とくん……とくん……。
【……ん……】
記憶が、混濁している。それより前に、意識が……霞がかかったようにはっきりとしない。
瞳は……開いていない。目の前が真っ暗で、瞼が触れ合っている感覚もある。
聴覚は……心臓のような音を、ずっと麻痺してしまいそうな程に捉えている。
嗅覚は……と考えたところで、私は、自分が呼吸をしていないことに気付いた。呼吸音が、全く耳に届かない……普通ならあり得ない事態だ。口は開いているというのに。
さらに言うなら、触覚も何か変だ。何らかの布製の服を身に付けていた筈なのに、その感触は無く、代わりに水と粘体の中間のような物質が、体全体にまとわり付いている、そんな印象を受けた。
そして味覚は……何故だろう、ただ甘ったるい味を脳に伝えていく。苦味を除いたカラメルのような味だ。
無意識で、私――ヴェリズエルは体を丸め、膝を抱えていた。どうしてかは分からない。ただ、じっと動かなかっただけ。まるで、そうしていなければいけないかのように……。
……どうしてだろう、と思い始めたときだった。
「……無様、とでも言うべきかしらねぇ……うふふ……♪」
声。私を包む何かによって柔らかく反響したそれは、私を軽蔑するような、その一方でどこか楽しそうな響きを持っていた。声の高さから、恐らく女性。
少しずつ頭の靄が解けていき、誰が言ったのか確認しよう、という命令をようやく脳が下し、私の瞳は少しずつ開けていき――!?
【!?】
眼前に広がる風景に、私は衝撃を受けるしかなかった。
私の全身は、肉を溶かしたような桃色の液体の中に浸かってしまっていて、それを包み込むように半透明の肉膜が回りを囲っている。
肉膜の外の世界は、ぶよぶよとした肉の地面が常にうねっており、所々管状になった部分が、脈動と共に膨張と収縮を繰り返している。
肉の床に根を張った、まるでパルテノン神殿の柱のように中心部分が膨らんでいる何本もの肉の柱が天井へと伸びており、同じように静かに脈動を繰り返している。
その膨らみの正面には筋のようなものがあり、時々開いては桃色の液体を地面に向けて垂れ流している……!?
【!?】
見渡す限りの肉の部屋、その中央に、柱にもたれ掛かるようにして立っている女がいる。いや……正確には蛇のような下半身が地面から生えていた。――肉と融合しているのだ。
紫色の肌をしたその女は、こちらを妖艶な笑みを浮かべて見つめながら、ゆっくりとこちらに近付いて来る。その姿に、私は見覚えがあった。
――いや、見覚えなんてものじゃない。私達の、国家の、いや、人類の敵だった相手だ!
「うふふっ……♪ようやく起きたのね、可愛らしい騎士さん♪」
【魔蛇ボネア!】
私は憎々しげに女――ボネアを睨んだ。人の上半身に蛇の下半身を持つ魔蛇は、この世界における人類の敵であった。
村を襲い、人を喰らい、国を滅ぼす魔物。その中でも、幾多の伝説を残す存在、それが今私の眼前にいる魔蛇ボネアなのだ。恐らく、魔法か何かで体を体内に作り出したのだろう。実際の大きさは――あまりにも巨大だ。
偶然住み処に居合わせた、私の所属する辺境騎士団は、そのまま交戦を開始するも、一瞬で惨敗してしまい、そこで私は意識を失ったのだ……。
「そんな顔して見つめたって無駄よぉ〜。貴女はもう、逃げることなんて出来ないんだからぁ♪」
【くっ!】
今、私は何も身に付けていない状態で、肉膜から発生した管が、私の臍と癒着しているようだった。おまけに体力も回復しきっていない。逃げ出すには絶望的だ。
「――だって……ここはどこか分かるかしら?」
相変わらずの不敵な笑みを浮かべながら、ボネアは私に問いかけてくる。周りを見回しながら考え……体内だと言うことしか分からなかった。
それを理解したのか、ボネアは心底嬉しそうに微笑んで言う。その一言は――私を恐怖させるのに十分な威力を持っていた。
「ふふふ……それはね……私の子宮の中。そして今、貴女が入っているのは……人間を私の子供にする器官なの♪」
【!?】
私は戦慄した。このままでは、ボネアと同じ魔蛇にされてしまう!私が、私たちが憎んでいた存在として、生まれ変わらせられてしまう!
