「た〜まごを〜、し〜ろみと〜、きみにぜんぶわけまっしょう♪
こーむぎこ〜、き〜み〜と〜、じょうずにまぜましょう〜♪
し〜ろみは〜、さ〜とうと〜、ばにらえっせんすいっれって♪
ま〜ぜまぜ〜、あ〜わたて〜、くりーむできあがり〜♪」

ル〜ルルル〜♪ラ〜ラララ〜♪と、シロフォンかマリンバで奏でられそうな素朴な音階の歌を歌いながら、小さな女の子がキッチンでお菓子を作っている。女の子とは言っても、クッキング帽が乗るべき頭は、とんがり帽子によって覆われているし、青とクリーム色の布地を、灰色の布で縁取ったケープを身につけている。何より、キッチンの片隅には、山羊の骨を象ったような先端を持つ、彼女の身長よりも高い杖が置かれている。
テッサ=ルアミナ、そう名乗っている彼女は、外見通りの少女ではない。それどころか人間ですらなかったりする。
――魔女なのだ。
'ドーター'としてこの店の従業員もやっている彼女は、本日この宿で行われる、教祖バフォメットとそれに従う魔女達の集まりたるサバト……そのために大量のケーキを用意しているみたい。私も手伝おうか?って聞いてみたけど、彼女はそれを丁寧に断っていた。
「……でも大丈夫なの?わりと大規模だったりするけど。あの量を貴女一人で作るのは骨じゃないかしら?」
実際、彼女――達の教祖、ルミル=ワクシワンドが率いるサバトはそれなりの規模だ。それこそここの大ホールを貸し切る程度には規模がある。その規模を満たせる程度のケーキを、一人で作るのは明らかに酷だ。私でも……正直あの人数は辛い。
「大丈夫ですよぉ♪ルミル様が他の魔女何人かにホールを作って持ってくるよう伝えてますから♪」
「あ〜、成る程ね」
なら数は十分足りるわけだ。問題は味だけど……少しばかり見ている分には調理は問題ないわけで。'エンプレス'様が甘党だから、彼女もスウィーツを作り慣れているしね。
「番台さんはこの時間、ニカちゃんの側にいなくて大丈夫なんですかぁ?」
「アリスと遊んでるから、今は問題ないわ」
最初のうちは鬱いでる時間が多かったけど、今は何とか……落ち着いてるみたい。
……にしても、'エンプレス'様も'ドーター'も……いや、ルミルさんもテッサちゃんもあの事件から早々にニカを魔女に変えようとしないで下さいよ。流石にあの状態から空気を読んで、「ふむ、ならば儂の元で、新たなる時を歩もうではないか」的な一言と共に儀式を行わないくらいの人間的常識の一つを発揮してくれるかと思ったんですが、全く……。




サバトの時ですら、デルフィニウムは平常営業だ。大量に入る分はどうしているか?実はそれ専用の部屋があったりするわけで。'エンプレス'部屋と'ドーター'部屋(隣同士なのだ)の、ドアを基準にして中間部辺りに隠し扉があったりする。御察しの通り、そこが儀式場への入り口だ。掃除担当の私ですら、'エンプレス'様の許可無しには入れなかったりする。まぁ、掃除する意味がないほど、普段から何かしら綺麗な場所なんだけどね。
どうやら宿を巡るおねぇさまの魔力を拝借して、空間整備用に使ってるみたい。魔力変換器なる物を発明したり……実は途轍もない発明をしていたりするのが'エンプレス'様だったりするんだよね。普段は自室に篭もってナドキエ出版用の原稿を纏めていたりするだけだけど。
そんなわけで私は、今日も今日とて帳簿と睨めっこしながら、改築場所の確認を行うことにしたのだった。基本、増築は殆どしないのよね。精々給金と商売関係の出費くらいにしか使わないから、正直非常に宿にお金は余っている。給料問題も、'DJ'以外は起こらないしね……。
「……あ、三番と八番」
そろそろ設備の改装が必要な部屋を思い出し、私は改めて資金の振り分けと、今後の予定を組み立て直したのだった。
後は、今日来るお客の確認と……'エンプレス'様に請求する資金の計算。大体大規模な物が三ヶ月に一回で、その月の給料を差し引いて請求する形式になっている。無論店員特権で割安にはなってはいるんだけど……如何せん人数がね。まぁサバト運営中に'ドーター'ちゃん含む魔女達の'お兄ちゃん'からの若干の上納金があるみたいだし……でもそれ以上に、'エンプレス'様にはアレがあるからなぁ……。
と言うわけで、殆ど懐は痛まない様子。いずれサバトの街とか作るんじゃないだろうか。出来そうなのが何とも、ね。
まぁそんな店員の心配より、私が懸念しなければならないのは、昨今の状況だったりする。如何に領主公認とはいえ、中央教会信者(それも、狂の付く方々)に何時襲われないとも限らない。特に西の方で異端狩りの方々が妙に活発化していて、ここに通っただけで異端扱いで処刑されかねないし……その所為で客足が遠退きかねないわけで……かといって、宣伝して良いものでもないし……お客様に宣伝させるわけにもなぁ。
「……はぁ」
結局、今まで通り噂を何処かしらでテッサさん達に流してもらうのが最善か……また迷惑かけるなぁ。
帳簿を書き終えた私は、やや暗澹たる気持ちを抱えながら、いつものようにおねぇさまの部屋にそれを提出しに向かうのだった。

「――ふふっ♪心配ないわぁ♪こっちのアナからだったら、貴方は責任とかそんな事、全っ然考えなくていいんダ・カ・ラ♪」
「ふぇ、ええっ!?」
「あら、貴方ア〇ルは初めてなのぉ?……ふふふっ♪大ぁい丈ぅ夫よぉ♪何処までも……愛欲と快楽に満ちた時間を……貴方にあげちゃうんだからぁ♪」
……流石おねぇさま。一見さんにいきなりアナルプレイを求めるとは……でも実際気持ちよかったりするのよねぇ……腸液でテラテラに濡れた肉襞を、括約筋でキュッ、キュッて締めると、ズブズブと私の中を貫いていく男の人の肉棒の形や感触が、カリの反りとか、太く凝るその硬さとか、たまたまの皺の一本一本まで分かるのよねぇ……ふふ……。それが子犬みたいに可愛らしくふるふると震えちゃって……そこで強く抱きしめてあげちゃうと……うふふ……うふふふふふ♪
「……はっ!」
いけないいけない。また我を飛ばしちゃった……やっぱりおねぇさまの部屋の前は危険だよ……はぁ。
と言うよりおねぇさま、一瞬でお客さんを浚ったと思ったら……そんなにストライクゾーン的中だったんですか?彼。そもそもおねぇさま、ストライクゾーンが妙に広くないですか?下限と上限が全く見えないんですけど。



「はわわ〜♪」
「妖精さ〜ん♪今度は何して遊ぶ〜?」
「え〜とね〜、ん〜とね〜」

……えっと、何が起こったかをちょっと記憶を巻き戻してみよう。
・'アリス'ちゃんと遊んでいるニカの様子を見に部屋に向かう。

・宿に見慣れない妖精がいる。

・無邪気に彼女達と遊んでいる

・何か妖精の目が潤んでいる。←今ここ。
多分'アリス'ちゃんの魔力に毒されつつあるのかもしれない。と言うより此処にいる時点である程度毒されてはいるだろう。次の仕草が問題ある場合……私は、密かに番台服の隙間から、ある用意をした。そして、
「……はわわ〜♪おててを〜おまt」

――はい没シュート!

