どうも最近体調が芳しくない。そうウィッチサキュバスは、手元に魔力で浮かべたカレンダーを目にしながら一人考えていた。伝説の淫魔リリム・リリス姉妹を頂点に据えた楽園製造計画も、そろそろ中盤に差し掛かろうとしている頃合いである。計画の最前線で村長と共に姉妹の支援を行っているだけに、ここで自分がへばるわけにいかないのだ。長き時に渡る悲願を達成するためにも、イレギュラーは何とかして排除しなければならない。
「……風邪かしら?サキュバスが風邪を引くなんて聞いた事はないけど……」
そう思ってもいない事を口にしながらも、念には念を入れ、ヤマタイ由来の風邪によく効くという漢方薬を、コップに入れた精液ドリンクで飲み干す彼女であった……。


500年前に勇者ハインリヒによって封印された淫魔リリス・リリム姉妹の復活を、洗礼を受けていない勇者であるルカの精と力を体に取り込む事によって成し遂げたサキュバス達。サキュバスの村を基点に人間達を搾精家畜にしては自らの糧とし、その勢力を瞬く間に広げていった彼女達は、次にどこを攻めようか、或いは建設しつつある“楽園”をどう運営していくべきか、ようやくその段階に漕ぎ着けたところであった。
約束の地の種は撒いた。あとはどう育てていくか……そんな折に起こった中心人物の一人の体調不良である。住民を動揺させないためにも、何とかして秘密裏に原因を突き止め、治す必要があったのだ。


「……とはいえ、性交(おしょくじ)は十分足りているし……いえ、寧ろ多いかしら?」
最近の自分の食事の回数と量を考えるウィッチ。元々魔力が多く、その分補給のために多くの精を必要とする彼女だが、今まで一度の食事で五人から吸っていたのが、今では八人に増えている。前線での魔力の行使が度々あったためそこまで異常だとは思わなかったのだが、改めて考えてみれば異常である。このままいけば枯死、ないし腎虚によって現在の奴隷そのものの数が減ってしまい、十分に男が行き渡らずに、最悪住民の間で奴隷の奪い合いが起こりかねない。仲間内での争い、それは実質的な楽園の崩壊を意味するだけに絶対に避けなければいけない。
「体はちょっと重い感じがするのに、食欲は減っていない、寧ろ増加している……?」
自らの体に起こったものとはいえ、考えてみればみるほどに奇妙な状況ではある。しかし、それが我が身に起こっている以上、どうにかしてその正体を探り、計画を恙無く進めるための解決策を早々に実行しなければならない。そう彼女は、蒐集品の本を手当たり次第当たってみる事にした。
「……」
とはいっても、そもそもそのような症例など聞いた事もあるはずもなく、書物を探したところで同じ症例は見つからなかった。
「……村長に聞いてみるかしら」
自力での病原体究明を諦めたウィッチは、同胞にして協力者でもある“サキュバス村”の村長の下に赴くのであった……。


「あら、ウィッチ。どうしたの?」
いつも通り、何処か捉え所のないような口調で話しかけてくる村長に、ウィッチは最近の自分が感じている体の不調……というよりも異変について詳細に語った。彼女自身が懸念している、今後の計画への支障も含めて。
それを受けて村長は……何故か首を横に振りつつ、目を瞑って溜息を吐いた。
「……あなたねぇ、いくら私達が淫魔だからって言っても、こうなっちゃったなら早めにみんなに連絡してよ。準備できないじゃないのぉ」
「村長……どういうことなの?ねぇ……まさか、重病?」
「重病じゃないから安心して。こんなおめでたい事、病気にしたら失礼よ。」
不安げに詰め寄るウィッチに対し、村長から何故気付かない、という明確な意思の篭った、何処か嬉しそうな熱を持った溜息混じりに返ってきたのは、ウィッチが想定も想像もしていなかった答えであった。

