空を飛ぶとき、存在は何を思考するのだろうか。
ある者は、その空の高さのあまり恐怖し、いかに安全に降りれるかという打算に終始するだろう。
ある者は、下界の風景に陶然となり、自らもその景と一つになることを望むだろう。
またある者は、空の果てへと顔を向け、行く先の世界を夢見て己の持つ翼を震わせるだろう。
他にも風を感じるもの、寒さにうち震えるものなど様々である。大事なのは、それらが空に一時でも属している生物であることだ。事の内容など関係がない。
――では、彼女の場合は？
「あははー♪」
今、大陸の空の上を彼女は飛んでいた。気紛れな風の精霊の加護を受けて、両手を広げて、周辺を飛ぶ真ん丸とした綿毛と一緒に、フリーダムな動きをしながら飛んでいる。吹き飛ばされている感じもしたが、彼女の楽しげな表情から推測するに、自らの意思で飛ばされているのだろう……多分。
風の精霊の加護を受けている時点で、彼女が人間では無いことが分かるだろう。少なくとも、これから述べるような外見を持つ人間が居るのならば是非ともお目にかかりたいところだ。
体の大きさは、人間成人男性の掌よりも少し小さい程度。外見年齢自体は3〜6才といったところ。緑色のセミロングの神が可愛らしい。色艶の良い丸顔はいつも笑顔を浮かべており、見ているだけで思わず頭を撫でたくなってしまいそうだ。
そして、彼女の特徴として――体の一部を覆う白い綿毛。髪を纏めるリボンの先端にボンボンのようについたものが二つ、利き腕に巻いたリボンの先端についたものが二つ、首元から垂らしたリボンについたものが二つ。首自身を覆うように一つ。両手首両足首を覆うものが一つずつ。そして、まるでおむつのように腰回りから太ももの付け根辺りまでを全て覆い隠す巨大なものが一つ。それらは全て、彼女の呼吸に合わせて膨らんだり萎んだりしており、時おり綿毛が膨れ上がったと思うと、ぽふん、と言う音と共に綿毛が分裂し、空を流れる風に乗って遠くへと向かっていった。
「あははー♪」
それを喜ばしげに眺めながら、その少女は風の導くままに、地上に落下していく。
あははー♪、と無邪気に笑いながら。
「……ん……？」
地上。魔物の侵略を受けている世界の地上にて、一人の青年が死んだ魚の目で、空から降り注ぐ謎の物体を目にしていた。
絶望的にやる気の無い男だった。恐らく幻聴でNEETと言う言葉も聞こえてきそうな程にやる気の無い男。
何故あんなにわざわざ汗を流そうとするのだろう。
何故あんな肉体的な運動を嬉々として行うのだろう。
何故わざわざ辛いことを辛いと分かっていながら率先して行うのだろう。
……こんなことばかり考えている。親からは穀潰しと謗られるが、気にする気配が全く無い、そんな男だった。
「……たりぃ」
今日もこのような感じで、家の労働を適当にやってサボタージュしつつ、人も魔物もあまり来ない草原に一人、のんびりと昼寝をしようなどとゆっくり寝転がる……その折に空から何か降ってきたのである。
純白の……柔らかな粉。まるでパフのように柔らかく、カルーアミルクのように甘いそれが、まるでパルメザンチーズのごとく彼に向かって降り注いでいた。
「……何だぁ？」
風に乗って飛んでくるそれらは、どうやら自分にだけ向かって飛んでくるらしい。可笑しなものだ、などと考えている彼の口は、いつの間にか優しげな形に変化していた。
それに気が付くと、自然とどこか楽しい気分へと変化していく。このまま鍬を持たせたら、きっと彼は畑を耕しに出掛けるだろう楽しげな気分だ。
楽しげ……とはまた違う。ただひたすら……嬉しい。自分が自分であることがただ嬉しい。この場にいることが嬉しい。風が嬉しい。地面が嬉しい。草が嬉しい。嬉しい。嬉しい。嬉しい――幸せ。
「あははー♪」