「――はもんっ!」
……危ない危ない。流石にニカには早すぎるわよそんな遊びは。勿論アリスちゃん――は体が覚えていそうだけど今は知って欲しくないわ。
咄嗟に尻尾のうち一本を伸ばし、彼女の体全体に巻き付けて口を封じつつ、他の尻尾がうねうねと蠢く中に引きずり込んだ。正直、かなりくすぐったいから長時間やると私が危険だったりもするけど……我慢我慢。
「?ラン……おかぁさん……、どうしたの?」
「妖精さんは何処〜?」
……まだ、流石にお母さんと呼ぶのには抵抗がある、か。まぁ、無理に呼ばせるわけにはいかないし、ゆっくりと、心を開いてもらえればいいかな……って、そんな場合じゃないわね。
何処か不満げと言うより、驚きと戸惑いに満ちた声を挙げる二人。まぁ……仕方ないか。でも私の心中は穏やかではなかったりする。
背中にはリットル単位の冷や汗が流れ、それを尻尾で何とか拭ったりしている。その間にも三本の尻尾は妖精を毛玉のように包み込んで全身擽りの刑に晒していて、声一つ漏らさせないよう尻尾の先端を口に差し込んだりして……おねぇさまに犯され慣れてなければ間違いなく躯をビクビクさせていただろうね……私。
「……今、妖精さんが教えようとしていた遊びはね、貴女達にはまだ早い遊びなのよ。そうね……三年後にどういうものだったか、ちゃんと教えるから、今は我慢してね」
えー、と不満の声が上がるけど、何とか私は説得して説き伏せた。や、だって流石にマスターベーションや百合行為を、初等学校を卒業していない年の子に……ねぇ。
「……じゃあ、他の人に聞くのは?」
「それも止めて」
再び不満の声。けど流石にそれも避けて欲しい。この宿の人にそれをやったら、間違いなく……実践する。絶対実践する。
「ごめんね。でも、我慢を覚える年は過ぎたでしょう?大丈夫。私は、この事に関して嘘を吐くつもりはないわ」
それでも不満げな彼女を、私が言葉で何度も何度も説得し、ニカの口から「……分かった」の一言が漏れ出たところで、私は静かに溜め息を吐いた。同時に、尻尾の動きを止める。
「……は……はは……」
尻尾の隙間から、瞳を濁らせて、暖かい息を吐きながら体をびくびくと震わせる妖精が一人、ピトリと地面に落ちた。笑いすぎで呼吸困難になっているのは間違いないだろう。……死んではいない。体の痙攣は凄いけど。
……そう言えば、'アリス'ちゃんは……ん?あれ、ひ、この感触は……ひぁっ!

「あはは、ランさんの尻尾ふかふか〜♪」

「ひぃ、や、やめ、ひゃうっ!」
私の尻尾を枕にして、アリスちゃんがそのまま別の尻尾に体をくるもうとしている!既に番台服に納まっていない尻尾が数本を、記憶が無くても淫魔と言わんばかりの指遣いで握り、誰しもが羨む瑞々しい肌ですりすりと頬擦りしている!
妖狐に限らず、獣系の魔物は大概が尻尾が性感帯だ。普通に握られるだけでも……結構感じてしまうのだけれど、もし相手が意図不意図関係無しに、感じさせるような指遣いをもって尻尾を握ってきたら――!
「ひぁ、ひ、ゃあゃあっ!」
まるで皮膚の下に寄り集まった快楽神経を直に撫でられているかのよう。拙いように見えて的確な部位を捉えているその動きは、私が何重にも封じている本能の奥底に、反復機能付きの目覚まし時計のように何度も、微睡みを醒ますように呼びかけて――だ、だめ、魔力、漏らしちゃ、ぁっ!
「ふあふあ〜♪気持ちいい〜♪」
――!!っ!!っ!!
「ぁ……ぁあはぁ……ぁ……」
叫んじゃ駄目!今叫んじゃ駄目!叫んだら……ニカに妖狐の魔力を吹き付けちゃう……耐えて……耐えるのよラン!
余りに気持ちよさそうにしているアリスちゃんが気になったのか、ニカも先程の不平を忘れたかのように私の尻尾にダイブしてきたのだ!快楽とは無縁の動きの筈なのに、アリスちゃんとは全く別の予測できないような刺激が、私の精神障壁の構築を手間取らせる!
既に第一バリケード臨界点まで来ている中を、私は紙一重で何とか耐えていた。この二人がこのまま寝てしまう、そこまで耐えられれば……私の勝ちだ。
得体の知れない勝負を頭に浮かべながら、私はひたすらに、体を巡る痺れるような快感に耐えて時間が早く過ぎることを祈ったのだった……。



「――すまんのぉ。ロン。国士無双じゃ。これで主らはトビじゃの」

「……どうしてこうなった」
ようやく寝た二人に布団を掛けて、妖精を元の場所に送り返してから、私は'エンプレス'様を探しに行くことにした。とはいっても、行き場所はもう分かってはいる。私は苦手だけどね……お尻を何度も撫でられるし……。
おねぇさまの旦那様が治めるという街の裏路地、そこの一角にある賭場に、術を使って外見を誤魔化して入っているのだ。今の外見は(私には普通のバフォメットが見えるけれど)、年齢にして22歳くらいの、やや大人びた女性の姿だったりする。
打ちひしがれる他の博徒達を尻目に、'エンプレス'様――ルミル=ワクシワンドさんは意気揚々と店から出るのだった。何故か、貰う額は通常よりも少なくしているみたい。まぁ……暗算したけど、店が傾くわね。あの点差で勝った額をペイアウトしたら……。
っと、見とれている場合じゃないか。
「――ルミルさん」
「おお、'番台さん'か。こんな所で奇遇じゃのぉ」
口ではそう言ってはいるが、実際はここに来るのが分かっている。寧ろここに来るように指定したのはルミルさんだ。……人数が足りない場合の、数合わせとして。
結果、その心配は無かったようで、私は数局、彼女の視線に入らないうちに店を出て、目立たない位置に立って彼女を待っていたのだった。
「……按配はどうでした?」
「問うまでもないわ。儂が居らん間にあの賭場も随分腕が落ちたものじゃのう♪」
楽しげに、財布の中の硬貨を見せびらかすルミルさん。はしゃぐ姿は子供にしか見えないのに、やってる事は完全に玄人のそれ。ギャップ萌えとやらを最近は狙っているらしい……何だろう。あざといと言うべきなんだろうか。
ルミルさんの特技の一つに、賭博の異常なまでの強さがあったりする。'サバト'以外では滅多にお金を使わないルミルさんだけど、ギャンブルだけは別だ……本の印税を使うから。それでいて負けが殆ど無い。あったとしても、収益がマイナスになることはない。デルフィニウムではこんな言葉まであるらしい。曰く、『金策手段で困ったら'番台'か'女帝'を頼れ』なんて……最初から頼ろうとしないで欲しい。特に'DJ'。壊れた盗聴器具の代金請求はほぼ自業自得でしょ……話がずれたけど。
「ま、あやつらもこれに懲りて技を磨くじゃろ。次はもっと分かり辛い詰みを見せて欲しいものじゃの♪何も知らぬおなごを演ずるのも大変なのじゃ。気を抜くと笑い出しそうでたまらんかったぞ♪」
「つ……詰み……」
イカサマを見抜いた上で、それに気付かぬ振りをして巻き上げたのね……。……ルミルさんは本当に頭の良い御方(棒)。
心底楽しそうに賭場の惨状を語る彼女にちょっとした身震いを覚えながら、私は凱旋パレードの如く意気揚々と歩く彼女の横をとぼとぼと歩いていくのだった……。