「ウィッチ、あなた気付いているかしら?あなたの中に‘娘’がいるのよ」


「……え?」
娘がいる。つまり妊娠しているという事だ。元来精を栄養源として補給する種族であるサキュバスにとっては、相当強い意思を持つか、或いは偶然が起こらない限り起こりえない事である。例えば子を持ちたいと願い、相当量の魔力を丹田に集中させる、或いは力を持った個体を取り込んだ際、その魂や力が体内に留まり続けるなど――!?
「……まさか」
後者にウィッチは思い当たる節があった。村長を封印し彼女に挑んだ勇者の少年を以前、胎内で取り込んだ。吸収し終えた彼女は相当力が溢れ出してくるのを体全体で感じたが……まさか。
「そう……みたいね」
ウィッチのスカートをお腹辺りまで捲り上げつつ、臍の辺りに耳を付けながら、確信を得たように村長は呟いた。その口に、隠し切れない喜びの笑みを形作りながら。


「あなたが以前、誘惑の魔眼で魅了して思う存分胸に甘えさせてから、ミニマムファンタズムで縮めて胎内で吸収した勇者君が、あなたの中にいる。そう考えて間違いはないわ。
さぁ、そうと分かれば、リリム様とリリス様にこの件を御報告して、お祝いの準備をしないとねぇ♪何せ、楽園建設の最中に懐妊だなんて、こんなに嬉しいニュースが聞けるなんて思わないじゃない♪」


舞い上がったように部屋の中からレシピ本を取り出し、メニューを調べ始める村長に唖然としながら、ウィッチは無意識のうちに自分のお腹のほうに腕を伸ばし、すりすりと擦っていた。確かに、彼を呑み込んだときに比べ、心なしか膨れているような気がした。
「……私の中に……赤ちゃんが……」
何処か信じられないような感情を抱きながらも、ウィッチは優しく、自身のお腹を撫で続けていた。仄かに感じる魔力の気配に、口が綻びつつあるのも気付かぬままに……。

―――――

――どくん、どくん。

体全体を揺らすような、生命を感じさせる音。それが今、聴覚を支配する音であった。

――どくん、どくん。

音に合わせて、触覚を支配する柔らかな物体が、彼の素肌に優しく絡みつき、むにむにと押し付けられる。何処かくすぐったい様で、それでいて何処か安心する愛撫が加えられ、思わず体を捩ってしまう。

――どくん、どくん。

捩った拍子に、愛撫していた物体と体の間にある生暖かい液体が、動きに逆らうように体にねっとりとした愛撫を加えていく。指の隙間や膝の裏、首筋といった敏感なところまで撫で擽られていく感触に、身を捩りながら、膝を抱えて丸くなっていく。
と――。

――どくん……どくん……。

生命を感じさせる粘っこい音に混じり、ポンプが奥から何かを吸い出し、送り出そうとしているような音が聞こえてきた。ほやほやした意識の中で、何だろう、と砂糖菓子のように甘く脆い疑問が浮かぶ。その答えは、数刻後に体全体で理解することとなった。

――どくん……どくん……!

お腹の辺りから、何かを注ぎ込まれるような感覚。それに驚いたのもつかの間、注ぎ込まれた場所から、徐々に暖かで、満たされるような熱が体の中にじんわりと広がっていったのだ。
無意識のうちに、口の中で舌なめずりをする。体の中に注ぎ込まれたものが、美味と感じたらしい。もっと、もっと欲しい。そう心の中でせがむと、またお腹の中に注がれていく。それを心ゆくまで――お腹がいっぱいになるまで味わうと……今度は、睡魔が襲ってきた。
体を包む暖かな液体と、沈み込みそうなほど柔らかな物体に身を任せながら、眠りの妖精が導くままに、意識を落としていく。まどろみの中で抱きしめられ、まどろみの中で満たされて、またまどろみの中で沈んでいく……。何度目覚めて、何度眠りに付いたのか……分からないまま、体は少しずつ大きくなっていく。

