『暗色雨日和の空に』

忘れたいと願って
忘れられない出来事
何かから逃げ出したくて
何かから逃げ出せなくて
その何かが分かっていても
その何かが分からなくても

火は浄化
そして焦げ付き
親が親である限り
子は子であり
壁だらけの人生
望むわけでもなく
ただそこに在る

自分は何だ?
自分とは何だ?
何のために在る?
何のために居る?
自分が'自分'じゃなくなって
そもそも自分は'自分'でなくて
IDカードを忘れてしまって
自分が誰だか分からなくなって

雨乞いの空の下
辺りに響く喧騒
かき消される存在証明
望まれる匿名希望
不自然な自己の存在
後がない現状に
張りつめた心の糸
千切れ落ちて途切れ刻んで
閉幕

『Brave story』

どうしても
認めたくないものがあった

何をしても
変えてしまいたいものがあった

望まない'現実'

あってはならなかった'過去'

手付かずの'未来'で
'過去'を変え
'現実'を変え

そのために
扉を叩き
開かれ
'旅人'となる

しかし

飛び交う音の中で思い
交す声の中で悩み
悲痛な叫びと共に気付く

自分はただ
運命から
未来から
目を背けていただけ

友の姿
あれは
もう一人の'自分'の可能性

過去は変えられない
だが、未来は変えられる

全てを受け入れ
それでも前に
進もうと望む心

それこそが

'勇気'


『Riot志望』

大音量で耳塞いで
視界は文字の羅列だけ
触覚なんて何もない
誰に触れる必要があるんだ

悪罵ばかり書かれた広告を
破り捨てたい焼き捨てたい

三乗だらけの空間で
相似はあるが合同は無い
ねじれの位置ばかり行き交って
一人の集団が全てを満たす

戯言だらけの発言を
吐き捨てる僕も匿名希望


『誰を』

誰を傷付けて

誰を踏み台にして

誰を嘲笑って

誰を見下して

誰かより優越してると驕って

誰に騙って

誰を陥れて

誰を壊して

誰を崩して

誰を殺して

誰を忘れて


――それでも生きていくのだろう


――それでも生きていくのだろう


『執着』

内に秘めたる執着は
百様千種、姿を変える

方向を変え
度合いを変えて

押さえきれない独占欲か
純粋すぎる支配欲か
はたまたはたまた

そして心に受けた傷は
思いの全てを刄に変えるか

人を殺めて空いた穴
自ら殺めて埋めなおしたか

終焉に鳴る
騒斂(サイレン)の音
災憐(サイレン)の音


『僕なりの【ユメクイ】』

遊び疲れた獏は
何の夢を糧にする

その黒い瞳で見つめるのは
世界と世界の狭間

飛び立つがいいさ
儚いBoundaries通り抜けて

ココロのトーチで
全て見透かせるのだろう?

一人震える子供の
闇に火を灯してあげよう

風で消えるような光でも
自分を知るのには十分だから

さぁ………
現世で眠る時間は終り

夢の現へ
舞い立て、僕の『ユメクイ』


『紛い物の価値』

口先だけの紛い物に
魅せられた僕は既に過去のものと化したよ
'解き放たれる事'
つまりそれは'人であることを止めること'

愛したいから迫って
好きだから押し付けて
縛り縛られるなかで
感じたものが'幸せ'

根拠無き妄想じゃ
ないこの感情
抱き締めて

自分が自分でない
そんな感情を
味わせて

絵空事の価値に動かされて
また大切なもの見失って
それで本当にいいの?

無闇に自分を着飾ったとしても
それは自分を分からなくするだけ


『独り兎』

黒兎は今日も、水辺にいる
はぐれた訳じゃない
一人が好きだから
ヒトリガスキダカラ

そんな戯言戯言世迷い事
一人身勝手に繰り返して
本当に一人になった時に
'寂しい'事に気が付いたのさ

僕は孤独を愛していたわけじゃなくて
ただ集団から逃げていただけ
'死なないよ'だからどうしたと言うの
それは甘美な束縛

孤独な兎の涙は月に融ける


『TD』

思考と言動の乖離に
悶え続けて

求めるから離れて
求めたいから離れて

離れた後で
呟く言葉を

いつか言えたらと
いつかは言えたらと


『熱流しの雨』

指先の動きが鈍くなる時期
吐く息白く
仄かに冬の香りがする

網ガラス叩く雨
砕ける結晶は
音を立てて地に刺さる

いっそこのまま
濡れてしまおうと
窓を押し開けて

ただ何もかも
凍てつかせて
流してしまえたら


『風に呟く I miss you.』

擦れ違いが埋め込んだ楔は
繋ぎ止める鎖を打ち壊した

千切れたゴムは弾け跳んで
いつの間にやら遥か遠くへ

時を戻ることなど
出来はしないから

解れた糸だけは
より直したいと願うんだ

それすら拒むのは何故?
それすら無かったかのように

まるで過去を消すように
まるで足跡を消すように

通わぬ道を歩いていくの?
届いた声に心を震わせ

通わぬ道を進んでいくの?
全ては過去に置き去りに


『神に告ぐ』

神よ

前世に罪があったとして
ここまでも厳しい罰を
貴方様は与えなさるか

報われぬ生
それを救い清めることが
貴方様の仕事ではないのか

神よ
貴方様はこれで満足か

信じた者に裏切られ
自分にすら裏切られ
何一つ果たせぬまま死ぬ

神よ
これは貴方様が望んだ罰か

何故幸せを許さず
何故平凡を許さず
何故破滅を許したのか

産まれながらに持つ罪は
無念の想いの魂でしか
購えぬものなのか

神よ
あぁ神よ

そうだとしたら
そうなのだとしたら

貴方様は残酷だ


『今日も爆音が聞こえる』

恨むなら
蛇を恨むべきか
それとま
己ら同胞を
恨むべきなのだろうか

神は
争いを望まぬがゆえ
人から知恵を奪い
人から感情を奪い
その全てを
林檎に封じたのだろうか

神よ
貴方は正しかった
我等が同胞は
神の名を騙り
神の名の元に
この地を混沌へと
追い遣らんとしている

神よ
貴方は正しかった
この地を流刑地と為し
知恵持つものを追い遣った
そうせずにはいられなかった
もし留まらせれば
楽園は滅んでいただろう


『美意識』

汚いと思ったものを
汚いと思っては
いけない

真逆は許される
いくらでも許される

真っ直ぐに歪められた
ベクトルで出来た
僕等の美意識では

世界は全て
灰色だ


『塩水と布切れと足』

塩水に浸した切端は
瞬く間に縮んでいった
膝の丈まで
短くなったスカート

染み込んだ水は
足取りを重たくさせて
「もう歩けない」
弱音は溶けずに空を駈るだけ

戻らないものはそのまま
戻せるものは戻してしまおう
両手使って絞れば
軽くはなるのでしょう

戻らないものならば
いっそ置き去りにしてしまおう
切り裂けばその分だけ
軽くはなるのでしょう

全て無くして
全て矧ぎ取られた後でも
あなたは居るから

動かせない足はない
例え塩水に濡れても
例え壊れたものでも

縛り取られた
布を捨てれば
きっとまた動かせる


『女の子とカッター』

その腕を掴むことも
その刃を折ることも
後ろから抱き締めることも

僕には出来そうにない

ただ遠くから
見つめるだけだ


『それでも』

それでも僕等は偽り続け
それでも僕等は欺き続け
それでも僕等は真実を
それでも探していくのだろう






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