―――全て、壊れてしまった。

望みなんて、初めから無かったんだ。

全て確約済みの未来。

私が立ち入る隙間なんて無かったんだ。

自己完結のとばっちりを受けてきたに過ぎなかった。

………もう、疲れた。

このまま、消えてしまおう―――




………こなたの感情、記憶をを読み取ったわたしは、あまりに悲しくなって、こなたに問掛けたんだ。
『楽に、なりたいの?』
心と同じように、お気に入りの白のブラウスやミニスカート、いつも履いていたスニーカーまでボロボロになっているこなたは、焦点の定まらない瞳でわたしを見つめながら、ゆっくりと、頷いて、そのまま気を失って、わたしの腕に倒れ込んだ。
わたしは、種族としての本能が逸るのを意識の中で必死で抑えながら、彼女を抱きかかえて、森を下り始めた。



――――――――



わたしは見附みなも。
地元公立高校の二年生。
成績は中の上………って聞きたくないよね、そんな個人情報。
外見的特徴?
小学校からの親友の安岐乃島(あきのしま)こなたが言うには、毛穴の見えない様なすべすべの肌に、くりくりとした大きな瞳、出るところは出ている(C)けどくびれてはいない体、綺麗な肌の脚。兎に角肌が綺麗で可愛いと色々言われていたけど、わたしはこなたの方が可愛いと思う。
吊り目がかった瞳は、いつでも先を見つめていて。
手入れのよく行き届いた肌なんか、わたしよりも男を引き寄せるんじゃないのかな?
体型も自己申告Bだけどわたしの目に間違いがなければC強は行っているうえ、腰はくびれているという何とも爆発的スタイルだし、それでいて脚も引き締まってるし。
しかも良く出来るんだこれが。数学や理科は校内順位一桁だし、体育もいつもこけてばかりのわたしとは違って、アンカーではないけどクラス代表のリレー選手に選ばれたし。
それに……………いつも、わたしに優しく接してくれるし。


でも、高校二年になってからかな。こなたが元気が無くなってきたのは。
はじめは気のせいだと思ってた。だって、すぐにこなたは元気な姿をわたしに見せてくれていたから。でも、それは気のせいなんかじゃなかった。
暑いのにも関わらず、長袖を着る日が増えた。
手に包帯を巻いて登校するようになった。
学校の中で、こなたの持ち物だけが頻繁に無くなるようになった(犯人はその後メンバーのチクりでクラスメートの落ちこぼれだと分かって、担任の先生がこってりと絞ったらしい)etc...
でも、わたしは何も出来なかった。
『無理しなくていいよ。わたしはこなたの味方だから』
そんな一言は逆効果だ。傷口をえぐる行動にしかならない。かといって、他に何と言ったらいいのかも分からなかった。
わたしに出来たのは、ただこなたの側にいてあげる事だけだった。
だけど―――



「――――ッ!」
ある日、わたしが腕をこなたの腕に絡ませた時だった。
突然表情を変えると、わたしの腕を払ったのだ。
あまりに唐突すぎて呆気にとられたわたしを顔面蒼白で見つめ、こなたは混乱した様子でわたしの処から去っていった。


―――バレタノカナ?―――


わたしの本能はそう結論を出そうとした。けど、わたしの頭では違う。あの表情の変え方は、明らかに異物に対する嫌悪感とは違っていた。
まるで、傷口に直に触れられた、純粋な肉体的痛みに対して反応したような―――。


その日から、わたしとこなたは話さなくなった。
わたしはこなたに何かを言いたかったけど、そのきっかけが掴めなかったし、こなたの方は、きっとわたしに嫌われたと思っている。そんな雰囲気が、わたしたちの間に漂っていた。


そして、今日、事件は起こった。


―――このまま、消えてしまおう―――


記憶の中でそう呟いた、目の前のこなたの姿は、わたしの中の記憶にあるどのこなたの姿とも似ても似つかなかった。
まるで糸の切れた人形。
まるでバッテリー切れのロボット。
夢魔にとり憑かれた人間のように、一切の感情が欠落し、魂そのものすら抜かれてしまったような、そんなこなたの姿。


わたしの記憶透過能力は音にしか働かないけど、それでも、こなたの身に何が起こったかを知るには十分だった。逆にその程度の能力しかなくてよかったとすら思える。もしもこの上に映像が付いてきたら、わたしもその記憶に飲み込まれていたかもしれない。
安岐乃島こなたは、わたし以外の人間から常に虐げられてきたのだ。


母親が罵声と共にこなたを叩く音。
何かに成功しても誉めることがなく、逆に失敗したら貶すばかり。
父親が罵声と共にこなたに煙草を押し付ける音。
相当ゲスな男だったらしい。事ある事に娘にセクハラを働き、反抗すれば暴力を振るう。


