとしても



(作者注:作成時、冥王星が惑星から外されました)


『Why?』(AA)

問えど還らぬは必然
されど問わずにいられぬも
これまた必然

まやかしの崩壊
信じたのも自分
信じさせられたのも自分

自己の存在の基点
支える一つが
幻は幻へと

冷たい鉄の扉を
骨が折れ手が砕けるまで
打ち据え

喉が壊れるまで
体を創る全ての想いを
叫び続け

その叫びは
風になり音になり
打撃になり

打つものは
誰の心か

断末魔にも似た
その叫びに

答えられるものは――――






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