ぽふん、と可愛らしい音を立てて、彼の胸元に何かが着地した。同時にふわぁ……と綿毛が舞い上がり、彼の口から、鼻から体内へと入っていく。
何処かぼんやりした視線を向けると、そこには一人の、掌くらいの大きさの女の子が、尻餅をつきながら笑顔でこちらを見つめていた。
「あははー♪」
じり、じりり、と顔の方ににじり寄る彼女。その度に腰回りや足首を覆う綿毛が優しく彼の体を擽り、何とも言えないもどかしく優しい感覚を彼に伝えてくる。
やがて顔の前まで近付くと、彼女はそのまま、ぺとん、と彼の唇に自らの股間を押し当てた。ふわふわとした綿毛からぽふんと粉が出て、彼の体の中に吸収されている。
「……」
彼の思考は、すでに幸せ一色に塗り替えられていた。頭の中では彼女の声が、あははー♪が多重エコーで反響して、言語中枢を侵す勢いで拡散していった。
「あははー♪」
楽しそうに、唇に股間を擦り寄せる彼女。そんな彼女に向けて、彼は知らずに舌を伸ばし、彼女の固く閉じた筋に沿って動かした。
「！あ……あははぁ……♪」
感じやすい体質なのか、それとも綿毛が擦れているのか。綿毛越しに擦る舌の感触に、彼女は色っぽく悶えていた。
彼女が声をあげる度に、腰や腕を覆う毛玉から綿毛が巻き上がり、彼の視界や体を覆っていく。甘く、暖かく、幸せな波動が、彼の欲求の枷を緩やかに解き放っていく。
「あははぁ……♪あははぁ……っ♪」
股間を舐められる感触に幸せの声を漏らし続ける彼女。その声が彼の耳元に入って、脳を何回も巡りながら、少しずつ染み渡っていく……。
「……あ……」
次第に彼の口からも、同じ音が発されるようになってきた。
「あははぁ……っ♪」
「……あ……ははぁ……♪」
会話するように、互いにあははーと囁き合う彼ら二人。実際、彼らは会話していた。脳が彼女の声で満たされた男は、彼女の声を、普通の言語として認識するようになっていたのだ。例えば、
「あははぁ……っ♪(んぁっ♪きもちいいよぉっ……♪)」
と言った具合に。そして彼の言葉も、彼女にはちゃんとした言語として認識されていたようだ。
「……あ……ははぁ……♪(そうか……よかったぁ……♪)」
こんな具合に。
「あははぁっ♪(ふふっ、もっとも〜っと幸せになろ〜♪)」
「……あははぁ♪(しあわせに……どうやって？)」
欲の枷が外されつつあった彼の体。三大欲求の一つの象徴が、彼の外での貞操の証を押し上げていた。無理矢理押し付けられ押さえ込まれる感触に、彼は幽かな痛みを覚える。
「あははー♪(まずは〜、下着を全部脱ご〜♪)」
彼女の声に促されるように、男は下着のボタンに手をかけ外すと、そのまま下までパンツごとずり下ろした。布生地が脚に触れて擦れる感覚が、適度にざらついた手での愛撫のように感じられ、どこか心地好い刺激がもたらされた。
その証拠に――アンダーウェアも脱ぎ終えた彼の逸物は、今にも天を突き割らんかというほどに隆起し、怠惰に秘められた雄性を存分に示している。
嬉しそうにそれを眺める彼女に、男は何を求めているか、幸せとは何か、それを本能的に理解した。同時に心の片隅で、彼女の体が心配になった。もしも彼女が求めることをすれば、彼女は――。
「あははー♪(大丈夫だよ〜♪)」
それでも、底抜けに明るい声で、彼女は自身の腰回りを覆う綿毛をふゎさっ、と持ち上げる。するとそこには……期待にうち震え、我慢が出来ずに蜜が染み出している一本の筋があった。
「あははぁ〜っ♪(わたしのお〇んこってね、いっぱいいっぱい拡がって気持ち良いんだよ♪)」
その言葉が早いか、彼女はその手を筋に割り入れ、そのままぐぱぁ……っ、と音がするほどに拡げていった。それこそ……人間大の一物がギリギリ入るくらいに。
「あ……あははぁ……♪(痛く……ないの？)」