クラスメイトが汚い文句を吐き捨てながら私刑を実行する音。
親を見返そうと完璧を目指したことが、逆に嫉妬心を煽っていたらしい。
教師に相談しようにも、教師が頼りにならないことは分かっていた。いや、分かってしまっていた。報告すれば、更に闇に逃れるようになるだけだと言うのも、
それでもこなたは耐えていた。普通の人なら耐えきれず逃げていただろう心の負荷を掛けられている状態で。何かにすがる様な思いを抱きながら。
でも―――




『―――あ、アンタ、まだこの家にいたんだ』




この日は学期の修了日だった。この学校では学期修了ごとに、学年内最優秀生徒を選ぶんだけど、こなたちゃんは今回初めてそれに選ばれたんだ。わたしは誉めたかったけど、こなたはいつの間にか帰っちゃってた。
そして家に帰ってお母さんに話しかけたこなたは、さっきの台詞を言われたんだ。
そこに何の感情もない。
そこに何の愛情もない。


そしてこなたの心は壊れてしまった。


―――わたしはいらない子。

誰からも必要とされていない。

たった一人の大切な友達も、自分で傷付けてしまった。

もう、誰もいない。

もう、誰も見てくれない。

ねぇ、神様。

いなくなってもいいですよね?

私なんか―――




この地域には、伝説がある。
町の北東にある森には怪物がいて、迷い込んだ人を溶かして食べてしまうっていう。
あまりにありふれているし、科学全盛の時代、怪物なんていう非現実的な存在を信じる人もいなくなって久しい。
でも、壊れたこなたはこう思ったんだ。


―――怪物に食べてもらえれば、私は消えられる―――


こなたは、この世界に自分の姿を残していたくなかった。要らない自分なんか、残っているだけで迷惑だろうって考えて。
そして―――





ほとんどの人は知らないけど、この森の麓には小さな洞窟があって、昔は雨宿りに使う人もいたらしいんだけど、森に行く人すらほとんどいない今では、人が来ることは全くない。
―――ココナラ、大丈夫ヨネ―――
わたしの本能は相変わらず早くしろ、早くしろと急かす。そろそろ自分自身で抑え切れなくなって来ている。
―――質問はこれが最後になるんだろうね―――
わたしは、気絶から覚めた、目が虚ろなこなたに問掛けた。



『楽になったら、戻れなくなるよ。それでもいいの?』



こなたの返事は、一瞬だった。



―――戻る場所なんて、私には無いよ―――



もう限界だった。
最早耐える必要がなくなった体は擬態を解き始め、十秒も経たないうちに、わたしは本来の姿に戻っていた。
日本人としては一般的な黒い髪が先端から青くなって、
着ていた服が徐々に溶けて――服は擬態だから元に戻っているだけ――髪と一緒の青色のお腹が現れて、
靴も溶けて、まるでスカートのように青色の塊が広がり、
その上に、胸以外は発育のよろしくない、上半身が全て青く透き通ったわたしの体が、ややぬらぬらと光沢を放ちながら形を留めている。

そう。
わたし―――見附みなもは、スライム娘なのだ。

洞窟の怪物の正体、それはわたしの御先祖様。その頃にはあまり頭がよろしくなかったらしく、洞窟に来た人間をただ襲っていただけみたい。
でも、原因はよく分からないんだけど―――ある時、知能を持っちゃったんだ。知能を持った御先祖スライムは、人を襲わなくても生きていける、わざわざ消され傷付く事が無くても、普通に生きられる事に気付いちゃったんだ。
それで、洞窟にいた人の姿や言葉を観察しながら、人間のことを知っていった。そして人がいなくなった頃合いを見計らって洞窟の外に出て、人間として暮らしてた――って言うのがわたしたち。
でも、わたしたちは先祖の血(流れてないけど)が騒ぐのか、洞窟の中にいると落ち着く。だからわたしを含む兄弟姉妹は、家に帰る前にはかなりの確率でこの洞窟で過ごしているんだ。

この日はたまたま他のスライムがいない日だった。それはある意味幸運なことだ。だってこれからこなたにする事は、例外じゃない限り禁じられている事なのだから。

わたしの姿を見ても全く驚かないこなたに、わたしは抱きついた。胸と胸、へそとお腹がぺたん、とくっつき合う。
徐々に、くっつけた部分からこなたの服が音もなく溶けていき、こなたが隠したがっていたものが露になっていく。