「(……あたたかい……。
あたたかくて……ふあふあする……)」

同時に、心が生まれ、感情が形作られていく。辺りを満たす音に合わせて、地面に植えた種が発芽して茎を伸ばすように、じわり、じわりと広がり、大きくなっていく。
ただそこにあるだけだった『世界』。それが明確な色と実像を持ち始めた。無色だった場所に色が塗られ、風景が形作られ、瞼の裏でどんどん広がっていく……。

夢。
魂に刻まれていた記憶を、夢として見ているのだ。かつて経験したであろうことを、これからの生に最善となる形で組み合わされ、感情をも書き換え、映し出していく……。

「(……あ……)」

……まず浮かんだのは、長閑な村落……というには、何処か殺伐とした風景であった。村の外には人の体が多く積まれ、聖職者の祈りと共に火が放たれている。流行病の影響で、数多くの村人達がその命を落としているのだ。
医療技術の発展が未来の課題となるこの世界において、流行病に罹った人に対して行われる処置は三つある。
一つは、現状存在する薬を用いて、症状を和らげる事。二つ、イリアス教会に祈りをささげ奇跡を願う事。そして三つ――病気を持つものを排斥する事。
「(……ぁぁ……)」
次の風景は、村の内部の光景、それも一人の少年にスポットを当てた光景である。泣き出しそうなほど必死の形相で少年が、村の道具屋に向かって走っている。その手に、なけなしの金銭を握り締めて。
少年の口は、ある言葉を紡ぎ続けている。音のない夢の中で、何を言っているかは正確には分からない。だが、口の動きから、たった一つの言葉を繰り返していると推測される――母さん、と。恐らく彼の母親が流行病に臥せり、その治癒のために薬を必要としているのだろう。すがるような気持ちで、彼は道具屋に雪崩込んだ。
だが、待っていたのは汚らわしいものを見る目で彼を見つめる、道具屋の主人であった。ありったけの罵声を浴びせ追い払われながらも、なおも薬を求める少年を……道具屋は容赦無く叩き出したのだった。
涙をこらえて、次に向かったのは教会。少年はそこで神官の助力を得て、母を病から救おうとしていた。神様に、或いは神に仕える神官に、救ってもらいたかった……。
だが、神官は彼を家へと追い返した。なおもすがる少年に神官は声を荒げ、親子共々見殺しにしようとした。女神イリアスの名前までも出して……。
そして気丈に振舞おうとする少年の前で……ルカ、と少年の名前を呼び、今際の言葉を告げながら……母親は事切れた。

「(……かなしい……つめたい……かあさん……)」

心が冷えていくなか、新たな風景が映し出される。先程までの何処か荒涼とした風景とは打って変わって、色彩鮮やかな町の風景だ。前の夢と違い、徐々に音が大きくなっていく。

「(わぁ……♪)」

そこは、所謂‘理想郷’であった。先程までの様に、誰かを拒むような人間もいなければ、神の名の下に死を願う人もいない。ただ、純粋な‘愛’が重ねられ、求め合い、抱きしめ合い、交わりあう世界。
その中に成長した少年ルカはいた。酒場の中、路地裏、民家の前、店の中、宿の二階……ありとあらゆる場で人が、淫魔が腰を振るい、粘っこい音を立てあいながら性の営みを演じるその傍らで、少年は何かを探すように駆けていた。まるで、大切な存在を探しているかのように、あちらこちらを見回し、淫魔の襲撃をかわして……そして村長の部屋にたどり着いた。
緑色の髪をした淫魔の村長の誘惑を振り切り、彼女に‘案内’され辿りついた、魔方陣が描かれた静謐な空間。その中央で、彼を待っていたかのように両手を広げる女性がいた。
少年の目の前にいる、巨大な赤のとんがり帽子を被った、桃色の髪の女性。彼女の瞳を少年が目にした瞬間――少年の中に、懐かしい感情が湧き上がってきた。在りし日に失われた温もりと、それが生み出す、陽だまりにいるような優しさを……!

