おねぇさま、ごめんなさい。
それが宿を抜け出した美影が第一に思ったことであった。
毎日のように、毎時のように、秒やコンマの存在すら忘れてしまいそうなほどに、美影の体をを愛し、心を愛し、存在を愛してくれた、
 温泉宿『デルフィニウム』のオーナー、ハンス=エイシアン。彼女によってこちらの『大陸世界』に連れてこられ、九尾の狐に変えられ、『闇の神霊』の力で元に戻った後にこうして宿を抜け出して元の世界への糸口を探ろうとする美影だったが、姿は元に戻れど、恐らくは神に準ずるレベルで魔力が高い上に、毎日のスキンシップで愛情を刻み込んだハンスの影響から完全に逃れられることは無かった。
 記憶が消えたら、体が記憶に再び植え込む。体に巡る魔力の総量が、ハンスの影響でかなり上乗せされていることも確かだ。何れにせよ、彼女の影響が美影の体にすっかり根ざしてしまっていた。
 いっそのこと、宿を基点にして探すべき……その体の叫びを、美影は強引にねじ伏せた。
 あの宿にいる限り、美影に貞操の危機が迫らない日はない。寧ろ貞操の危機はとうに幾度も超えてしまったことにはらはらと涙がこぼれてきそうだ。でも涙は出ない。その瞬間はとても気持ち良くて、それだけあの宿の店員が全て、人間含むでテクニシャンではあったのだけど……。

「(っていかんいかん!ウチはウチの世界に帰らな!)」

 隙あらば心に囁く、美影の体が今は恨めしかった。流石に帰らなければならない。帰って日常に戻らなければならないのだ。ただでさえ家族に度々迷惑を掛けているのだ。余計な心配を必要以上に掛けるわけにはいかない。たとえ異世界に連れ去られるという、従来は有り得るはずもない現象も――。

「(――いや、有り得るわなぁ)」

――神隠しの一種として。また猫乃に心配をかけ、沙雪に拳骨を頂く事になりそうだ……とやや美影は暗くなる。が、すぐに気を持ち直した。元の世界に帰るんだ、と言い聞かせて。

「(それに……なぁ)」

 このまま宿に居る方が、美影が元の世界に帰れるまでの時間を延長しかねないのだ。
理由……それは『デルフィニウム』のメイン店員がほぼ魔物であることに起因する。
 元々、度重なるトラップや魔物の襲撃によって、身体・種族変化に対する耐性が低くなっている美影だ。
こちらの世界の住人なら滅多に魔物変化しないような魔物でも、魔力を注がれればたちまち魔物へと変化してしまう。

『うふふ……ミカゲちゃん♪おねぇさまととっぷり、イ・イ・コ・トしましょ〜♪』

 その言葉と共に最低三日、最長一週間多数の相手とオーナーを筆頭に、様々な店員が美影を抱いた。

『うむ、よし。主を我がサバトの一員として迎え入れようぞ♪ほれ、遠慮するでないわ。主は魔力が良い。直ぐに上位の魔女になり、永遠の若さを保てようぞ♪』
『わ〜い♪サバトが広がりますね、ルミル様ぁ♪』

 その一声と共に有無を言わさず魔女化させたバフォメットのルミルと魔女のテッサ。

『あらあら……とても可愛らしいのですね……♪うふふ……こう縛ったら、どんな声で鳴いてくれるのでしょうか……迷える黒のカナリアさん♪』

 糸であらゆる縛りプレイを実行した後、蜘蛛娘にしたジョロウグモのミナエ=ジョウレン。 pm 『ウチ、あんさんを見捨てておけまへんわ……大丈夫どす。ウチが此処での親代わりになったるさかい』

 完全にオカンモードで美影を抱き、同族である雪女に変えたアマテ=オヂヤ。

『ハロ〜Welcome!Taja!うんオーナーの言っていた通りYouはとってもCuteだnE!All right!折角だからStay Tune!』

 訳の分からない言動と共に、性感刺激BGMを流しながら犯して淫魔に変えたサキュバスの'DJ'……。
他にもアルラウネやマンドラゴラ等の植物系魔物に、つぼまじん、ミミックなどの擬態系魔物、そしてワーウルフ、ラージマウスや宿に忍んでたデビルバグにまでスキンシップと称して襲われ、犯され、変えられ……。
 気付けば襲われていないのは'番台さん'ラン=ラディウス、'シスター'ヴィオネッタ='チャスターテ'=アンクローゼと'アリス'、そしてニカという女の子だけとなっていた。
 流石にこれ以上あの宿に居たら、身が持たないだろう。何より心が……まず間違いなく変化を求めてしまうようになる。それは避けなければならなかった。

「……おねぇさまぁ……」

 だが、『デルフィニウム』での生活の中で、オーナーと交わる時間が一番長く、それだけ魔力と愛情を注がれ続けたせいで、気が付けば体がオーナー――おねぇさまを求めていた。
口はおねぇさまを呟き、手は……宿の中、ベッドの上で休まるときには彼女の'女'に延びていた。

「……ひぅっ!……うっ……あ……ぅうっ!……んあぁぁっ………んあぁっ!……おねぇさまっ、おねえさまぁっ!」

 熟れた柘榴のように水分をたっぷり含んだ彼女の果実は、彼女の差し入れる手を貪欲に受け入れる。まるで彼女の意志と同調、あるいは遊離するように彼女の手をくわえ込み、内から溢れ出さんばかりの花蜜を手に浴びせかけている。
 普段は彼女の蜜はおねぇさまが美味しそうに舐めとって、何故か処女膜を破ることなく舌や尻尾を奥に突き入れるというスゴ技を用いてよがり狂わせていた。
 同時に後ろの穴も攻め、敏感な内壁を直に擽りながら下半身への愛撫を繰り返し――!