「暴れたって無駄よ……だって、臍の緒でもう繋がっちゃっているじゃないの……ふふっ♪」
【出してっ!ここから出してぇっ!】
体液は肺や気管支をも満たしており、声すらろくに出ない状態だけれど、私は必死で叫びながら、私を包む肉壁を叩き、臍の緒を抜こうとした。けれど叩いても膜は柔軟に曲がって衝撃を吸収し、臍の緒に至っては、私の神経と完全に融合してしまっていて、握るだけでも敏感に感じてしまう。
電撃を流されたような快感のあまり、私は全身の力が抜けてしまい、臍の緒から手を離してしまう。それでも懸命に手を伸ばす私。でも、伸ばした手が管に触れるだけで、ピリピリとした刺激が走って、思わず手を引っ込めてしまう。
と――管が突然大きく蠢いた!ぐぽん、ぐぽんと膨張と収縮を繰り返し、私の体内に何かを強烈な勢いで送り込んでくる!
【んんんんおんんんんんんっ!】
体の中に送り込まれたそれは、私の体に直ぐ様吸収され、膨大な熱を伴って全身を駆け巡る!まるで度の強いお酒を血管に直に注射されたような、体を焼き尽くしてしまいそうな――快感!
全身からは汗が溢れるほどに湧き出て、私を包む肉液に溶け込んでいく。肉液は次第に、汗腺に貼り付いて汗を直に取り込むようになっていく……!
「どうかしらぁ?私の血のお味は♪とっても気持ちいいでしょう……?自分が消えてしまいそうな程に……ね♪」
【んぁっ!あぁっ!んあぁああああっ!】
消えるなんて生易しいものじゃない。根刮ぎ焼き焦げて灰塵になってしまいそうだった。
声にならない声を挙げて抵抗している私を嘲笑うかのように管はどくどくとボネアの血を注ぐ。濁流のように押し寄せるそれは、私の血管のみならず皮膚の――細胞の一欠片一欠片にまで一気に食い込んでいく……。
同時に、私の背筋を一筋のおぞ気が走る。体は必要以上に火照っているのに、その奥底が一気に冷え込んでいっているような、そんな不思議な感覚を味わっていた。
どくんっ
【んはぁ……っ!】
全身を焼き尽くすような快感に喘ぎながら、私は無意識に自分を抱き締めていた。まただ。流し込まれた瞬間に、同時に寒くなる。一体何が……!
顔を上げると、ボネアはまるで美味な食事でもしているかのように至福の表情を浮かべ、蛇身をくねらせながら舌舐めずりを繰り返していた。先端が二股に割れた舌の色は、毒々しい紺色をしている。
シュルシュルと舌を鳴らしながら、私の様子に気付いたように視線をこちらに向けるボネア。その表情はどこまでも愉悦か……あるいはどこか慈愛じみたものも含まれていた。
「ふふ……♪貴女の血って、美味しいのねぇ……♪」
……え?
今、聞いてはいけない一言を言われた気がした。そんな私を、ボネアは聞き逃したものと見なして再度口を開く。
「聞こえなかったかしら?その管……貴女の血を抜き取っていくのよ……♪ふふ……もうじき、全身の血が私のものと入れ換わるわ……♪」
【!!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!】
管の脈動と共に、私の血液がボネアのものに押し出されていく!それが私の体の奥底を冷やしていくのだ!その冷たさすら、送り込まれるボネアの血液によって次第に薄れさせられていく……!
どくっ……どくんっ……とくっ……
【う……うぅっ……ぅぁっ……】
ついに、私の血液は全てボネアのそれに入れ換えられてしまった。過剰な快感が、痛みのように私の中で膨張し、心臓の動きすら目に星が舞いそうな程の快感を覚えてしまう……!
「うふふっ……♪苦しいかしらぁ……♪変わっていくのが嫌かしらぁ……♪」
ねっとりとした口調で呟きながら、ボネアは私をじっと見詰めた。けれど私にその言葉に反論する余裕はなかった。確かに……変わりつつあったのだ。
次第に、体から力が抜けていく……いや、私の意思で体が動かなくなっていったのだ。多分……ううん、確実に、ボネアの血が私の神経を焼き切ったのだろう。
「変わっちゃえば楽よぉ……♪めくるめく快楽と淫蕩の世界……♪ほらぁ……素直になっちゃいなさいな♪」
【……ぅあ……ぁあっ……】
屈服しちゃダメだ。屈服したら本当に魔物になってしまう……!そう自分に言い聞かせて、何とか精神を保っている状態だった。
下手をしたら、一瞬で壊れてしまいそうなほど……脆い状況でもあったけど。
「……素直じゃないのねぇ……ふふっ♪まぁ良いわ♪後で素直になれるオマジナイをかけてあ・げ・る♪」
持久戦に持ち込むつもりはないのか、ボネアの体はそのまま肉の床に沈んでいって……消えた。残されたのは、私と――何本もの柱のような子宮管だけ。
【……ぁっ……ぁっ……】
状況は最悪、としか言いようがなかった。私は敵の体内に捕らえられて、このままでは遅かれ早かれ魔物に変えられてしまう。武器も防具も何もなく、管を自力で破ることも出来ない。さらに臍の緒からの刺激と、全身を巡り浸透していくボネアの血液が、私の中に耐えがたい快楽を送り、力を弱め、神経を焼き切っていく……。
【……いやだ……いやだよ……魔物になんか……】
このまま魔物になるくらいなら、死んだ方がマシだ、そうぼやけつつあった頭で考えた私は、残る力を振り絞って舌を噛み切ろうと、舌を伸ばし、歯で固定し、そのまま力を入れた。
――もしも、この決断がもう少し早ければ、私の運命は変わっていたのかも知れなかった。
なのに――!
