『信義の名の元に』(valut of heaven)

滅びゆく世界
神聖なる廃墟の上

信念という名の
白銀の鎧に身を包みし
聖騎士

義勇という名の
漆黒の鎧を身に纏いし
黒騎士

右手には己が力を
左手には己が技を

そして頭に
己が心を封じ

今宵もまた
刃を交わす

互いが信義の名の元に


『人外魔郷』(DUE TOMORROW)

謎の声が響く
断末魔の如く響く
『わきゃきゃきゃきゃ』

辺りから
『くぁwせdrftgyふじこlp』

過剰、過信、怠惰
合わさった先に見える
地獄
それは報い
『何だこの量は!』

呪詛の如く響く
意味無き単語の羅列
『ぬるぽぬるぽぬるぽぬるぽ』

そして処罰
『ガッガッガッガッガッガッ!』

ジェットコースターの緊張感
心がはち切れそうな休憩時間
『嗚呼、後残り九秒か………』

『ハイ!開始!』

人体の限界を越えた
課題の壁
作り出したのは自分

やるべき事は
壁を削ること



の前に責任転嫁
『そもそもこの鬼スケジュールは何だ!』



夢オチであることを願う
精神に落ちる雷は
…………不可避
『くぁwせdrftgyふじこlp』


『バルハラ』(Narcissus At Oasis)

一枚の花びら 靴痕が刻まれ
たどたどしく翔ぶ 白い蝶
角ばった黒い花 肩で支える僕
招き入れる前に 力尽き

また一つの花を 踏みつけて
また一つの花を 踏みにじり
「これで何度目?」

耳を壊していく 破壊の響き
初志を擦り減らす 休み無い緊張
腕を砕いていく 細かい振動
夢物語の涯の 逃れようのない現実

銃声

遠のく意識 散りゆく視界の断片
目の前に飛び散る赤い飛沫は
振り向かず突き進み倒れていく仲間は
……青空を見なくなって どれ程だろう………

風になびく 緑の絨毯
その先に 湧く泉のほとり
一面の 水仙の花
いつか見た 心のオアシス

いつからこの風景を忘れたのか
いつからこの安らぎは消えたのか
いつからこの場所を壊したのか
いつからこの花を踏みつけていたのか


『far away』(HORIZON)

〈僕等は、飛べる〉

地に描かれた設計図
端端の単語は読めるが
意味はとれない

横には壁画
かすれながらも
理解できたこと

〈僕等は、飛べるんだ〉

古きに交した密約
人には翼を与えられていた
それを棄てたのは人だった

鳥籠の中を望み
空を眺めるだけで
満足していたんだ

〈僕等は―――〉

設計図の文字が光り
壁が動きだして
現れた扉

開き出す扉
さぁ
行かなくちゃ

〈飛べる〉

地平線の向こうへ


『軌跡』(traces)

深く
潜る
多大な記憶の奔流

湖に落つ一滴は
漣となり響く

瞼開きながらも
映さない視界

水面
像は過去を遡る

この場所と過去を繋ぐもの
形無くもこの場所を乱すもの

像と像を紡ぎ
俯瞰――それは振り返ること

紡いで繋いだ
ボクラの軌跡


『リアル・チェス』(WAR GAME)

D or O
全てを見通せぬ地での
決断・判断・断行

D or A
生き返る事はない
空間・時空・場所

硝煙が風を創り
赤き肉が地を創り

流れ弾が命をえぐる
何度も何度も命をえぐる

しかし誰もが気付かない
二色に塗られたマスの目に

そして誰かは気付くだろうか
遠くで響く金の音

やがて誰かは気付くだろう
辺りに響く狂笑に

一つ打つのは金のため
二つ打つのは楽しみのため

気付いたものは逃げ出して
愚か者から死んでいく


『identify』(traces)