「そう言えば」
「ん、何じゃ?'番台さん'」
デルフィニウムへの帰路にて、サバトに必要な薬草やアロマの類を買いながら歩いていた時に、ふと思い出したことを尋ねてみた。
「……少し前に'ドーター'ちゃんが話していた、『魔王軍魔導部隊作品品評会』はどうなりました?」
サバトは本来、魔王軍における新たな魔法や魔法薬、魔法道具作成に勤しむために創られた組織だったりする。先の魔王の代替わりでその方向性は変わったとはいえ、今でも魔女や奴隷の総合的な質の向上のために、定期的にサバト同士で集まって、魔法作品の品評会などを行うらしい。全てテッサちゃんから聞いた話だ。
ルミルさんは私の言葉を聞き、少し考え込むと、やがて何かを思い出したようにぽん、と手を叩いた。
「ん?……おぉ、『バフォの集い〜お兄ちゃんに首ったけ♪魔女のとっておきコンテスト夏の陣〜』の事じゃの」
……幾ら何でもタイトル変わりすぎである。正直、威厳も何もあったものじゃない。しかも夏だったんだそのイベント……。そんな私の内心のゲンナリを平然と無視しつつ、ルミルさんは続ける。
「いやいや、有意義な宴じゃったぞ。特にシュプトアらと炉道を追究せんと誓い、リーヴェ服飾店への新規服装案や魅力を上げる新たなる仕置きの御手などを話し合えたのは重畳じゃったわ」
「ろ……炉道……」
この言葉を聞いて頭がクラクラするのは、恐らく私だけではないだろう。他の人も、耳にしていたら間違いなく頭を痛めるに違いない。
「で、肝心のコンテストじゃがな……シュプトアめ……いつもながら思うが、あんな名手を何処で引き入れよったんじゃ……。
ミファリオットと名乗るシュプトアのサバトに属する魔女が一位を穫りおってな、テッサは二位だったのじゃ。改良を加えた九尾湯、その名も『蓬莱湯』を出したのじゃがな……」
これは正直私も驚いている。おねぇさまと私、二人の九尾狐の持つ魔力をふんだんに詰め込み凝縮させて、数日ほど湯の中に漬けて寝かせ、テッサちゃんが何種類もの薬草(中身はテッサちゃんとおねぇさまの企業秘密)を適量配合して注ぎ、古式ゆかしい巨大鍋で三日三晩ほどぐつぐつ煮込んで、乾燥させた物を砕いて袋に小分けする……そこまでの手間をかけた物が負けるとは……。
とはいえ、二位は凄い。私は密かに自分の給料を叩いて、サバト用のカシオレクッキーを買っておくことにしたのだった。



デルフィニウムに着いてから、私は再び番台の業務に戻る。サバトが来るのはもうじき。早めに来させるのは他のお客との鉢合わせを避けるためだったりする。
考えてみて欲しい。大挙して押し寄せる幼女とお兄さんたちの群れ。どんな同伴出勤だろう。色々な意味で宿が気まずくなるのは間違いない。と言うより私自体そんな光景を目にしたくはない。
「……おねぇさまは絶対気にしなさそうだけど」
寧ろそのうちの何組かを巻き込んで犯しそうだ。間違いない。何本かの尻尾を陰茎のように変えて分裂させつつ、魔女のあの可愛らしい肉鮑に埋めながら、お兄さま方の……逞しくそそり立った松茸を、その香り豊かな汁ごと体の中に取り込んで……甘い声は潮騒と森のざわめき……味わうのは海と山の幸……山は海に栄養を与えるから、松茸が立派だと鮑もとっても美味しいのよねぇ……くちゅくちゅって瑞々しい音を立てて、あの娘達の可愛らしいおめこ汁が溢れて……いつまでも瑞々しいままの膣肉がキュッて締め付けてくるもの……お兄さま方の肉棒も、私の咀嚼に合わせて感激に打ち震え、美味しい精を私の中にさらに……それに合わせるようにあの娘達も、私の尻尾をねだるようにくわえ込んで……まさに愛欲の華……ふふ……うふふふふ……うふふふふふふふふふふ……。
「……………………ハッ!」
今、私、何を……って、日を経る毎に明らかに妄想が悪化してるわよ……何してるのよ私……あぁっ、口元に涎が!
慌ててハンカチでゴシゴシ拭うと、取り繕うように再び業務に戻ることにした。えっと……サバト一団の来訪は……時間的にはまだ大丈夫ね。他の部屋の確認は出来そうだわ。
一度来客予約一覧を仕舞うと、私はそのまま部屋の確認に向かうことにした。まぁそこまで荒れていることはないし、行く前にも一度確認したからね……おねぇさまの部屋以外は。と言うかあそこの部屋は、おねぇさまの魔力が何処までも濃縮されて部屋に充満していて、理性が保てなくなるからおねぇさまに任せるしかないのよねぇ……あぁ。
そしたらその後で……ニカと遊ぼう。……ニカで、じゃないわよ、'DJ'。貴女何しようとしてるのよ……。



サバトへの準備は順調に進んでいるみたい。'シスター'様……懺悔様は心境的には毎回の事ながら複雑みたい。元々中央教会の神職者であった懺悔様は、任務中に襲われ、ローパーとなった今でもサバトについてはあまり良い印象を持ってはいないようだ。信じる神の違いらしいけれど……まぁ仕方ないのよね。
'エンプレス'様もそうした懺悔様の気持ちを察して、懺悔様だけはサバトに関わらなくて良いと、信教の不干渉の姿勢を取っている。まぁ……魔物になってしまい、今まで信じていた神が敵という立場に置かれてしまったとはいえ、それでも信じるものを変える事はそう変えることなど出来るわけがないし、今まで居た環境での知識が変化するわけでもない。
だからこそ……最初は衝突してたらしいのよね……ルミルさんvs懺悔様。

……あぁ、それにしても今思い出しても恐ろしすぎる。店員達の話に聞く、あの二人の対決の帰結は。
'DJ'曰く、「……あれだけやって、全く二人の人格を壊さないオーナーって……」。
テッサちゃん曰く、「……サバトが終わるかと思いましたよぉ……うぅっ……」。
ミナエさん曰く、「計二ヶ月……あの二人は指名出来なくなりましたわ」。
私も一事言うならば……、「……おねぇさまのお遊びレベルで、私は九尾まで生やされたのね……」。
中身を解説する気にはなれない。解説したら、まず間違いなく……私が終わる。まぁ……その結果として二人の間では不戦条約が結ばれたから、結果オーライではあるんだけれどね。
「あ、懺悔様」
「あら、'番台'さん」
普段付き合う分には、やや堅苦しいながらも常識的で良い人ではあるんだけどね。ちなみに彼女の部屋である通称、『懺悔室』の布団は、彼女自身の手で干されていたりする。手?と突っ込んではいけない。
「本日の名簿です」
私が一枚の紙を手渡すと、懺悔様はそれを手で受け取り、軽く例を告げた。
「有り難う御座います。貴女にも、神の御加護があらん事を……」
中央教会式のお祈り。姿を変えてしまった彼女だけれども、その祈りに込められた意志は本物だ。私に対する加護……魔物である私にあるかどうかは分からない。けれどもし……神様。貴方が今でも彼女を敬虔な信者と見なすならば、彼女のために、奇跡を起こして下さい。
……何て、虫の良いことを考えつつ、私と懺悔様は一旦別れることになった。これから……別名『ト'ラン'ザム』(命名、おねぇさま)状態で、板前をやっている'マイコ'はんを助けなきゃならないから。パーティ料理はある程度の量は必須。当然その分の人手は必要……なんだけど、私はその人手をわりと補うことが出来てしまう。以前も手伝っていたとはいえ、尻尾が生える度に能力値変わりすぎでしょう。何だろう、魔物のハイスペック。