【!!!!ッ!!!!ぃあああああ!!ああっ!!あ!!あ!!アアああ亜あああ鐚アアァああああ!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!】
最初は、何が起こったか全く分からなかった。突然、聴力が消え、得体の知れない痛みと、直後に凄まじい快感が走って――叫んで私はようやく、肉膜から伸びた触手が私の両耳の鼓膜を貫いたのだと理解した。
本来激痛が走る筈のそれは、しかし痛みとは真逆の快感のみを私の体に及ぼしていた。
【ァアアアアッ!!!!あ゛あ゛!!あ゛あ゛あ゛!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁァぁアぁアぁァぁっ!!】
耳のなかを激しくのたうち回る触手。本来生物の手が入る筈の無い場所を執拗に蹂躙されている私の体は、打ち上げられた魚のように激しく震え、視界一面に火花がバチバチと舞った。
思考など、理性など保てる筈もなく、私はやたらめったら無声で叫びながら身を捩っていた。けれど触手が耳から抜ける筈もなく、逆にボネアの血液を体に巡らせて、染み込ませてしまう事になった。
徐々に動かなくなる体。私の頭の声が、体に届かなくなったのだ。そして、その頭自体も――。
ずぼぉ……ぐにゅん
【アアアアアァァあぁ――】
鼓膜の向こう、頭蓋骨の中、人間の中枢とも言える場所――脳に、触手がずぶり、と入り込んだ瞬間、私の体は完全に動きを止めた。
鼓膜が破れた筈なのに、私の頭の中で、何かくちゅくちゅと音がする。その度に、私の口は勝手に開き、声にならない声をあげる。
私の目は、目の前の風景を捉えながらも、それを私に映さなくなる。視覚神経も途切れたらしい。
くちゅくちゅと、音がする。
いつの間にか、お臍の管が動くのが心地よいと思えるようになった。
くちゅくちゅと、おとがする。
ここにいる、それがただ気持ちいい。
とぷんとぷんと、しょくしゅがあたまになにかをいれていく。ふうせんみたいに、ぷくぅってふくれていく。きもちいい。
とぷんとぷん。くちゅくちゅ。
あたまのなかが、ふくらんで、きもちいい。
とぷんとぷんってそそがれると、くちゅくちゅっておとがすると、きもちいい。あたまが……からだが……ぜんぶ、わたし、ぜんぶ、きもちいいよぉ……。
くちゅ…くちゅ……。
――――――――――――――
肉膜の中の女の姿が変化を始めたのは、耳を貫かれてからしばらく時間が経った頃だった。
耳に入った触手が、彼女の頭の中に体液を注ぎ込むにつれて、彼女の瞳孔は、まるで獣のように縦長になり、その周囲は黄金色に光るようになる。
開けた口からは、鋭い犬歯が四本、まるで牙のように変化する。それに喜びを覚えたのか、彼女は幽かに目を細めた。
口から先端が二股に割れた舌が飛び出して、唇をチロチロと舐め始める。
頭の辺りから、徐々に皮膚の色が変化していく。健康的な肌色から、毒々しい紫色へと。それに合わせて、爪も鋭くなり、緑色に変化しながら伸びていく。
腰から下、股間の辺りから両脚が融合していき、やがて一つになったところでその長さを増していった。
肉液が染み込んだような、濃い赤色の鱗が一本になった脚――蛇の尾の腰側から背中側にかけて現れ始める。
腹側の鱗は、その他の部位と違って白く柔らかく蛇腹を形成していった。そのまま、ヴェリズエルの蛇の尾はさらに伸びていく……。
進む速度こそゆっくりだが、騎士だった女は確実に、魔蛇へと姿を変えていった。同時に変化は――精神にまで及んでいた。
彼女の耳から入り込んだ触手は、脳の中に入り込むとボネアの血液を浸透させながら根を張っていき、海馬までもを侵食していく。
どくんどくんと、記憶が、感情が、ボネアの血に触手に犯されていく。思い出が、憎しみが触手に貫かれ粉々に砕かされ、血の中に溶かされ姿を変えていく。
血はまるでこの子宮のように全てを包み込み、全てをボネアの子供に相応しいように変化させていく。
存在そのものの再構築、それがもたらす背徳的な快楽に、彼女は甘い吐息を漏らした。舌はしゅるしゅると、唇の間を出入りしている。
触手が二・三度、大きく震え、ごぽりと血を吐き出し、彼女の全身から抜ける頃には――彼女の'転生'は完了していた……。
――――――――――――――