かあ……さん……!

たった一つの冒険の友であった剣が彼の手から離れる。それにも構わず、彼は一歩一歩目の前の女性に向けて歩みを進めていった。今両手を広げて待ち受けている女性は、彼の母親に瓜二つであった。いや、瓜二つどころのものではなかった。彼女が纏う柔らかな雰囲気も、慈母的な笑みも、全てが母親にそっくりであった。
そんな彼に女性は、服の胸元を開くと、そのまま彼の眼前で揺らした。ばいんと音がしそうな弾力と共に、指で押したらその跡が残りそうな柔らかさが、視覚的に伝えられる。誰かを受け止めるためにある、母性の象徴……女性は彼に誘いかけた。

よしよし。今まで辛かったのよね。寂しかったのよね。それを押し殺してここまできたのよね。でももう大丈夫。ルカ。もう貴方に寂しい思いなんかさせないわ。‘かあさん’に、何もかも忘れて……甘えていいのよ。

押し殺していたような涙をぽろぽろと流しながら、彼は‘かあさん’の胸に頭を埋めていく。むっちりした、柔らかな感触が彼の頭を包み、心を染め上げていく。

ルカは甘えんぼさんね……♪

‘かあさん’はそのまま彼の頭を抱き、優しく自身のおっぱいに押し付けた。むにむにと彼の頭が、彼女の谷間の中に呑み込まれていく。幾年分の寂しさを満たすように、彼自身も‘かあさん’の双球に自身の顔を押し付け、摺り寄せている。
‘かあさん’の胸の谷間から立ち上る甘い香り。それはルカの心を蕩かし、全身の力を奪い、思考をあやふやな物へと変えていく。胸に顔を押し付けながら長らくその香りを吸い込んでいた彼の頭が、徐々にその回転を緩めていく。彼の中が、‘かあさん’一色に染め上げられていく……。
ふぁぁ、とくぐもった声が乳肉の壁から漏れる。いつの間にか脱がされたズボン及びパンツの場所からは、力強く起立した彼の一物が、ぴくん、ぴくんと射精の戦慄きを繰り返しながら‘かあさん’に照準を合わせていた。それを感じた彼女は、彼の頭を谷間に押し付け、力強く抱きしめた!

――ふ、ふぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!

ぷくり、と亀頭の先端部が膨らむと、鈴口を押し広げて弾け飛ぶように大量の白濁した粘液体が放出された。飛び出したスペルマは、放物線を描きながら‘かあさん’の腹部に降り注いでいく。母を汚した……という認識は彼には無い。寧ろそう思う余裕も、思考能力も今の彼には無かった。
出してすぐ反り立つ逸物。既に種は充填されているらしく、後ちょっとでも刺激を受ければ再び射精してしまいそうな状態であった。それにも拘らず彼は、甘えるように胸に自身の顔を押し付け、‘かあさん’に体を預けていった。柔らかな乳肉が彼の頭全体を包み込み、心安らぐ甘い香りが、彼の意識を酩酊させていく。彼の行動に応えるように、‘かあさん’も優しく招き入れる。
二度目以降の射精は、どく、どくとゆっくり垂れ流されるようなそれであった。まるで軽くひねられた蛇口のように、亀頭から出た精液が勃起したペニスに沿って落ちていく。ぬるぬるとした感触を覚えたが、もはや反応を返す事はない。彼は、既に溺れてしまっていた。
とく……とく……。まるで心臓の音に合わせるように、精液が彼の中から溢れ出していく。優しく、あたたかく、気持ちのいい絶頂……それを繰り返す中で、ふと彼は、自身の目にする風景に違和感を覚えた。
ぼやけきった思考でも分かる、圧倒的サイズの差。乳に挟まれているのが、いつの間にか顔だけでなく、肩、腕、腰――上半身、下半身と広がっていく。逆に、包まれていたはずの顔が、乳の上に乗っかっている。一体何故……不思議そうな顔をする、すっかり小さくなった彼に、すっかり巨大になった‘かあさん’は……母性と妖艶さを合わせた笑みを浮かべながら……あやすように告げた。