……以前、何故'エンプレス'様は普段、魔女を引き連れたりしないのか、と尋ねたことがある。当然、あの大所帯は目立つからと言う理由は理解している。けれど、魔女を一人だけしか連れていないバフォメットというのも、中々珍しいのだ。
その質問に、ルミルさんはふん、と軽く鼻を鳴らすと、私に言い聞かせるように呟いていた。
「……考えてみるがいい。あのテッサが、儂のサバトの中で一番大人しい魔女じゃ。女三人寄れば姦しいというが、そんなもの、二人の時点で十分姦しいわい。
そんな魔女達が、執筆中の儂の周りでペチャクチャ、あるいはギシアンしている……'番台'さん……主は耐えられるかえ?」
ご免なさい後者は絶対に無理です。間違いなく気が散って作業どころじゃなくなります。
ルミルさんは分かればいいのじゃ、と『ナドキエ出版』用の寄稿文を書き記していたわけだけど……内容は推して知るべし。少なくともサバトの暴露本、サバトの中身などを一切排している筈なのに、読み終えるとサバト入信者候補になるあの文は一体……。と言うよりその出版社もよくも載せるもんだ。何処かから訴えられないのかな……っと。
「……会場準備、終了」
何故か年々床面積が広がる、隠し扉の部屋。そこを掃除し、テーブルと椅子を人数分用意して整理した。魔女の力でも畳んで持ち運べる簡易机と簡易椅子だ。……回を追う毎に作業効率が上がっている自分が怖い。
ともあれ、後はここに魔女達を入れて、料理を置くだけだ。その後は……全てルミルさんの管轄である。宿に関するクーデターを起こしたり、宿に対して何らかの不利益を与えたりしない限り、私達はなるべく干渉しない。その代わり、中で何が起きようと、責任は全てルミルさんが持つ。それがサバト開催の際にルミルさんと宿が結んだ契約だ。
「……さて、と」
掃除用エプロンと三角巾というオカンスタイルから、番台モードへと移行する私。何せ、これから相応規模の魔女御一行をお出迎えし、十と四分の三番線方式であの部屋に案内する必要があるのだ。
改めてリストを確認し、テッサちゃんとも照らし合わせて(欠席連絡もある辺り、サバトはそこまで厳しくないのでは?と思わされる)、ミナエさん特製垂れ幕(わりと使い回されている筈なのに、解れ一つ見えないのが凄い)を確認し、'DJ'の録音器具を没収し(ルミルさんに一応確認をとった結果、必要量以上のそれを用意していたみたい。いい加減にしてよ……)、'マイコ'はん――アマテさんと料理運搬の頃合いを図って……。
おねぇさまは……外出中。珍しいな。何時もだったら『うふふ……誰をお持ち帰りしちゃおっかな〜♪』って私の持つ名簿を勝手にのぞき込んで、連れ込む相手の品定めをしているんだけど……。
'アリス'ちゃんとニカは、今日はお休み(アリスちゃんは完全予約制で、一部のお客さんだけが彼女と遊ぶことが出来るのだ。理由……そうね、物理的乱暴を振るわれたら困るから。彼女を愛してくれる相手しか許さないのだ。
それで、今日は予約はゼロだから、こうしてゆっくり寝ていられたりする)。一緒の布団でシンメトリーの格好で寝ている姿は、本当に、とても可愛らしい。密かに『絵巻』を使って撮したことがあるのは内緒だ。
他にも、温泉の温度、部屋や座敷のセットなどを一挙に終わらせて……私はいつもの番台席に座る。時間は……そろそろ予約の時刻。一人くらい早めに来る娘が居てもいいんだけど……などと入り口を眺める。
「……ん」
戸の開く音。同時に、何処か元気の良くて姦しい声が……沢山。
キャピキャピと話しをしながら、一列に並んでこの宿に入ってくる様子は、何処か遠足を思わせる。それも……父兄同伴の遠足を。よくもまぁここまで多様な年齢層をサバトに引き込めたものだ……ルミルさん恐るべし。
と、そんな事よりも、私は早々にリストを取り出すと、彼女達の名前と照らし合わせて、入場賃を頂き、場所を案内したのだった……。



「……では、これより黒ミサを行う。儀礼は……今は割愛させてもらおう」
……やや薄暗闇の、蝋燭だけが明かりとなり闇を照らす広間に、やや高めの、しかし厳かな声が響き渡った。澄んだ赤の液体が、厳粛さに従うように、グラスの中で鳴りを潜めている。
「……皆の者、'誓いの証'を手に取るが良い」
その声と共に、闇の中に幾つものグラスが浮かぶ。様々な色ではあれど、その全てに平等量の液体が入っていた。
掲げられる高さは、上限は様々ではあったが、下限は一定である。……何故か、一定なのだ。
「……では、'移ろいの月'、ルミル=ワクシワンドの名の下に――」
緊張の糸が、さらに張りつめる。まるで解放の時を待ち望むかのように。そして――!

「――乾杯!」

「「「「「「「「かんぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ♪♪♪♪」」」」」」」」
その声が響いた瞬間、蝋燭on the cakeの炎が消され、広間の天井に付いた魔力灯の光が広間全体を照らした。其処にあるのは、魔女と魔物と所により'お兄ちゃん'が席に座り、テーブルには様々な料理とお菓子が盛られた、紙の輪やボンボンが飾られている――パーティ会場だ。
「いただきーっ!」
「あぁそれ私の唐揚げ〜!」
「お兄ちゃん♪あ〜〜〜ん♪」
「あ、あ〜〜ん……♪」
「何?アイツったら見せつけちゃって!私達もやろっ!ほらっ!あ〜ん!」
「ちょ、あ、……あーん……んんんっ!」
「……ふぅ。やっぱ、三年物はおいしいよね〜」
「その言葉、ちょっとオバハン臭いよ〜」
「ちょ!大丈夫!私は大丈夫だから!」
「あっ!それってまさか……」
「うん♪アルラウネさんにもらった取れたての蜜〜♪」
「バフォ様〜♪誕生日おめでとう御座います〜!」
「バフォ様おめです〜♪」
「うむ、善哉。皆もこのサバトの誕生を祝うと良いぞ♪ほれ、もっと葡萄酒を口にせんか♪のぉ兄上殿(マイダーリン)♪」
「ハハハ♪いいさ愛しき妻(マイハニー)♪ワインは精霊の酒。飲めば魔力の泉湧く、ってね♪」
「はぅぅ……ルミル様、羨ましいですのぉ……」
こんな感じの出来事が、黒ミサの開始前には行われる。はっきり言って、完全にパーティとか宴会のそれだ。まぁ、今回の黒ミサは『ルミル=ワクシワンド誕生日会』も兼ねてはいるから仕方はないが。
いくら食べても太る心配はないのがこの魔物達と、サバト所属の男性諸君だったりする。理由は、第一に料理やお菓子を魔物達は、体内で魔力に変化させたりしているのだ。お陰であまりお腹に溜まることはないらしい。第二に、男性の場合は'魔女の秘薬'がある。魔女にとって理想の体型を保つこの薬を、食事前に飲まされていたりするのだ。お陰でさして腹は膨らまない。そして第三に……そもそも、相思相愛であるが故に、相手に無様な姿を見せたくないという思いを、互いに保持している。当然、運動もする。全ては愛する相手のために。それがサバト発展にも役立つ思考なのだ。
ケーキを切り分け、口に運ぶサバト参加者達。これが黒ミサだと誰が思うだろうか。一様に浮かべる幸せな顔は、人間と何ら変わることは無いというのに。

「サバト第一条!」
「「「「一つ積んでは魔王様のため!」」」」
「「「「一つ積んではお兄ちゃんのため!」」」」
「「「「一つ積んではサバトのために!」」」」
「「「「今宵も世界を魔(炉)色に染める!」」」」
ある程度までパーリィが進んだところで、ルミルはサバトにおける基本的な条項の復唱を始めた。この復唱には強い魔力が込められており、聞くだけでもわりとしっかりサバトの思考に染められる代物だ。魔力の影響でトランスこそしないが、逆にそれのお陰で、自らが染められていると気付かずに染めることが出来るという。
「善哉!サバト第二条!」
「「「「来る者拒まず!」」」」
「「「「望む者差別せず!」」」」
「「「「去る者は絶対許さない!」」」」
「「「「そして世界を魔(炉)に染める!」」」」
劇場効果もあって、この方法は効果絶大だ。一度でも黒ミサに踏み入れた相手は、まず間違いなく信徒になる。……色々と言葉が酷い気がするが、これが教義故仕方ない。
「善哉善哉!サバト第三条!」
「「「「純朴に爛れよ!」」」」
「「「「永劫の快楽を得よ!」」」」
「「「「故に我らは研鑽す!」」」」
「「「「導き手たるバフォメット様の元で!」」」」
大音量、特殊な反響、明滅するライト、少し高めの室温……徐々に上がりゆくテンションの中で、この宴の主催者たるバフォメットは声を張り上げて叫んだ。