「うあぁああああっ♪おねぇさまあぁぁあああああああああっ♪」

 突如、達したように背を反らせる美影。ベッドに肩を付けつつ腰を突き出す彼女の、その尾てい骨から突如……しゅるるるるるるるるん♪と音を立てて、金色の尻尾が生えてきた。
 同時に彼女の耳は狐のそれと化し、髪の毛の一房も、メッシュが入ったように金色のそれに変化していた。だが、美影はそれに気付かない。彼女の心の中には、体が蓄積したおねぇさまへの思慕と、逝くに逝けない生殺しの状態が重なり……!

「んはぁぁあああああんっ♪おねぇさまぁぁぁああああんっ♪ウチを……ウチの体も心もぐっちゃぐちゃに乱してぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ♪」

 彼女の尻尾が、彼女の声に応えるように、一気に蠢いていった!

「んあぁあああああっ♪いっ♪いれていれられとるぅぅぅっ♪うあんっ♪んあぁああっ♪おっおくっ♪おくずぼずぼはいっとるぅぅぅ♪」

 九本生えた尻尾の内一本はそのまま秘所を貫き、ずぶずぶと音を立てて抜き差しされている。美影の豊富な魔力が顕現した尻尾は、おねぇさまのそれ顔負けの柔らかさとふかふかさを持ち、器用に処女膜を破らずに持ち主の聖域へと突き入れられていく!
 一本は彼女の不浄の穴へ。既に幾度も進入を試みられてこなれた彼女の肛門は、容易に自身所有の進入物を受け入れ、奥へと招くよう内壁を蠕動させていく!
 肉襞の一枚一枚を撫で擽るような尻尾の動きに、美影はさらに悶え、ベッドのシーツの上で身を捩っている。他の尻尾は美影の体に絡み付きつつ、性感帯を刺激するようにさわさわ、くしゅくしゅとなで上げていく。
 時折尻尾を口でくわえ、舌と絡め、歯で甘噛みする美影。最早快楽に対する歯止めが全く利かなくなっており、幾度も絶頂を繰り返していた。
 借りた宿の部屋の中は、いつの間にか美影が放出した妖狐の魔力で桃色に澱み、もし誰か入ろうものなら、その場で美影に覆い被さり、処女を破り精の尽きるまで腰を振っていただろう。
 だが幸いなことに、この部屋には美影の他は誰もおらず、被害を受けるのは美影のベッドシーツだけであった。

「んあぁああああっあっあああっ♪おねぇさまぁぁっ♪おねぇさまあっ♪もっとウチをぉっ♪ウチをくしゃくしゃのもっふもふにしてぇぇぇぇぇぇっ♪」

 彼女の視界には、幻覚のおねぇさまが、いつも通りの色ボケした笑顔と共に、自らの尻尾を伸ばして美影の全身を包んでいた。
 それらは実際、美影から出た尻尾である。尻尾が美影の全身を包みながら、くしゅくしゅと擽る。
まるでおねぇさまの愛撫を想起させるように時に強く、時に優しくと緩急がつけられている。同時に股間に差し込まれた二本の尻尾は、愛液や腸液でテカるそれを互い違いに差し込んでは抜いていく。前後から与えられる淫らな刺激に、美影の心は何度も天高く登り詰めていた。
 自身の尻尾の中で、びくびくと震えながらおねぇさまと叫び、壊れてしまうかのような激しい自慰を行い、何度も達している美影。
 尻尾に隠れたその瞳は、妖狐特有のそれへと変化していた。既に妖狐としての体が、美影に馴染んでしまっているらしい。どこまでも貪欲に快楽を求める、美しき獣――!

「――んはぁぁああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……♪」

 最後の絶頂を迎えた刹那、尻尾に塞がれた彼女の秘部が、尻尾を吹き飛ばすような勢いで潮を吹いた。
その液体は全てシーツに染み入り、淫らな香りを放っている。絶頂を迎えた瞬間、美影は力が抜けたようにベッドに倒れ込んだ。
 そのまま眠りについたとき、彼女から出た狐の耳と尻尾は、まるで元から存在しなかったかのように、影も形もなくなっていた。
 完全に、美影は元の人間に戻っていた。ただ……髪の毛の一房が、黄金色に染まっていることを除いて……。

―――――

「……ふぅ、あぶなかったー」
「みーちゃん魔力強すぎだよぉ……♪」
「そこ、盛らない。しかし……あの宿のほぼ全員に、処女膜を破られずに犯されたんだ。どれだけ魔物の魔力を注がれたことか」
「ほんとホント、私達にその魔力分けて欲しいワ♪」
「……お前は修行しろ。ルミル様が直々に鍛えたいそうだからな」
「あ、アハハ……」
「じゃ、そろそろ浄化呪式いっくよー」
「あっ……う、うん……♪」
「(逝きそうだったな)」
「(逝きそうだったワネ)」

―――――

 翌朝……目が醒めた美影は、昨晩の衝動に赤面して悶えていた事は言うまでもない。
 そして、この衝動を何とかしなければ、無事に帰ることも出来ないと、克服することを心に誓うのだった……。

「……にしても、次、どこ行こか……」


2 B Continue...... ―――――





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