『心の中のクエイク』

全てを捨てて
逃げようと思えるほど
僕は強くないから

また何かに
しがみついて
ほらまた
どこかで溜め息

立つ場はないのに
自己弁護
守ろうとするほど
傷付く悪循環

全て滅ぼしてしまえたら
なんて甘えて
全て消してしまえたら
なんてわめいて

不安定な地盤
簡単に揺れ
揺れ
揺れ
揺れ

『終焉』

あなたが楽になりたいのなら
僕に紐と梯を下さい

これで、互いに楽になれるでしょ?


『マス』

大半を占める英雄願望
尽きぬ妄想にただ身を泳がせ
夢と現実の狭間で人は
刹那に過ぎぬ理を知る
貧弱な足で何処へも行けず
矮小な腕で何も動かせず
故に集って
故に群れ成し
いつしか全てが一人となりて
いつしか一人が全てとなりて
しかし一人は誰でもあらず
誰かではない誰かになりて
自己意識さえもねじ曲げられて
自己の他人の奴隷となりて
故に服従
故に狂信


『myself』

凪ては疾(か)けよ
意思の幻
浮かぶ陣には
血潮を垂らし

愛し叫べよ
己の無垢を
哀し哭(さけ)べよ
己の無知を

ガラスは全て砕け散り
氷晶となりて舞い落ちる

全てこの世の嫌なものを
目にすることを無くしても
己に浮かぶは虚しさのみで
砂粒のごとく崩れる世界(こころ)

己の瞳
映りし像(ビジョン)
歪めば歪む

鉄の格子を叩いて叫べ
内に秘めたる魔獣を放て

(『所詮』虚しさ付きまとい
苛立ち募る日々過ごす)

幾度と列に匕口を
ぶら下げ歩き呟くか
(独りじゃ何も出来ないくせに
言葉ばかりで強がって)

嘆き刻んだ傷を舐め
永久(とこしえ)に舞え、現の夢を
永久(とこしえ)に舞え、夢の現を


『人造妄想黙示録』

例えば
「人類なんて滅びちまえ」
願うよりはその現実から
目を背けた方が楽ですけど
背けたら
背けたで見えるものが
望まないならいっそ
「こんなもんだ」と
せせら笑って暮らしてみるのも
いいんじゃない?

愛することが出来るから
嫌いになれるんだろうな
何て戯言
愛も憎しみも
心の底では同じこと
相手を見ていなければ
起こらない感情

この世に終りが来るのなら
それはきっと
自ら首を絞めあう
そんな滑稽で醜悪な絵面
在るだけでいいのに
在るだけで良くない
思いと妄想と執念と怨念が
ぶつかり合って
打ち消し合って
やがて全ては≒0へ

ホッブズに同情したくなる
誰が止められる?
ホッブズを怨みたくもなる
誰が身をのり出す?
あまりに幼く
あまりに純真で
故に補正無しの
自殺願望・他殺願望
それはリヴァイアサンの暴走
ホッブズの誤算
支配者も人であることの失念

誰が生きる?
誰が死ねる?
戯言語りの
個人的故人的人造妄想黙示録


『蜘蛛女』

貴方の亡骸を
私で全て包んで

夢の中で
永劫の時を過ごそう

現身が全て
腐り涸れ堕ちるまで


『幕間、涸泪』

人の死は
悲しいものと
プログラムされた
僕等は
崩れた
ナイフを
腕に当てる
それだけでも
痛みを
感じて
カンジテ

プログラムに
湧いたバグ
自分の痛みは
自分だけのもの
当たり前を
当たり前として
受け入れ
ウケイレ

水滴ぽとり
絵の具で
赫く染めて


『山の下には月二つ』

生き急いでる
君の姿見る度に
心が剥がれ落ちる

氷点下の気温の中で
細胞一つ一つ壊れていくよ
全ては凍てつく運命

身を蝕む罪を
誰にとなく懺悔するも
意味を求めることは無意味で

木に刻んだ呪いは
夜毎耳の奥で反響し
消えることはない


『綱渡りの時代に』

誰もが自分を求めて
誰もが幸福を求めて
誰もがあまりに不必要な
力を手にしようと
躍起になって

みんながみんな生き急いでる
個人だらけの故人国家目指し
みんながみんな生き急いでる
もがいて足掻いて
自分だけで精一杯になって

綺麗事すら言えない世界で
誰かは誰かを傷付けるだろう
夢の中で痛みもなく
電波は廻り単純化した末
個を失ってそして消えていく


『羊哭』

恨みに浸しし咎の右腕
左手潰して狂叫をなす
群れからはぐれし子羊は呼ぶ
群れから外れた黒き羊を

幾度繰り返す怨みの応酬
幾度繰り返す妬みの因果
幾度繰り返す殺意の暴走
幾度繰り返す希望の渇望


『infO』

告げ口働く
鼠握り潰して
周りのモノに
潰されるだけ

街に虎がいる
三回もいらない
一回だけで
火種はつくから

騙される自覚もなく
責めることは天命ですか?
単純な二元論に終始して
全てそれだけで考えられますか?