「我が名はルミル=ワクシワンド!'移ろいの月'たる我が家名の下、そなたら迷える羊を救済せし伝道者なり!」

「「「「「「「「きゃーーーっ♪ルミルさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♪」」」」」」」」
魔女達を筆頭に女の側から挙がる黄色い声、明滅するフラッシュ。ちょっとしたライブ状態だ。新たな'使い魔'候補は陶酔こそしないが、既に自らがサバトの一員であると意識に刻み込まれていた。
女性達の「ルミル様ぁ!」コール。それは何度も何度も広間の壁に反響し、声に籠もった魔力が全員の全身に染み渡っていく。ルミルに対する、忠誠心が刻み込まれていくのだ。
「善哉!これにて条項詠唱は終了する!続いては、新たな発明品の紹介を行う!皆の者、テーブルを隅に寄せよ!」
テーブルを隅に、それが何を意味するのか、新入り以外は当然理解していた。いや、周りの様子を眺めていた新入りもすぐに理解することになった。その証拠に……女性側は何処かもじもじと内股気味になり、男性側はやや前屈み気味になっている。まさにパブロフの犬、と言うべきか。
……いや、それにしては、妙に周りの様子がおかしい。全員、息が徐々に荒くなっていく。中にはケープや上着を脱ぎ始める者もいた。
いつの間にか仄かに青さを増した明かりの中、何名かの頬がほんのりと赤を帯び始めている。中には明らかに瞳が潤んでいる者や、血走っている者もいた。だが教祖の命令は絶対だ。特に教祖自身が率先して動いているならば……自らも動く必要はある。
こうして、お菓子や料理が幾つか残ったテーブルを移動し終えると……小さな段の上に立ったルミルが、その右には彼女の夫を、左にはテッサを置いた状況で、再び高らかに告げた。
「皆!夏の品評会の事を覚えているか!あの夏、我がサバトは当宿デルフィニウムの全面の許可と助太刀を得て、九尾の魔力をふんだんに詰めた温泉の素――『九尾湯』をさらに良質化した『蓬莱湯』を出した!
結果は二位とはいえ、我がサバトに於いてこれほどまでに受け入れられた作品。この場に於いて、試さぬのは勿体なかろう……?
――テッサ」
ルミルの声に応えるように、テッサは懐から一つの袋を取り出す。細やかに縫われた生地は、砂一つ通すこともないだろう。
「――ダーリン」
「オーケイ、マイハニー♪」
ダーリンと呼ばれた男は、手に持った剣をそのまま天に向け、何かを呟いた。すると、広間の一角……テーブルと信者の中間に出来た空白地帯が、唐突にべこり、とやや深く凹んだ後、ぼこり、と周辺を囲うように隆起した。凹んだ部分には、何やら水……いや、お湯が張られている。
湯気が立つ、澄んだ色をしたそれに、テッサが袋の封を開き、中からさらりさらりと瑠璃色の粉を入れていく。青い光の中でも、その青は一際濃く輝いた。
お湯に溶けた『蓬莱湯』は、直ぐにその湯の色を自らの色に染め上げる。と同時に、内包していた、甘く芳しい香りを辺りに充満させていく。その香りに当てられたのか、それとも別の要因があるのか、'使い魔'の数名が我慢できなくなったらしく、'主'である魔女に襲いかかっていた。
当然の如く魔法による反撃を喰らい、動けなくなる数名を後目に、'ダーリン'が作った温泉は、幽かに空間をねじ曲げつつその面積を広げていき……いつしか料理のテーブルが遙か遠く、目の前一面に瑠璃色の温泉が広がるようになっていた。いつの間にか、桶に椅子(但し助平椅子仕様)がほぼ全員分用意されている。どうやらルミルも魔法を使ったようだ。
平原と揶揄される胸(但し揶揄した者は例外なくサバト入信後触手の森入りor天人フルコースサバトmixが確定)を自慢げに反らしながら、ルミルは……しかしやや意地の悪い笑みを浮かべていた。
「さて、コレから入浴……と言いたいところだが……当然、皆は知っておる筈であろうな?

温泉は……ただ入浴するだけのものではないと」

テッサは、その言葉にケーキ調理中のことを思い出していた。あの時、アマテ氏に頼み、このパーティ用の料理の下味に、『ある物』を使って欲しいと頼み込んだのだ。……二つ返事でOKが来る辺り、オーナーから何か口利きがあったのかもしれない。
兎に角、結果として教祖ルミルの目論見は見事なまでに成功している。尤も、早まった者も数名いたものだが……。
改めて黒ミサでの辺りの様子を眺めると、中々に壮観である。
「……ひゅあぅぁ……♪」
「……るみるさまぁ……」
「……あくっ、ひぅっ!」
魔女や魔物達は一様に頬を赤らめ、腕は快楽を貪るように胸や股間に伸びていた。
「……う……ぐっ……」
「……ふぁっ……ふぅぅっ!」
「……はやく……はやく……っ!」
使い魔達も同様で、中にはズボンも下着もキャストオフ!して反り立つ例のブツを握りしめる者も居たくらいだ。一様に――皆、発情している。
実はテッサも発情はしているのだが、『ある物』の近くにいる時間が長い分、多少耐性が出来ているのだ。
今更隠し立てすることもない。『ある物』とは――。
「――旨かったかの?『蓬莱湯』の味は……って、もう聞こえぬか。やれやれ……」
淫らな衝動をせき止めるダムは決壊寸前。その頃合いを見計らったように――ルミルは満面の笑みと共に、告げた。

――広間に、ルミルが浮かべる月が満ちた。

「――善哉!時は満ちた!皆、豊穣の時を迎えよ!」

「「「「「「んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ♪♪」」」」」」
「「「「「「うぉぉぉぉぁぁあああああああ!!」」」」」」
開門と同時に解き放たれた衝動は、そのまま性交という滝壺へと急降下していく。ある者は勢いよく押し倒し、ある者は抱え上げてキスをしたまま仰向けに倒れ、ある者は騎乗位で……。早くも粘っこい水の音がしていると言うことは、相当どちらも濡れていたのだろう。
中には、温泉の湯を互いに掛け合うカップルもいたりした。また、自らの三角地帯に温泉を溜め、わかめ酒ならぬわかめ湯を行い……男が勢い余ってクンニに持ち込むというようなシーンも存在した。
まさに狂宴。理性から解き放たれた本能が思いのままに暴走していた。広間の中では『蓬莱湯』の香りと魔物達の出すフェロモン、そして男達の精液の香りが幽かに混ざるという、何とも形容しがたい性的空間が形成されていた。
今回の『蓬莱湯』、パワーアップの理由としてこの宿の番台であるラン=ラディウスの存在が大きい。彼女が九尾の妖狐と化して、濃縮される魔力量が段違いに大きくなったのだ。
神の域に達すると評される魔力は、断片とはいえ果てしなく大きい。それを二人分も詰め込み、さらに性欲増進、精力増強、体力回復などの効果を持つ様々なハーブを適量適バランスで詰め込んだそれは、湯気に溶けて九尾の魔力を従来よりも多量に発散する。
いわば擬似的に、オーナーの部屋の状況を作り出すのだ。

