『紫陽花』

君が居た夏の日を
思い出させる紫陽花の
花言葉である二文字ほど
運命を表す言葉はなく

さよならを告げられる
これが幸せなのだろう
いつのまにかいなくなる
手持ち無沙駄な空虚感

もう鳴らない携帯に
もう返らないメールを打ち
もう見えないあなたの横顔を
密か写したデジカメにぽつり

青は生者を癒して
紫は死者を癒す
言葉数足りなかった分
花をつけたブロック塀の紫陽花

気が付けば君のこと
忘れかけていた自分に
気付いたときの紫陽花は
どことなく色褪せて見え

一区切りつけられる
そんな理想はどこへやら
一区切りついていた
一人立ち尽くす孤絶感

もう聞かないCDを売り
もう読まない手紙を燃やし
もう消えないあなたの笑顔を
胸にしまって枕にぽとり

青は生者を休めて
紫は死者を葬(おく)る
六月の終り頃に見た
花散らしたブロック塀の紫陽花

短冊に書いた願いを
君は読んでくれるのかな?
あまりに遠く離れてから
伝えたいことだけ溜っていくよ

青はいつも静寂で
紫はいつも荘厳で
また来年に会えるのかな?
君が好きだった紫陽花に

青い空は紫に変わり
闇は幾多の星を引き連れて
電灯の下、僕は君の
見える場所にいつも紫陽花を置くよ


『星羽フラグメント』

まどろみの空に 羽がふわり
歪む視界 にじむ星月
心なくした 子守り歌さらり
全て過去に 未来は全て過去に

星廻(ほしめぐり)の時に
手を差し出し呟くよ
「何て、遠いのでしょう……」
夜明け待ちの屋根に
一人身を寄せて
同じようで違う日の
始まりを肌で感じた

「いつの日か、また飛び立てる日が来るのかな………」
羽の欠けた翼抱いて
幻に成り行く姿見送っては
傷跡を恨めしく思っていた

報われない だけの物語(ストーリー)
そんなものは 成立しない
心求めた 祈り歌はらり
全て永遠(とわ)に 夢幻は全て永遠に

御魂欠けの闇に
蛍が飛び交った
「何処へ、誰を置いて逝くの………」
満月(みつき)待ちの屋根に
一人膝抱え
消えて散っていく身の
その先の幸を祈った

「気休めは、絶望よりも冷たいよね…………」
季節外れの粉雪
手に乗る前に全て空に溶けて
目元に落ちていく涙雨

受け止めるように
両腕を広げてみた
こうしたら、またすぐに
飛び立てると思うから

「いつの日か、また飛び立てる日が来るのかな………」
羽の欠けた翼抱いて
少年は望月をまた見上げているのだろう

「旅立ちに、伝えておきたい言葉は…………」
指折り数えた望月
記憶の断片から探りだして
いつも居た屋根裏に刻もうか

僕がいた証
僕だった証に


『典型空想韻論』

曖昧さに触れ徹底抗戦
前提条件 選定条件
配当したりの先制工作
検定交錯 天帝捜索
解答見た日に回想検索
台頭零落 雷光転落
大成見事に隗儡前提
大枚選定 意味は無し

転生×展性
後も時は次第に姿を変えさせ
海底×開廷
真実は海の中に置き去り
判例×反例
事実も相互に矛盾しあって
完成×閑静
壊されたものは一体何か

愛し告して
哀し哭して
言葉を語り
言葉で騙り
空想(ゼロ)と現実(イチ)の中
テロと未知の世界(ばしょ)
レオは獅子の名を受け継いで吠える


『夏飛行機』

久々の快晴に
手を眉毛の上に置く
サンバイザー欲しくなる
憎らしい太陽(ひ)を睨む
蝉が急かす出発を
「あと五分」と遅らせて
書き上げた文字は何故か
大切なものに見えた

夕立用の傘の
取っ手だけつけ直して

南風が心地よく感じる場所へ
麦わら帽子届けに走った夏の少年
ノスタル×感傷=トランクの中
空遥か上から響く重低音


『GOD!(Go Or Die!)』

闇に包まれゆく世界の中で
大きな欠伸をかます余裕
自由とは名ばかりの束縛に
身を委せるから出来る芸当

氷山を前にして
なおも無視を続ける安全幻想(タイタニック・ドリーマー)
置き去りにされ
なおもがくのを嘲(わら)うか?