水のハンマー
打ち揺らし平穏

刹那叙情
埋もれゆく山を
乱し探る自己証明

見慣れない
見慣れた筈のもの

掻き荒して繋いで
繋いでは掻き荒して

無くした
無くした居場所を探して

創り上げたものは
繋ぎ合わせたものは

戸を大きく開けた
もう戻れない場所

自己が在る証
自己が在った証

――ノスタルは廃るもの
所詮は幻想

だから
後ろ手で戸を閉めた

この場所を見付けただけで
もう十分だから


『世界蓮』(era(nostal mix))

古き時が
錆びて軋み
剥がれ落ちようとしている

終焉が訪れたと
目を覆うもの
喜ばしきと
手を叩くもの

全ては
時計が崩れし
砂塵に巻き込まれ

千切れ千切れ千切れ
時の断片と化して
消えて

大いなる母の幻は
時の零と壱の中へと
落ちてゆく

落ちし場所より
生え
伸びる蓮の蕾

開きて浮かぶ
蒼き球

新たなる御代の幕開け


『オオカミ少女』(Prince On A Star)

読み古された物語を
手に持ったオオカミ少女

白い夜空の下で
どこかを目指し、走る

逃げているようで
探しているようで

みんなが寝静まる頃
辿り着いた花畑の崖

頬に当たる雪が
水滴と化して
涙と見紛うほど

蛍雪で本を照らして
彼女は言葉を紡ぐ

星空のどこかにいる
誰かに聞かせるように

逢えそうな気がするから


『そして彼女は絶望する』(Apocalypse〜dirge of swans〜)

傷付き傷付け
叫び叫ばれ

憤怒の炎は
喜びを焼き付くし

冷笑の風は
悲しみの霧を起こす

されど誰も
止められはせず

腕に爪が食い込み
肉をえぐるまでに握り締め

焼かれた鉄で突き刺すような
痛みを心に覚えども

伝わる理由(よし)も
伝える術もなく

憎み憎まれ
憎悪に憑かれ憎悪にまみれ

張りつめた硝子は
脆く砕け刻まれ

―――――そして彼女は絶望する


『flight 2 somewhere』(super highway)

'Now ready take off'
出発の合図が聞こえる

一瞬椅子へと
空気が押して
そのまま押し続けて

足元は
まだ揺れていて
まるで不安そうに

恐れないで
すぐに飛べるから

一段と震えた後

気が付いたら月の側

過ぎ行く灯りを見送って
ここではないどこかへ


『雪原幻想』(Freezing Atmosphere)

氷、手に降る季節
白い息すら
暖かく感じる風が吹く

毛糸越しの声
犬達が
群れて雪を駆ける

透明、拡散して水色
積み上げ
籠る温もり、橙の灯

肩を、腕を払う
ほの雪
徐々に立ち上がる氷柱

おとぎ話の世界
"とうとう"
声も氷の粒となる

七色の天幕
光に消え
辺りには風花が舞う

天使の涙の欠片
そっと
天に還して

両手を合わせ握り
うつ向き
透る声で語る

それはまるで氷のように
それはまるで蒼風のように


『Borderline』(Dreaming)

呼ぶ声がする
戸の向こうから
私を呼ぶ声が

私の中の私は叫ぶ
行ったら駄目だと
引き留める

拒む戸のノブは
その時だけは脆く
力を失い

震える脚も
その数刻だけは
力を取り戻す

嫌がる心をねじ伏せ
私はドアノブを手にとり


気付いたら
頬を濡らした私がいた


『雪原の妖精』(Freezing Atmosphere)

砕ける氷は
幾千粒の涙

頬に触れて
白雪と化し

羽根の如く
氷原に落つ

蒼き風は
銀狼の背を撫で

地を駆れと
頻りに急かす

遠吠え
遠吠え達

雪原を
銀の風は走る

羽根は舞い上がり
空の彼方へとその身を捧げ

新たな妖精達が
天から遣わされ

その掌の上で
氷は砕ける






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