「んはぁぁぁっ♪♪お兄ちゃん♪おにいちゃあああんっ♪」
過剰とも言える勢いで腰を打ち付けながら、感極まったように叫ぶ魔女。彼女が受け入れている剛直は、彼女の体からすれば恐ろしく太い。にも拘わらず、彼女はそれを苦しげな様子を見せずにくわえ込み、幼い体故の密着する陰肉で搾り上げていた。
「ああっ!イスタっ!イスタぁぁぁぁぁぁっ!」
男の方も興奮冷めやらぬ衝動を彼女の膣に――下手をしたら子宮に打ち付けていた。一撃一撃が彼女の肉を抉り、密集する神経を直に撫で上げていく。ずぶり、ずぷりと粘っこい音を立てつつ、彼女の分泌する愛液が彼の一物に絡み、掻き出されていく。既に彼女の胴体と、彼の打ち付けた腰はぬらぬらとした光沢を放ち、深く挿し入れようと身を離す度に、二人の間には液の梯子が形作られていった。
ぱつんっぱつんっという、肉と肉がぶつかる音が彼女達の瑞々しい肌から放たれている。互いに存在を確かめ合うように、体と体をぶつけ合って、さらに深く繋がり合おうとしているのだ。
雄の征服欲や雌の被征服欲と言ったものが無いわけではない。だが、少なくともこの二人に関しては、そうした次元を超えた交わりが行われ、心理的にも肉体的にも大きく結びついていた。それが魔女の魔力を強くし、また使い魔としての能力も強化していく。
「んぁっ!んあぁああ……ぁっ!中、な、なかで巨きくぅっ!」
「く、うぅああっ、しめ、つ、け……!」
魔女の魔力の一部が流れ込んだ一物は、その逞しさを彼女の中で増強し、内側から圧迫していく。その刺激に応えるように、彼女の下の口は彼のそれをしっかりとくわえ込んだ。
襞の一つ一つが別個の意志を持つ舌と化したかのように、彼のビッグブラザーに絡み付き、圧倒的な密着感と潤滑性を発揮しながら舐め解していく。竿の部分は言うに及ばず、皮の内側と外側、カリ、筋、亀頭から鈴口へと魔舌は到来し、くちゅくちゅにゅぷにゅぷと淫らな音を立てて這い回る。
「いぅっ!ぅあっ!ぃいぁっ!」
特に鈴口に対しては、まるで直に舌を伸ばしているかのように、触れるか触れないかの所を襞が往復し、生殺しと言う表現が合致する状況であった。膣肉との硬く優しい抱擁と、空間を満たす九尾の魔力によって、表層に引きずり出された快楽神経が、脳に信号を送れず悲鳴を上げている。
「んぁああっ!んぁあっ!はっ、はげし、んきゃいああっ♪」
神経からの直の命令で、さらに抽挿を激しくする男。彼女の方も使い魔からの快楽情報と九尾の魔力によって、膣内に快楽神経が密集しており、さらに大きさを増す一物によってその全てを深く刺激されていた。そしてその刺激が、さらに男を逃さないように胎内に捉えていき、襞との距離がさらに縮まっていく……!
こうなってしまうと、もう後はどこまでも高みに登り詰めるだけだ。蓄えられていく精液が、男の陰嚢の中でどぷんどぷんと音を立てているような幻聴すら二人は共有しており、待ちきれないかのように打ち付けた肉の音が、空間に高らかに響き渡る。
びゅくっ!びゅくびゅくっ!
「んあっ!でっ、でるのおっ!?だしちゃうのぉぉっ!?」
一物の戦慄き、それに反応して、女は期待に満ちた甲高い声を上げる。その顔は既に快楽に蕩け、青い光の中でも分かるほどに頬は火照り、真ん丸とした瞳は盛大に潤んでいた。
「くぅっ!うぁ、ぁ、で、でっ、で……そう……だっ!」
一方の男の側も、体の奥底に溜まったエスの結晶体が、さながらマグマの如くうねり、出口として開く一点を目指して放たれようとしているものを耐えていた。出す前に、女の側に確認しなければならないのだ。受け入れる準備はあるか……と。それがこのうら若き'マスター'との契約の一つ。
今にも絶頂を迎えてしまいそうな二人。加速する腰つき。二人の間で糸を引く、結合部から漏れ出した愛液。体格差故にキスは出来ないが、それすら意味ないと主張するかのように二人は腕を伸ばし――!

「んあぁあっ!いいよぉっ!いい、だしてぇっ!わたしのなかにざーめんびゅるびゅるだしてぇぇぇぇっ!!」
「!!!!!!!!ぐ、あ、くっ……うおおおおおおおおおおおっ!」

――びゅるるるるるるるぅぅぅぅぅぅ〜〜っ〜〜っ!

「「んあぁぁぁああああああああああああああああっ!!!!!!!!」」
肉厚の棒が一瞬で膨張し、通路を確保するのと同時に、男の体内に蓄えられた精液が一気に流入した。真空状態の部屋が外部から空気を取り込むように、肥大化した肉棒内に一気に入り込んだそれらは、その勢いのままに押し出され、彼女の胎内に向けて駆け抜けた!我先にと群がる精子達は、まだどこか初々しい彼女の膣に幾らか取られつつも、その大半が子宮に向けてなだれ込む!
子宮から、彼の精気が体に流れ込み、魔力へと変換されていく。同時にその魔力の幾らかは、再び愛液を通じて彼に向けて流され、体力を回復させていく。

どびゅっ、びゅぐ、びゅくっ……びゅくん……びゅくん。

余剰の精液を彼女に送り込む一物。不思議なことに、いくら脈打ってもそれが萎えることもなく、それどころかさらに盛大に肥大化していく。まるで彼女の中を完全に己で満たしていくかのように……。
精液が子宮の壁を叩く度に、魔女の体は歓喜にプルプルと震え、その小さな膣は精の一滴も逃さないかのように、きっちりと締め上げ、彼の腹に押しつけられていた。
自然に交差する、二人の腕はそのまま背中に回り、互いに熱い抱擁を交わす。中も外も、二人は本能のままに絡み合っていたのだ。
やがて、彼の精が今一度尽き、わななきが止まると……二人は体を重ね合わせたまま、ゆっくりと顔を上げ、お互いの顔を見合わせた。
そこには……まだ火照りが収まらない、相手の顔。
「お兄ちゃぁん……」
甘えるような'妹'の声に、'兄'は……にっこりと頷くと、そのまま再び彼女に腰を打ち付けたのだった。

そしてまた、互いの甘い時間が始まる――そんな二人がいる一方。

「だらしがない新米使い魔君♪主人の私を泣かすようなことをしちゃ駄目じゃない♪泣かすんじゃなくて……えい♪」
「ひぅっん!ひぁ、ふぁぁっ!」
「やれやれ……キミが鳴いてどうするの……でも、そんな新米君が私は好きなんだけどね♪」