UN-KNOWNな事態を前にして
安穏としてられる?
頭おかしいよね!

今開けた世界
あまりに甘美な過去を
蹴飛ばして
Go! もたもたしてる暇はもう無いよ
空には銀の月
この世の運は尽き
けりつけて駆け出そう

坂道を下る足場の上で
わざわざバランスをとるよりも
怪我で済むなら一度は横に
ころげる事も選択肢の一つ

カルデラの中にいて
周りが見えていない中心妄想(ブラインド・イリュージョン)
空を目指して
翔ぶ様を罵るのか?

感動する自己主張を
貫道することを誰か
したことはあるの?

目の前の未来
望まぬ方のレールを
打ち壊して
Go! 誰も止める権利は持たないよ
僕の手に九円
来やしない救援
誰も頼らないさ


『時限爆弾』

悲しみの言葉だけ繋げてつむぐ
一欠片、少しだけ、心のモラトリアム
また、もう一度、出会えるなら
過去を消して、全て捨てて、私を全て壊して

糸の切れた傀儡(にんぎょう)のよう
考えてるつもりで、何も考えられずに
仕草、表情、自分らしさ
全て奪った、あなたの名を呟く

ナズナの花の、本当の意味を
あなたは知らなかったみたい
すぐに手が届く、そんな存在だからこそ
全てを捧げた、そんな気持は届かず

存在が壊れるまであとどれ程?
刻む毎、締め付ける、まるで時限爆弾
あぁ、あの日さえ、無かったなら
破られたカレンダー、燃やしたダイヤの指輪


『(non title)』

立ち止まって君に尋ねることは
これからの行く道と現在の進路
標識ばかり立掛けてあるけれど
行き先は何処?無記入だらけで

あの日の憧れ、この日の失望
あの日の望みはどこに行ったの

一歩だけでいい
一歩だけでいい
前に進むだけでいいんだ
標識が示す先は
自分で書いて決めちまおう
一歩だけでいい
一歩だけでいい
僕等が出来ることはこれだけなんだよ
先が見えないのなら
先を探しに行くことが先決さ


