『That day』

聞き飽きた爆音に
耳塞ぎ目をそらした
足音は遠ざかる
上か前の方に

剥がれたものは
繋ぎ止めた虚無
足場を創る誇りは
埃へと姿を変え

『報い』その一言は
重みを持って
形を持って
目の前に現れたあの日

偶然も何もない
全ては『必然』の名の元に


『風吹きの洞穴で』

指先のしびれは
もうとれたかな?
うまくマッチが掴めなくて

光は赤い球になって
辺りを照らすけど
僕の後ろはどうしても見えない

岩に擦れた風が呼ぶ
おうい、ぼくは
こっちだよって

穴を通った風が呼ぶ
おうい、ぼくは
あっちだよって

二つの風は
命を吹き消し
僕の姿を消してしまった

指のしびれは
もうとれたかな?
マッチはどこか分からなくて


『四季』

薄桃色の断片は
寄り繋がって緑色
亀裂が生じて皴枯れて
崩れて白き断片に
そして染まって桃色に


『白兎幻想』

月を見上げて佇む影は
いつしか全て兎になるの

芒畑でそよ風吹いて
穂波は光る黄金色

佇む狐と仲良しこよし
跳んで跳ねては歌って踊り

月を見上げて話し合ったら
「満月までは、さようなら」


『束の間に』

明るい夜空
傘の花は
水と光を求めて

ひしめき合い
揺れ合いながら


『雪の妖精』

耳元で囁き声
「このくらいぃ?」
『もうちょっとぉ』
《きゃっははっ!》

悪戯好きの妖精達の
《ねぇっ!もっとぉ!》
「あっ!ず〜る〜い〜!」
『ちょっとぉ!あたしの分もぉ!』

騒がしい秘密会議
「ひ〜!」
『うぃ〜!』
《ご〜!》

今日もまた積もりそうだ


『1/14』

過信を打ち砕かれ
臆病になりがち
風の吹く先も分からぬまま

安心の地など
この場には無いのだろう
尽きぬ恐怖は尽きないままに

―――あの時は
恐怖を知るには
まだ僕は幼すぎたんだ―――

絶たれた連絡
通わぬ視線
相対的孤独の中知る

決戦の時は、近い


『鵬のいる空』

青空の中を
二つの飛行機雲が
交差している

流され薄く広がる雲は
鵬の翼

千の地を飛び
何処へ向かうのか
私達には分からない

ただ地面を
せわしなく走るだけだ


『一つ星』

一つ星、流れ
二つ星、消えた

閃光
轟音

一つ星、流れ
二つ星、消えた


『蛍』

せせらぎの音
足元が見えない夜

絡み付く草が教える
地面の在りか

伝う糸が途切れ
ささめき合う行き先

掴む腕に力を込めたのは
どちらもそう

仄明かりが照らす
道の先

消えてはまた光り
頼りなくも誘う

蛍が舞う


『2/12』

雨の香りは幻
濡れた地面は打ち水の所為

星の輝かぬ
雲一つ無い空の下


『空色の涙』

地面にぽつり
水玉模様
服にもぽつり

透明なのに
色がつく
空の色がつく

どんよりとした
雲の色

きっと神様が
泣いているのだろう

泣かないで
私は空に
呼び掛けた


『ある朝の欠片』

散っていく雲は
地表に降りたって
僕等を埋めていく
僕等の全てを
埋めていく

そっと全てを
委ねてみた


『竹藪の中』

聞こえる
烏の声
雀の声

遠くに響く
車の音
電車の音

都会は少し
煩くなりすぎた
だから
畑のそば
川の近くの
竹藪の中で

無音を噛み締めた






【目次】【TOP】