これからルカはね、‘かあさん’の中に還っていくの。‘かあさん’の胎内(なか)で、また赤ん坊になるのよ♪そうしたら、ずっと‘かあさん’と一緒にいられるの。ずっと寂しくないし、辛くもなくなるわ。
ふふ……ルカ、愛してる♪

ルカの額に、‘かあさん’の柔らかくもちもちとした唇が押し付けられる。じん、と来る甘美な感触を最後に、彼の思考は、その働きを止めた。体に、股間に押し付けられた乳肉が、すっかり小さくなった肉棒に吸い付くように刺激し……体を震わせながら、彼は乳の隙間に射精を繰り返した。
そして……彼の体はさらに縮んでいき……手のひらに収まるサイズとなった彼は、優しく抱きしめてくれた‘かあさん’の中へと……ずぶずぶと音を立てて入って……入れられていき……膣で体を優しく撫でられ……柔らかな肉襞と温もりに満ちた羊水に受け止められ――。

「(……あぁ、そっか……)」

――そして‘彼女’は理解した。

「(……ボク、かあさんのなかにいるんだ……)」

――――――

ゆっくりと、瞳が開かれていく。闇に閉ざされた世界に色が加わり、色が形を持って彼の視界の中で像を結ぶ。眼前で、ゆらゆらと揺れる肉の管が見えた、それは時折膨らんでは萎み、彼女の中に栄養を送り込んでいく。その向こうに視界のピントをずらすと、自分を受け止めてくれた柔らかな肉の壁が、うっすらと外の光を彼女に投げかけていた。
「(かあさんのなかにいるのに……あかるくて、きもちいい……♪
なんか……ぽかぽかして……♪)」
光の温もりと共に受ける、まるで全身隈なく抱擁を受けているような感覚に、彼女は開いた目を再び細めた。体がそのまま沈み込んでしまいそうなほどに柔らかく、それでいてふにふにした弾力が心地いい肉の壁は、彼女を匿い、安らぎを与える聖域(サンクチュアリ)であった。
「(……ゆらゆら……さわさわされてる……♪)」
お腹越しに、母親の手によって撫でられると、それが全身を覆う粘液を揺らし、彼女の全身をゆらゆらと揺らしていく。揺られた体は肉壁によって優しく受け止められ、まだ敏感な肌が舐め擽られていった。やさしい母の手の感触に、彼女は頬を綻ばせつつ、膝を抱えて丸くなる。
「(……あ……おいし……♪)」
臍から全身に染み渡っていく栄養。その味に彼女は表情をふやけさせる。それと同時に、股間の奥のあたりで、なにかが物足りなさそうに、きゅん、と音を立てるのも感じた。満腹感以外で、何かが足りない。むずむずする。何かが欲しい。でもそれが何か分からない。それがどうしようもなくもどかしい。
むずむずする感覚から、思わず体を捩る彼女。その動きの全てを、柔らかな子宮は全て受け入れ、受け止めていた。辺りを満たす粘体は、彼女の動きに抵抗を加え、起きるために必要な体力を容赦なく減少させていく。次第に、彼女の動きが鈍くなっていく……。
と、尾てい骨の辺りから何かが繋がっていることに気が付く。ゆっくり……おそるおそる、その部分に力を加えてみると……彼女の目の前に、先端がハート型にぷっくり膨らんだ物体が、下から競り上がってきた。おそるおそる、その物体に手を触れてみると、触れ手いる感覚と触れられている感覚を同時に味わった。どうやら、自分の一部らしい。
きゅん、と、股間の辺りがまた疼く。同時に、ぴくん、と目の前のハート型の物体が揺れた。
「(……あ♪)」
彼女はそれを動かし、うずうずを続ける陰唇をゆっくりと割り開いた。まだ使われた形跡の無い、瑞々しい色をした膣肉が、彼女の瞳に映る。その肉に触れるように……慎重に、ハート型の物体を擦り付けた――!?