傷。
腕に、脚に、胸に、背中に、いくつもの傷。
音で聞いた記憶は、目の前にあるこなたの姿が現実だと証明している。

傷口を触れられる痛みに顔をしかめるこなた。ごめんね。……ちょっと我慢して。
わたしは自分の体で、こなたの全身を徐々に覆っていく。わたしに触れたこなたの衣服は全て溶け、首から上以外がわたしに包み込まれた時、こなたは産まれたままの姿をわたしに晒していた。
始めのうちは傷口に触れて痛がっていたこなただけど、次第に馴れてきたのか、表情が緩み始めた。
こなたの心臓の音が、わたしに直に伝わってくる。
こなたの温もりが、わたしに直に伝わってくる。
こなたの安らいだ心が、わたしに直に伝わってくる。
わたしはそんなこなたを見るのが嬉しくて、つい顔を綻ばせてしまった。


――いけないいけない。まだやる事は沢山あるのに。


わたしは自分の心拍数をこなたのそれに合わせて、こなたの傷口に近いところを避けながら、こなたの性感帯をいじり始めた。
乳首の先端をつまみ上げ、少しつねってみたり、
Cカップの乳を揉みほぐしたり、
脇の下や足の裏を擽ってみたり。
背中のツボをギュッと押してみたり。
最後に、体全体を、優しく揉んであげたり―――。
「あっ………ああんっ………」
その度にこなたは、色っぽい声を出してくれた。人間の肉体的反応だってお母さんは言ってたけど、それでも気持良くなってくれるのは嬉しいんだ。
「んっ………はああっ………」
こなたの頬が、少しずつ上気してきた。お〇〇コも、だんだん濡れてきている。液がわたしの体に垂れる度、わたしの中に甘い感覚が広がっていく。
徐々に、わたしの心拍数が上がっていく。それにつられるかのように、こなたの心臓も動きが速まった。


――でもまだ足りない。もう少し何かをやらなくちゃ――。


わたしはこなたの顔に近付くと、そのまま唇を重ねて、舌を口の中に入れた。そのまま舌を絡めていく。こなたもわたしに応えて、舌を絡めようと動かす。
「ん………」
くちゅ……ちゅぱ………
わたし達二人は、互いに気持良くなろうとする獣になった。歯の表面から裏、唇の裏、頬の粘膜まで、口の中の全てをわたし達の舌は蹂躙していった。わたしが擬似的に作っていた歯や口の中も、こなたに全て綺麗にされ、もう口の中だけ繋がってしまったかのような、そんな感じがした。
こなたが、わたしのスライムで覆われた手で、腕で、わたしを抱こうと伸ばしていく。わたしは少し強く締め付けて、こなたと更に体を密着させた。
こなたはさっきよりも激しく、わたしの口を責め立てた。
わたしの舌を巻き付けて自分の口に引き寄せると、その先端を甘噛みした。じんわりと、わたしの中に刺激が広がる。
そして、そのまま猛烈な勢いで、わたしの舌を吸い上げたのだ。
下手をしたら、舌になっているスライムが全て、こなたに食べられてしまうかのような勢い。痛さは無くて、むしろ、意識がそのまま吸い込まれてしまいそうな感覚。
そんな強烈な刺激にわたしは、


―――今ダ!―――


もう、本能をこれ以上我慢できなかった。
「んんっ…………!」


トロ…………トロ………


わたしの体液が、舌の先端からこなたの口の中に流れ出していく。んく、んく、とこなたは、それらを全て飲み干していった。
変化は、その後すぐに現れた。
「んんんぅっっっっ…………!」
こなたの瞳が、熱に浮かされたようにうるむ。はぁ、はぁ、とわたしの中に熱い吐息を吹きかけていく。
スライムの体液は、大量にあると麻酔効果のある消化剤だけど、少量なら鎮痛剤兼媚薬になるの。その効果がようやく表れてきたみたい。
「…………っはぁっ、っはぁっ、っはぁっ…………」
こなたの息がいよいよ荒くなり、顔が熱ってきたのを確認したわたしは、顔を離し、性感帯いじりを再開した。
「あぁあん、ぁあぁん、あぁ、あぁあ」
しばらくは為すがままにされていたこなたは、次第に自分から体をくねらせ始めた。傷付いた部分も、そうでない部分も、わたしの体に押し付けるように。
こなたのお〇〇コが、わたしの体を求めるように口をぱくぱくさせている。膝を曲げて、わたしの体に擦りつけようとしている。
わたしは若干、締め付け方を緩め、こなたの股間に当たる部分の、スライムの濃度を高め、やや盛り上げた。
「あっ!あぁんっ!あぁっ!いぃっ!いいのおっ!」
頬を上気させて、ただ一心不乱にわたしの体にお〇〇コを押し付けるこなた。お尻で『し』を描くように動かして、盛り上げた部分を〇〇スに見立てて、中に挿れようと懸命に腰を振っている。
まるで犬のように、激しく呼吸するこなた。
「………はっ、はっ、ハッ、ハ、ッ、ハッ…………」
気付けばわたしも、つられて呼吸を荒くしていた。わたし達に呼吸の必要はないのに。ただ、