『冥の暝』

星が一つ消えた夜
秘密の屋根裏から望む
輝き薄れた空を

地上の明かりを消したら
もっと綺麗になるのかな?
綻ぶ口元押さえて

望遠鏡を窓から突き出し
覗いて数えた星は次の'時'に
証を伝えようと
『いるんだ!』『僕はここさ!』

誰かは叫ぶだろう
名を奪われた星のその名を
待ち望むように
人の運命を繰り返しながら


『原寸大地図の空白』

動くガラス張りの景色
遮るのは、脆い痛い壁
人がどこまでも行ける
それは自分で出来たものじゃない

手の届かない、世界
足はもう、動かない
見慣れた場所の中間を
僕は知らないのに

鳥に話しかけてみる
「君は何を見ているの?」って
そしたら聞き返された
「君は何を見ているの?」って

誰かは知ってる、世界
目だけで、追い掛けていた
僕がどこまでも行ける
それは僕が為した、事じゃない

子供が僕に問いかける
「キミはどうして動かないの」って
僕は子供に問い返す
「キミはどうして動かないの」って


『Little wings(vision)』

小さな羽、手に入れただけで
飛べた気になっていたんだ

実は僕は落ちてるだけで
向かう先は固い地面

誰だって羽を持つ時代があった
誰だってそこで一度死んだんだ

墜ちる僕等を笑うように
大空羽ばたく鷹がいたのさ

空高く舞った
そのとき僕等は地に突き刺さった

羽は粉ごなに砕け散ったんだ
そして僕等は空ばかり見上げた
届かないことを、仕方がないことって
言い聞かせて、また空を見上げているよ

誰だって空を飛べた瞬間があった
誰だって……それが錯覚に過ぎなくても
誰だって、誰だってきっと飛べる筈さ
……背中の羽に気付かず、また立ち尽くして

羽ばたこうとするものを嘲って
羽ばたいたものを羨むのを辞めにしよう


『freedomman』

みんなと僕は違うんだって
歩く速度を変えてみた
やっぱりみんなと変わらない
みんなでしかない僕がいたんだ

同じような服を来て
同じような顔をして
そのくせ違うと言い合って
みんなオリジナルを探してる

あぁ
誰でもない僕は
誰かですらある筈はない

世界に描かれる
シナリオに僕の名前はないのさ
だけど
僕はだからこそらしくいられるのさ

全てを投げ捨てた代償に手に入れた
freedomman

みんなと僕は違うんだって
どんどん先にに行ってみた
そのうちみんな見えなくなって
みんながいない僕になったんだ

同じような服もない
同じような顔もない
違いを比べる相手がいない
あるのはオリジナル?それは違うよ

あぁ
誰かがない僕は
誰かではない僕でしかない

胸元を見たって
『これが僕』という名札は無いのさ
だけど
僕はだからこそ縛られないのさ

全てを受け入れることにした日から
freedomman

みんなと僕は違うんだって
歩く速度を変えてみた
やっぱりみんなと変わらない
みんなでしかない僕がいたんだ

世界に描かれる
シナリオに僕の名前はないのさ
だけど
僕はだからこそらしくいられるのさ

世界に描かれる
シナリオを抜け出し幾星霜
思うけど
シナリオは君に必要なのかい?

全てを投げ捨てた代償に手に入れた
全てを受け入れてそして手に入れた

freedomman


『代用品』

誰かの屍の上に浮かぶ
幸せと言う名の船
安穏としていた僕に
「一体お前は何様なんだ?」

誰でもない誰かでもない
姿探した結末が
'僕'ですらない僕で
それは誰とも変わらなかった

代用品に過ぎない自分は
代用品を否定して憧れてたのさ
誰とも変わらない自分を抜け出すための
憧れは………他の誰かのもの


『Coco』

ほら、風駆ける都に
空舞う龍、見えるでしょ……

凪いだ砂漠に立つ乙女
手に持つ銀のタペストリー
石に刻む思いに
切々としたもの、感じずにいられず

狼の叫びは
大古の嘆き、写しとるように
響く、想いの狭間で
揺れ動き壊れた少女の心を

What you say? What you need? What you wish? What you hope?
――何を求めて
What you feel? What you think? What you smile? What you scream?
――何を思うのだろう?

ほら、風駆ける都に
空舞う龍、見えるでしょ……
あぁ、笑い合える人の幸せ………


『いつか、誰か』

いつかは、誰かを
きっと見捨てるだろう
いつかは、誰かを
きっと忘れるだろう
いつかは、誰かを
きっと手放すだろう
いつかは、誰かのため
きっと泣くのだろう

さぁ、今がその時だ
幾重の折り鶴を
全て空に還すとき

人は別れを知る度に
また強くなれる
遠く離れても
ずっと側にいてあげられるよう

いつかは、誰かを
きっと泣かせるだろう
いつかは、誰かを
きっと傷付けるだろう
いつかは、誰かと
きっと嘆くだろう
いつかは、誰かのため
きっと叫ぶだろう

さぁ、今がその時だ
手向けの言葉を
全て天に叫ぶとき

誰のためでもない
自分の人生だからこそ
誰かと共に
生きていく事が必要なのだろう

客のいないバス停
空になったプラットフォーム
誰もいない公園の
街灯の下で
僕は
普遍的で月並みな愛を叫ぶよ

人は別れを知る度に
また強くなれる
遠く離れても
ずっと側にいてあげられるよう

ずっと側にいてあげられるよう
僕は
普遍的で月並みな愛を叫ぶ


『怨嗟の鐘』

幾度となく鳴らした
怨嗟の鐘は
身を震わす度に
思い出させる
………恨みを

被害者でしかない
自分しか見えず
目に見えるもの全て
敵なんだと
………信じていた!

誰かにつくられた感情が
自分のものとして根付いていた
壊されたとき
何もなくなった自分がいるのだろう………

乾いた音、それだけが
響く広場
目を瞑れば全て
忘れられる
………死ぬから

耳塞いでいれば
何もかもが
これが幸せだと
喜んで
………信じていた!

自分の存在なんてただの
肉の器の一つに過ぎない
完全だって
思ったときに空っぽだったんだ



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