「(――んんんんんんんんんんっ!!!!)」

強烈な、まるで瘡蓋の下の皮膚を直に手で触れたような強烈な刺激。それが痛覚を快感に置き換えて彼女の全身を瞬く間に巡る!雷でも落とされたかのように彼女の体は跳ね、子宮壁にめり込むようにその体を動かした。母親が痛みに苦しむ感情がダイレクトに伝わるが、それでも体を瞬く間に駆け巡る許容量を超えた快感のあまり動く体を抑える事が出来ない!
未熟な彼女の秘所からぷしゃぁ、と吹かれた潮は、吹かれてすぐに羊水に溶けていく。音も羊水によって封じられたが、彼女が絶頂した事実まで封じる事はできず、ましてや快感など……。

「(……んぁ……ぁぁ……)」

体をびく付かせながら、体力を失った彼女は、そのまま意識を失ったのだった……。

そして、さらに数月後……徐々に胎内が狭く感じるようになる中で、彼女は自然と、頭を下のほうに向け始める。それは、生物の本能がさせる独特の動き。彼女は何となく、この場所からさよならするときが近いように感じていた。
そして――!

――――――――

――ずりゅうぅぅぅっ!
「んああ!んあ!んああああっ!」


荒い息を吐きつつ、先程までお腹の中に感じていた温もりが今、目の前に確固とした存在としていることに、ウィッチサキュバスは自然と笑顔を浮かべた。魔界に近い空気にまだ慣れずに泣く、へその緒で繋がった赤子のサキュバスは、何処か顔に少年の面影を残しつつも、内に秘めた魔力や尻尾の形状、羽の大きさなどが、紛れもなく彼女の娘である事を証明していた。
「おめでとう、ウィッチ♪」
へその緒を処理しつつ、村長が笑顔で彼女を抱きしめる。ウィッチはへその緒の保存を周りのサキュバスに命じながら……彼女に抱擁を返した。
「ありがとう、村長。私が身重の間、私の分まで動いてくれて」
ウィッチサキュバスが妊娠した事が判明した翌日から、ウィッチサキュバスは村の酒場に篭って男の精をすする日々が続いていた。無論、敵襲に備えて入り口は巧妙に細工され、結界も張られた場所である。
主戦力の一人が一時的に抜ける事が判明した後、『紫の月』にサキュバスに転じた女性三人を始め、侵略と共に増えた『住民』を強化し、領地を防衛する事に重点を置くようになった。そのとき陣頭指揮や訓練のプログラム作成、町の建設計画及び妊娠祝いのパーティや出産祝いのパーティの企画を行ったのが、他ならぬ村長であった。
「長年の夢だもの。当たり前よ」
そう村長は力強く返事するものの、ハードワークによる疲労の色は拭えない。尤も、お産を終えたばかりのウィッチも似たものといえば似たものなのだが。
二人の友情と、これからの計画及びリハビリプランを確認しあった後、二人は産み落としたばかりの赤子サキュバスを連れて、頭目である伝説の淫魔二人の下へ赴くことにした。赤子に、伝説の淫魔直々に闇の洗礼を施していただくのだ。
まだまだ不安定な楽園計画であるが、二人は以前に比べれば幾分か楽観的ではあった。まぁそれも無理はないだろう。何故なら……。

「「元勇者のサキュバスが産まれたもの。きっと楽園計画はうまくいくわ♪」」

その後、淫魔リリス・リリムによる洗礼を受けた子供の淫魔は成長し、類まれなる戦闘力と美貌、そして慈愛すら感じさせる、村落の徹底した蹂躙によってサキュバスの楽園建立に多大なる功績を残し、人々に恐れられたという……。

Fin.







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