――気持ちイイ………――

こなたが必死に体を動かす度に、体とスライムが擦れ合って、わたしを徐々に高ぶらせるような快感を運んでくる。その高ぶりを増させるため、自然と出るようになっていた。
気持ちよくなったわたしは、こなたの体が更に擦れるようにスライムの締め付けを調整する。
そうすると、こなたは気持ち良くなろうと、更に動きを激しくする。
これはもう、快感の無限ループだった。どちらかが終らそうとしない限り、ずっと続いていく―――。


ピリオドを打ったのは、こなたの壊れたような、叫び。


「ああっ!ねぇっ!みなもっ!みなもっ!気持良くしてぇぇっ!」


その言葉と共に、
「あぁ〜〜〜〜っ!」
こなたはイッた。お〇〇コからは大量の愛液が溢れ出て、わたしの体に当たっては吸収されていく。こなたのもう一つの穴から出たものも同じだ。

―――ソロソロダ―――

既に快感に浮かされていたわたしは、本能に任せて、こなたの体の中に、

わたしを入れ始めた。


「あっ!あはっ!しゅごいっ!みなもっ!入ってる!みなもがはひってるよぉっ!」
お〇〇コを当てている部分と、お尻の部分。そこからそれぞれスライムを伸ばしていき、こなたの中に挿入していく。イッた後のこなたの穴は、愛液などでしっとりと濡れていて、それが潤滑油の役割をしていた。
自分の体に何か別のものが入ってくる、っていう不思議な感覚に、こなたは興奮して叫び出した。その口をわたしは唇で塞いで、そこからもスライムを入れ始める。舌を変形、延長させて徐々に入れていく。気道を通り、肺の方へ。肺に着いたスライムは、そのまま肺と融合しながら置き換わり、肺と同様の役割を一時的に持つようになる。じきに、こなたも酸素が必要じゃなくなるのだ。
―――あああっ!ああっ!―――
こなたのお〇〇コの中は熱すぎず、かと言ってぬるいわけでもなく、丁度いい温度で私を攻め立て、適度な締め付けが遥かな高みへと押し上げた。何より、自分が親友を犯しているのだという背徳的な快感が、わたしを興奮させていた。
こなたの目が、「もっとぉ!」と叫んでいる。わたしは思わず口を別の場所に作って叫んだ。
『いいよおっ!わたしの体ぁっ!こなたの中にいっ!もっとぉ!いれるよぉっ!』
そして、

ズグウンッ!

『ああああああああああっ!』
わたしたち二人は、同時に絶頂に達した。



―――――――――――



今、わたしの体の中にはこなたがいる。
絶頂に達した後、こなたはわたしの体の中に沈んでいったのだ。前もって肺をスライムに置き換えたから、こなたはもはや肺呼吸すらしていない。溺れ死ぬ事はないのだ。
妊婦より遥か膨れたわたしのお腹の中、胎児のように丸まっているこなた。そこにあの、壊れたような表情は欠片もない。ただすやすやと眠っているだけ。
その姿を優しく眺めながら、わたしは洞窟の奥に向かった。

洞窟の奥には、わたしの御先祖様が使っていた大きな水場がある。養分はあるけど、生物はいない。でも腐らない、不思議な水場。
わたしはそこに飛込むと、水を取り込んでスライムの量を増やし、それをを四方に伸ばして体を固定すると、こなたの臍にわたしのスライムを癒着した。
こなたの人間としての肉体は、わたしが臍の緒スライムから送り込む特殊な液体によってスライムへと変化していく。
同時に、人間だった頃の記憶は、一時の悪夢として、じきに忘れさせていく。
そうして、こなたもわたしと同じになるのだ。

人間のような苦しみがない。

人間より遥かに楽なスライム娘に…………。





一週間後、
わたしは一週間前より二倍近くに膨らんだお腹を摩りながら、今か今かとその時を待っていた。
すでにこなたの肉体は中には見えず、臍の緒スライムだけが、こなたのいた証拠を明確に主張していた。
そして、その時が来た。


『ああああああああああっ!』
痛みではない。閉じ込めていたものを解放するときの快感。
わたしのお腹が二度震えると、その表面が盛り上がっていき、徐々に人の形をとっていった。
見慣れた姿の、見慣れない姿で。
『こなた、これからはずっと一緒だよっ!』
繋いでいたスライムを全て切り放し、わたしはこなたスライムに抱きついた。
こなたは嬉しそうに、首を縦に振って、そしてこう言った。

『ごめんね。手を払ったりなんかして』



fin.



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