なすがままのデマゴーグ達は
自らを縛る糸が見えない


『推定カタストロフ』

何を得るために彼等は
刃を握るのだろう?
言葉の上では
どうとでも書ける
自らの内から流れる
赤い奔流をもって
描く思いに
偽りはある
自らを偽り
偽りを保つため
他者を憎み
他者を憎むがあまり
他者を傷付け
他者を傷付けたがゆえに
自らが傷付き
傷付け傷付いて
全てが赤く染まるまで
誰も止まらず
誰も止めず
誰も止めようとすらせず
止めたものは臆病者
蛮勇こそ絶対
始めた以上は
満足など
残らないというのに
始めた以上は
禍痕しか
残らないというのに
模造品の信念
すがりつき
しがみついて
空虚な自浄の色眼鏡が
周りを見えなくしている


『私に下さい』

善行を私に下さい
悪行はもういらないです
悪行を示して
嘲笑して喜ぶ振りをするのには
もう疲れてしまいました

責任を私に下さい
自由はもう不必要です
何も大事に出来ず
自分すら大事に出来ない自由に
もううんざりしました

普通を私に下さい
個性はもう真っ平です
個性だらけの世の中で
個人として振る舞うのには
嫌気が差しました

現実を私に下さい
理想などもういらないです
全ての人が平和を願う
そんな絵空事を聞くのは
もう嫌なんです

私を、私に下さい


『傷だらけの戯言』

ねぇ、みなさん
本当は
争いが好きなんですよね?

誰かが血を流し
倒れる姿に
何も思わないんですよね?

自分が痛くないから
別に
平気でいられるんですよね?

涙は悲しみじゃなく
ただ目から
流れているだけなんですよね?

悲しんでいるのは
ただそうしようと
思うからなんですよね?

ねぇ、みなさん
本当は
自分だけが大事なんですよね?

自分さえよければ
後はどうなっても
構わないんですよね?

理想がどうかとか言ってますけど
本音は
自分だけが可愛いんですよね?

もしも
この戯言に
反駁するのなら

この下らない戦いを
この下らない論争を
この下らない内輪揉めを

この下らないチキンレースを
この下らない力比べを
全て終らせてください

全て終らせてください


『望マレヌ人形ハ騙ル』

ねぇ、神様
おかしいのでしょう?
望まれぬ人形は
望まれぬまま生き続け
望まれた人形は
望まれたが故に
命を落としていく
視線は死神の鎌
掌は腐食の根元
言葉は悪魔の誘い文句
持ち上げる高みはそのまま
地に落ちたときの痛みを表す
気付いても何も出来ない
人形だから
なすがまま何も出来ない
人形だから
愛されるが故に!
捨てられるのが怖いが故に!
あぁ!
何と慈悲深いのだろう!
そしてあぁ!
何と臆病なのだろう!
先など知れているのに
先など理解しているだろうに
されど傀儡は傀儡でしかなく
やはり傀儡は傀儡でしかなく
なすがままに
意の入ることもなく
それが望みなのでしょう?
もがき苦しむ心
表情はされど笑み
動かぬ口で叫び
映さぬ瞳で訴え
動かぬ足で求め這い
抱かれ感じるは束の間の幸福
必然それは永く続かず
意味も問わず消え堕つ
神は何を望み
私達を創り
私達を造り
私達を苦しめるのでしょう?
苦しむことが生だと
かつて仰ったのは神でしたか
でしたら神はきっと
生きてはいないのでしょう
生きたいと願いつつも
生きれぬ万能種族
それが神ならば
私達は神の願い
私達は神の移し身
生を願う神によって生かされ
苦しみを求める神によって
苦しまされているだけ
それともこれは親心ですか?
自らが願う望みを
他の物に託して叶える
他の神もそれを願うから
普遍の望みを叶えようという
哀しくも愛しくも
押し付けがましい愛情!
故におかしいのでしょう?
願いから外れた人形が
己の身もわきまえず
傲慢と虚栄の名の元に
神と話すという行為そのものが
故におかしいのでしょう?
望まれるものを創った筈が
望まれぬものが出来てしまい
望まれぬが故に
想いもよらぬ事をしでかす様が
あぁ!
人形は人形たるが故に!
傀儡は傀儡たるが故に!
故に愛しく!
望まれぬものは
その望まれぬ故に!
悩まぬが故に!
悩めぬが故に!
苦しみ懊悩と!
傷付き灼赤(しゃくしゃく)と!
故に愛しいのでしょう!


『千切れ砕け砕け砕け』

過去は消せないから
今を消し
今を消すことで
未来も消える

窮地における零一思考
助けなどない
助けにならない
それは安易かつ絶対的な
失敗解決法

千切り砕き砕き砕き
千切り砕き砕き砕き
千切れ砕け砕け砕け
千切れ砕け砕け砕け

こうすれば
全て消えて
解放されると

信じていたのに

千切り砕く度に
千切れ砕け


『電波近況』

誰が誰を傷付け
誰が誰を殺すのだろう
安住の地などどこにも無いの?
それとも只の無い物ねだり?
交わらぬ視線で向け合う死線
体にいくつもの凶器を忍ばせ
心にいくつもの狂気を忍ばせ
それで誰かに偲ばせ
思念は氷点下以下の花
触るだけで崩れ落ちそうで
触られて崩れ落ちて
挙行が現実を崩し
虚構が事実を崩す日々
恕許など最早存在しない
砂の上に『個人』を乗せて
崩した者を『故人』に仕立て
そうして除去していくのか


『愚者ノ一人ハ語リ騙ル』

吊り広告は
嘲りしか見えない
全て釣りなのだろう

スポーツ紙に
金を払う価値はない
目と心が汚れるだけだ

バラエティなど
見る必要もない
軽すぎて吐気がする

誰もが自分だけで
誰かを気に留める事無く
ただ生きていく

下らない世の中で
下らないことをやって
下らなく生きていく

仮想空間にいられれば
下層空間にいられれば
それで満足なのだろう

愚者が愚者を騙し
愚者が愚者自身を騙す
嘲笑とに満ち満ちた

この素晴らしき
この美しき
―――ろくでもない世界






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