『蓬莱湯』が入れられた温泉の一角、数多くの魔物と人間が交わる中、数組みの様子は違うようだ。『蓬莱湯』の放つ九尾の魔力にやられてこそいるのか、ねっとり絡むお湯に新鮮な愛液を垂らしている魔女。いや――よく見ると、温泉によって秘所が拡張され、真正面にいる男からは中身の桃色肉が丸見えの状態だ。
だが――男にそれを眺める余裕はない。何故なら……男の四肢は絡み取られ、男の持つ穴――尿道とアナルに、何か青い色をした管状のものが挿入されては引き戻されていたのだ。その根元は、温泉へと繋がっている。
『蓬莱湯』には、特殊な使い方がある。それは魔女などが自身の魔力を注ぎ込むことで、己の意のままにお湯を操ることが出来るのだ。その際に股間に端末となるように湯を潜り込ませることで、さらに精密な動作が可能になる。
今、彼はその温泉に四肢を絡め取られ、挙げ句に一物を扱き上げられ、肛門からやや硬化したそれを出し入れされているのだ。
「新入り君……いくら耐えられなくなったからって場は弁えようよ〜♪」
「う、うぅ……」
そう、この新入りは体内と体外に充満する九尾の魔力にやられ、魔女に襲いかかった男の一人なのだ。他の襲撃者も同様に主である魔女によって'躾'が行われている。
「ほらほら、そんな子犬のような目をしたって駄目だよぉ♪今の新入り君は、子犬でも出来る我慢が出来なかったケダモノなんだから、お兄ちゃんへの道は遠いゾ♪」
やや嗜虐的な笑みを浮かべながら、魔女は右の指を動かす。同時に、使い魔の体に纏わりつくお湯が、その動きを激しくした!
「ひぅぁっ!ふぁあああっ!」
アナルを突き抜け、一気に直腸にまで潜り込んだ九尾湯。水と言うよりも粘体と表現する方が的確であるそれは、彼の括約筋による圧迫を難なく押し退けながら、魔力で内側を綺麗にしつつ徐々に大腸へと近付いていく。固体とも液体ともつかない得体の知れない物体が体内を迫り進む未知の刺激に、彼の一物はその身を反り立たせていく。
同時に膨らむそれの鈴口を、九尾湯は一物全体を包みながら、入り口に封をするように一気に貫いた!
「ひぁぐっ!ぐぅぅぅああああっ!」
元来入るはずのない二つの穴、そこからの軟体進入に、彼に備わる痛覚がまず悲鳴を上げる。だが、それでも粘体は止まる気配がなかった。いや、魔女に止める気配がないのだ。
「うふふ……っ、新入り君、痛いでしょお……♪でもね、私もこのくらい痛かったんだ、君に押し倒されたとき。
痛いだけじゃ駄目。そこに気持ちよさが無くちゃ……ね♪」
お・し・お・き、と口を歪める魔女。それに合わせたように、さらに水流……粘体流はうねる。
「んあぁああああぁああぁぎぁあぎっ!」
前立腺を体内の粘体が圧迫し始めたのか、ひくり、ひくりと蠢く股間の肉棒。だがその動きは包み込む粘体の強烈な締め付けで妨害されていた。外から見ると、ほんのりと腹が膨れ始めている。
「んんぅっ♪どうかしらぁ?新入り君のカウパー液が、新入り君の粗チンの中でたまって、溜まって、貯まっているんでしょう……ふふっ♪」
痛覚と快楽神経の刺激に悶える彼の体。それを全身に絡み付く九尾湯が性感帯を押さえつつ淫らな手つきで撫で擽っていく……。
「!?!?んかぁぁっ!」
一部の粘体が、彼の乳首をほんのりくわえ始めた。歯のない口がもにゅもにゅとサクランボの大きさにも満たないそれを咀嚼し、弾力性のある不思議な感触でこみこみと弄んでいる。
殆どゼロに等しい入り口を、密着させた粘体は全体を覆うことで探り当て、その身を細くしてゆっくりとこじ開けつつ入り込んでいく。
「ひぅあぁぁっ!むっ胸ぇ、胸に入ってぇぇっ!」
おそらく普通に暮らしている以上は出すことも、ましてや入られることも無い男の胸。故に内部は神経が過敏であり、さらに九尾湯の効果で神経感度が上昇していた。その肉の壁の中を、ねっとりとした半固形物がゆっくりと、胸の中に塗り込んでいくように進入していく。
「いやぁぁぁっ!出してぇ!だしてぇぇぇっ!」
人類に未体験の刺激、それに偶然サバトに入ったばかりの男が耐えられるはずもなく、体をくねらせ涙ながらに懇願する。だが、それを聞き入れるような相手ではない。股間から及ぼされる刺激に身を幽かにくねらせつつ、魔女は外見年齢相応の無邪気な笑顔を浮かべ、口を開いた。
「ダメだよぉ新入り君♪キミはこのまま反省するまで罰……ううん、'躾'を受けてもらうんだからぁ……♪せめて我慢を覚えてもらわないと……『お兄ちゃん』って呼べないじゃない♪」
彼女の言葉に、彼ははらはらと涙を流しつつ、全身をくねらせ快楽によがっていた。全身を包み込む九尾湯が、彼の肌にねっとりと絡み付きながら不規則なリズムで快楽のツボに向けて局地的な刺激を与え、肛門から入ったそれは大腸を制圧し、そこで成分を吸収させながら小腸にまでその魔手を伸ばそうとしていた。そして、胸から進入した九尾湯もまた、乳房の奥の部分から神経に浸透し、彼の全身へと浸透していった。事前に食べていた料理の中に含まれたその成分と、徐々に混ざり合い、効果は相乗していく――!
「ひぁぁっ!あぁっ!ださせてぇっ!ださせてぇぇぇぇぇっ!」
既に九尾湯の効果であろうか、彼のマラは従来の大きさよりも遙か大きくなり、成人男性の開いた手ほどの長さになっていた。太さも、指五本を縛る紐の円周よりも太くなっている。その剛直は解き放たれる時を待ちながら、その身をびくんびくんと震わせ、先端の口を魚のようにぱくぱくと開閉させていた。だが、一物の中で栓をしたように入り込んだ九尾湯が、一物の根元を取り囲む九尾湯がそれを許さない。放とうとする衝動を強烈な締め付けと挿入によって封じ込め、その上に内壁を擦り、カリや裏筋を舐め擽りもどかしく激しい刺激を与えていた。
もはや狂わんばかりに頭を振り、体を左右にくねらせ腰を突き出し、摩擦によって快楽を得て蓄えられた精を解き放とうとする男。その姿を……何処か期待するような視線で見つめながら、魔女は自身の体を湯の触手で拘束させながら、男と同じ高さまで体を持って行く。ズブズブと音を立てて、股間の触手が深く入り込んでいく度、その桃色の膣肉をねっとりと愛撫しながら、じわりじわりと体に染み込む九尾湯に、こちらも体が侵されていく……。
既に幽かに頬は火照り、水の触手の外側を覆うように大量の愛蜜が放出されていた。よく見れば、幽かにぴくんぴくんと体が震えている。体の方は既に準備完了のようだ。
「んはぁ……クスクス♪さぁ新入り君……反省したかしらぁ?」
何処か蕩けかけたようないやらしい笑みを浮かべながら、彼女は自身の腕の拘束を解き、男の眼前に自身の秘所を惜しげもなく晒すと、そのまま二本の指でそれをさらに拡張する。
「はぅっ!ひぁぁっ!はっ、反省……ふぁぁぁぁっ!」
ずぶり、と二穴の触手がさらに侵入する。肛門側が小腸を侵しきりさらに上に身を踊らせると、亀頭側は一瞬先端まで触手を移動させ、走り抜けそうになった精液をおびき寄せると、そのまま再度深く侵入し、精の篭もったスペルマを押し込んだ。
「クスクス♪ねぇ新入り君……キミが『反省しております。どうか私の粗チンを、麗しい御主人様のヴァギナで受け入れて、まっさらザーメンを御主人様に捧げさせて下さい』って言ってくれたらぁ……私、キミのモノを受け入れてあげてもいいよ……ふふっ♪」
彼女の言葉がしっかりと聞こえているのだろうか、それは分からない。だが最早半狂乱になりつつある声で、男は形振り構わず叫んでいた。
「うぁあぁあぁぁぁあっ!ごしゅ、ごしゅゃゅっ!ごしゅじひぅああっ!はっ反省、はんせひぃしてぇはぁうあぁあああああっ!」
「ん〜?何言ってるのか分からなぁいよぉ♪」
男の言葉を邪魔するかのように、触手は彼の中にその身を出し入れし、最早神経の集合体となった内壁を引き延ばすように圧迫し、前立腺をさらに責め立て、精の生産と放出を早めていった。雷撃によるボディブローのような、刺激と鈍痛が入り交じる快感は、男の意識を確実に削り奪う。だが、逝くことは出来ない。その権利は彼女が握っているのだから。
「んっ……じゃあ、これなら言えるかな……『御主人様ぁ、反省しますから犯して下さい』……んぁっ……はい♪新入り君、言って……イって♪」
最早彼女も蕩けきっていた。言葉も命令から、何処かお願いするような口調に変化している。
その違いに、しかし男は気付く筈もない。筈もないが……。

「――はぅぁあああああっ……ごっ……ごしゅっ、ご主人さまぁぁっ……はっ、はんせ、反省しますからぁぁっ……ぼくを……ボクをおっ、おかし、おかしてぐだざぁぁぁぁぁいっ!」