「あははー♪(心配してくれてありがとう♪でも全く痛くないからどんどんしちゃお♪)」
心配そうな男の声に、彼女は心からの……しかし期待からどこか爛れた笑顔で応対した。既に彼女の拡げられた秘所は、彼の逸物に被せられようとしている。
痛みはない、という言葉に安心したのか、彼は彼女の体を優しく握った。彼女と視線を合わせて、「あははー♪」と笑い合うと――。
「あ・は・はー♪(オナホにし・ちゃっ・て♪)」
――彼女の期待通り、一物を彼女の体に突き入れた！
「あははぁぁぁぁぁぁぁっ♪」
彼にとっては予想通り、彼女の膣は押し拡げられた分を強引に収縮させようとして、彼の逸物を強烈に締め付けてきた！中に生える無数の襞は、幼さゆえの凝りを残しつつもまるで蔦のごとく彼の分身に絡み付き、そして扱き立てる！
まるで何人もの赤子の手が彼の逸物を弄っているかのよう。揉んで触って入り込んで擦って締め付けて――それでいて痛みは全く感じない。むしろその刺激の強烈さが、彼の体に幸せを伝えていると、彼の頭は捉えていた。いや、そう捉えてしまうほどに完全に「あははー♪」に染まっていた。
「あははぁぁっ♪あははーっ♪あははぁぁっ♪(あぁあんっ！はやくっ！はやくだしてぇぇぇっ！)」
早々に絶頂を迎えたのか、彼女の体はビクビクと震え、綿毛がぽふんぽふん舞いながら彼の体にさらに入り込んでいく！同時に、キツキツに締め上げていた膣が大きく彼の逸物を締め上げる！
「あははぁっ♪あははぁぁぁっ♪あははぁぁぁぁぁぁっ♪(ああっ！でるっ！でるぅぅぅぅっ！)」
刺激耐性が最低値を記録する彼の逸物は、もう既に発射準備を整えていた。直前の戦慄き……それが彼女の体を盛大に揺らすと――！
「「――あははぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……………♪」」
びゅるるるるるるっ！びゅるるるぅぅぅっ！……びゅくん……とくん……とくっ……。
彼の中に蓄えられていたスペルマは、彼女の中に盛大に放出された。彼女の体内に吐き出された精液は、唯でさえ小さい彼女の体を……お腹を大きく膨らませていく。逆流する筈の精液は全て、彼の逸物とそれを離すまいと食らいつく彼女自身の膣肉によって塞き止められ、やがて全て彼女の中に吸収されていった……。
「……あははー♪」
騎乗位の状態で腹ボコという、生物学的やら人道倫理的に何か間違っていると言わざるを得ない状態でも、心から幸せそうな笑みを浮かべて震える彼女は、彼の逸物に体を預けたまま、静かに静かに、彼の頭に染み込ませるように囁き続ける。
「……あははー♪……あははー♪……あははー♪……あははー♪……あははー♪
……あははー♪……あははー♪」
……翻訳しよう。このままでは当人達しか分からない。
「(真面目に働いたら、もっときもちよくなれるよ〜♪地面を耕してぇ……んんっ♪種を蒔いてぇ……あはぁん♪丹念に世話してぇ……んあぁ♪そして大人になったら、新しい種が出来るから……ね♪
実が出来れば、皆も幸せ、貴方も私も幸せ……♪ねぇ、それってとっても素敵だよね♪)」
既に頭全体が「あははー♪」に染まっている彼は、彼女のその呟きに……「……あははー♪」と、肯定の意を込めて返したのだった……。
その後、急に働き者になった彼を見て、家族は妙な心配を抱いたが、働いてくれている分には、と奇行に目を瞑ることにした。
その奇行とは……誰もいない部屋で誰かと交わるような喘ぎ声と共に聴こえる、「あははー♪」という声。
……近い将来、家族も同じ口癖を持つことになった。以来、この家の窓からは、不定期で綿毛が空へと舞い上がるようになったという。
「あははー♪」
fin.
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