(ボネアは私達の敵、人類の害悪である魔蛇の主のようなもの。私は辺境騎士団の一員ヴェリズエル……)
私の潜在意識は、必死で私の記憶や感情を保とうとしていた。けれど、ボネアの血の濁流は、そんな抵抗すら巻き込んで、ボネアの望む方向へと ただ駆けていく……。
(ボネアは……私達の敵である人類の害悪である魔蛇の主……私は……ヴェリズエル……辺境……)
【あぁっ!あぁああぁっあああアアアアアァアァアァァアアア!】表層上の意識は、与えられる刺激に悶え弾け切って、既に跡形もない。次第に、私だった場所が'私'になっていく。本能にまで、ボネアの血が染み渡っていく……。
(ボネア……様は……人類の主である魔蛇の……主……私は……ヴェリズエル……辺境の……)
段々と、変わっていく……。ゆっくりと、水が大地を削るように、緩慢に……でも確実に……。
(ボネア様は、人類の主である魔蛇を束ねる主。私は……ヴェリズエル……)
(……辺境の地に住まう、魔蛇帝ボネア様の……子供)
――ついに、潜在意識も陥落した。
――――――――――――――
彼女とボネアの子宮管を繋いでいた臍の緒は、役目を終えたのであろうか、次第に萎んでいった。
【んはぁぁっ……♪】
虚脱がもたらす快感を得たヴェリズエルは、じくじくと物欲しそうに疼くお臍の辺りに、尻尾の先端を優しく突き入れた。
お臍は、それ自体がまるで別の生物のように蠢き、くちゅくちゅと自信の尻尾を甘噛みする。
噛む感触と噛まれる感触が同時に伝わってきた彼女は、その切ない刺激に身をくねらせることしか出来なかった。
「さぁ……生まれておいで♪私はここにいるわよぉ……♪」
管の外からぼんやりと響く声。淫らな響きを含んだその音に、彼女はそっと、肉膜に体重をかける。そして――鋭くなった爪で、一気に引き裂いた!
ぶしゅううぅぅぅっ!
中に溜まっていた肉液と共に、彼女の体はずるりと子宮管の中から抜け出て、柔らかな肉の地面へと軟着陸する。口の中に入っていた肉液をこぽり、と溢しながら、体をもたげるヴェリズエル。瞳孔が獣のようになった金色の瞳で辺りを見回していると――。
「うふふ……♪おはよう♪」
いつの間にか彼女の目の前にまで移動したボネアが彼女におはようの抱擁を交わす。と同時に唇をつけ、彼女の口許の肉液を舐めとる。
「んんっ……んふむっ……おは……ひゃっ!……おはようございます……おかあさまぁ……」
脳みそすら蕩けきってしまったようなふやけた笑みを浮かべてヴェリズエルは返した。そこには、かつて存在したであろう敵意の欠片も存在しない。
「あらあらぁ……♪二人きりの時は'ママ'って呼んで欲しいなぁ……♪あと、二人きりの時に敬語なんて使われると、ママ、悲しくなっちゃう……」
「……うん……わかった……ママぁ……」
蛇身をくねらせ、互いに絡み合う二人は、どう見ても魔蛇の親子にしか見えなかった。
しばらく思うままに抱き合っていた二人だったが、ボネアがヴェリズエルの耳元に何か耳打ちすると、ヴェリズエルは蕩けた、しかし何処か邪悪な笑みを浮かべ、それに頷いた。
「いい子ねぇ……♪じゃあ、早速やってもらおうかしら♪幸い、救助隊がそこまで来ているし……ね♪」
「うん……♪ヴェリザ、ママの言うとおり、やってみるね♪」
微笑み合う二人を取り囲むように、地面の肉が盛り上がっていき……やがて二人を包むと、そのまま飲み込むように地面の中へと沈んでいった……。
――――――――――――――
「――いたぞー!ヴェリズエル!ヴェリズエルが!」
「何っ!生きているか!?」
「ああ!ただ……傷が酷い。随分と執拗にやられている。村に着いたら真っ先に治療が必要だな」
「そうか……他の騎士は?」
「それが……全く……」
「そうか……仕方ない。一人生きているだけでも行幸だ。早く村に運ぶぞ。準備はいいか」
「応!」
――――――――――――――
その後、ヴェリズエルが運ばれた村は、突如現れた大量の魔蛇によって全滅した。連絡が途絶えた事により国は中央騎士団を派遣。
――だが、村があった場所には、その村の痕跡すら、また、死体の一つすら残っていなかったと言う。
以降も、国の辺境部に於いては、村が一つずつ、一つずつ消えていくことになる。
fin.
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