「――んん〜……及第点だけどぉ……許す♪」
言葉の残響が消えるのが早いか、彼女はそのまま触手を動かし彼に抱きつくと、拡張された陰唇の中に巨大化した一物を一気に招き入れた。
「んっ……♪んぁああああっ……♪お、おっきぃぃ……♪」
九尾の魔力を真っ当に受け、精が蓄えられたその一物は、今や馬並のモノに変化していた。色も従来の肌色から、どことなく褐色気味に変化しており、隆起した血管が何とも雄々しい。
普通であれば膣が壊れる一物を、彼女は殆ど難無く受け入れていた。それどころかアイスキャンデーをしゃぶるように体を上下させ、奥へ奥へとそれを招いている。
「んかぁぁぁぁぁぁぁっ!」
己より小さい魔女の体に、好きなようにされている男。水触手に支えられての奇妙な正常位の交わりの中で、男は必死に腰を振っていた。己の内でたぎる衝動は、しかし彼女の膣の中でも放たれることはない。未だに尿道を九尾湯――彼女の魔力が塞いでいるのだ。
「んはぁっ♪はぁあっ♪んあぁあっ♪もっと♪もっと激しくぅ♪おくぅ♪おくにもっとぉ♪」
どうやら先程までは、完全に九尾の魔力に染まるのを我慢していたらしい。それが今、我慢する必要が無くなり、完全に解き放たれていた。宣誓では叫ばれなかったが、サバトの所属者はまずこれは当然のこととして受け入れている。理由など簡単だ。
――欲求、欲望、理性からの解放。永遠の若さと言う殺し文句の裏にある標語がこれであるのだから。
顔を桃色に染めながら柔らかな膣肉でかちかちに固まった一物を圧し、魔性の肉襞で全体に絡み付いていく。張り詰めた表皮を舌のように優しく舐め、裏筋にぴとりと張り付き、カリに沿ってやわやわと蠢き、そして鈴口の触手を貫いて、中の皮膚を擽って――!
「ひぁっ!ひぁぁああっ!」
一方の彼も、触手の拘束など意味がないかのように激しく動いていた。彼女の肉を抉るように、突いて、抉って、貫いていく。擦り切れそうな理性の中、その動きだけは続いていた。
一突き毎に、締め付けを強めていく彼女の膣、圧迫を強める毎に、拘束を突き破るように暴れる彼の一物。当初の罰など忘れたかのように、互いに快楽を貪り、抱き合い、叫び合っていた彼女ら二人。その激しすぎる行為を、しかし誰も気にすることはない。それがこの場所では『当然』だからだ。
「んああああっ♪♪あはぁあああっ♪♪んあぁあああああっ♪」
「ふぁああああっ!ふぁああああああっ!」
突かれ、抉られるうちに、彼女の子宮口が徐々に開き始めた。同時に、彼の尿道に詰まった彼女の魔力の結晶が、その位置を一物の先端へと身を押し進めていく……大量の精液を引き連れて!
「ひぅっ!ひぁぁぁっ!出るっ!で、でちゃうっ!だしちゃううぅぅぅぅぅっ!」
「だしてぇっ!だしてぇぇっ!わたしのなかにびゅくびゅくだしてぇぇっ!」
興奮しきった二人は、叫びながら肉を打ち付ける。ぱつんっ!ぱつんっ!と盛大な音を立てながら、交わり合う二人。やがて、双方共に限界がきたらしく、互いに体を反らせながら腰を打ち付け――突き出された一物を、彼女は盛大に締め上げた!

「「んあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」 びゅっ!びゅるるるるぅるるるるるるるぅぅぅぅ〜〜〜っ!びゅぐっ!びゅぐっ!

まるで堤防が決壊したかのように、極太の一物から大量のスペルマが溢れ出し、彼女の子宮の中に叩きつけられる!魔力との親和性の高まった精液は、彼女の子宮の中で即座に魔力に変換され、彼女の全身にすぐさま運ばれていく!
一滴も外に漏れることがない精液。曇った音が結合部から漏れ、幽かに見える一物が強烈に脈を打っていると言うのに、その隙間は愛液でぬらぬらと光るだけで、そこに何の白濁も存在しなかった。

びゅくっ……びゅくっ……

やがて精液の勢いが衰えるにつれ、二人の勢いも、触手の拘束も緩んでいく。ちゃぽん、と軽やかな音を立てて、温泉に入る二人。ぬるりとした暖かな感触が、彼ら二人を包み込んでいき……。

「……はふぅ……ふぁん♪」
「……ぅぅ……んううっ」

……再び水音を立て始めるまで、大した時間は掛からなかった。



「……善哉、これが現状の理想郷じゃの、ダーリン♪」
「そうだねマイハニー♪『愛欲に限りはなし、されど人体には限りあり』だからねぇ……」
自身の伴侶の逞しい胸板に舌を這わせつつ、ルミルは楽しげに口ずさむ。それに応えるように彼女の毛並みを撫でつつ、ルミルの夫である彼は歌うように呟いた。
彼らの周りでは、思い思いの方法で伴侶や『お兄ちゃん』と愛を交わし合うサバトの信者がいた。
ある魔女は兄を触手に変え陵辱させ、
ある淫魔は羽根の内側を肉襞へと変えて相手の全身を舐め回し、
あるアマゾネスは雄叫びを上げながら騎乗位で相手の一物を激しく扱き……。
嬌声、喘ぎ、水音、肉音。様々に混ざり合いながら九尾の魔力に満ちたこの空間を構成していた。そこに何の苦しみがあるだろうか。そこに何の悲しみがあるだろうか。常識という枷が取り払われ、正常という轍が埋められ、理性によって埋め込まれたエスを掘り出して体現化した、この愛欲の空間にそのような物があるはずがなかった。
既にテッサもルミルが許可を出し、新入りのリードを行っている。ならば総主たるルミルがやらないのは……明らかにおかしいことである。
「……ダーリン、儂を……ううん、私を抱いて♪」
「……当たり前さハニー♪僕はキミの願いの……一歩先を行く男だろ?」
男のその声と同時に、この空間の男の中で、おそらくは一番大きいであろうペニスを、既に期待に濡れるルミルのヴァギナに全て埋め込んだ。
嬌声と共に、ルミルは膣を締め付け、男のそれをしゃぶる。男はそれに合わせて、腰を打ち付け深く深く貫いていく。
この広間の音に、新たな音が加わった。光も闇も、時間も分からぬ中で、その音達は盛大に響き渡り、鳴り止むことはなかった……。



……ふぅ。
「有り難いのう。全くもって有り難や」
「ハハハ☆また次も頼むよ、番台さん♪」
そう、五日分の貸し切り料金を私に払うルミルさんと……旦那のエッサムス=カニボー氏。まるまる五日間やり続けただろうに、何なのだろうこの体力は。
他のサバト信者は軒並み、幸せそうな顔をして夢の中だ。あの過剰な九尾湯の魔力の中で、人工温泉を解除させつつ人数分の簡易ベッドを'ゲイシャ'さんと別室に用意し、移動させたわけだけど……その中でも平然と交わっているのは実際のところ、体力的に果たしてどうなんだろう。
因みに、彼女達は既に退館している。大体男性側が女性を背負う形になっていたのが何ともシュールだったように思う。
「では、今後とも当館を御贔屓に……」
客に対しての最低限の礼儀にチップを上乗せした挨拶を返し、ルミルさん達を見送る私。多分エッサムス氏を見送ったら'エンプレス'様としてすぐ戻ってくるのだろう。その時までに私がしなければならない仕事を、今一度確認しなきゃね……などと考えながら、自室に戻ろうとドアを開くと……。

しゅるん♪
「ウェルカム♪」

……えと、済みません。間違いなくここは私の部屋のドアの筈でしょう。なら何だろう、この私の全身に巻き付くもふもふした黄色の尻尾は。何だろう、妙に嬉しそうなこの聞き覚えのある声は。
――そして何だろう。この目の前で妙に艶々した肌を持ち、明らかに私を待ちかまえているかのように両腕を伸ばす彼女……おねぇさまは……っ!

――部屋境の短いドアの敷居を抜けると、そこは素敵なお部屋でした☆
「っていやあああああああああああああああああああっ!」

fin.







おまけ〜妙に艶々していたわけ〜

「――ふふふふふっ……いいわぁ……もっと激しく……そうっ、そうよっ!私を壊しちゃうくらい激しく突いてぇっ!」
感極まったように叫ぶハンス。その全身は、既に白濁した半液体のパックが施され、今一度放物線を描き彼女の体に塗り重ねられていく。
それを魔力で増やした尻尾で拭うと、そのまま自身の口に運んだ。その味にうっとりと目を細めつつ、突き上げられる快楽に再び声をあげる。
「うふふ……♪さぁ、もっと……もっと出してぇ……わたしをもっと……もっと綺麗にしてくれるんでしょお……♪」
そう語りかける相手は、既に瞳は正気を失い、ただ己の獣性のままに彼女の股間に向けて腰を打ち付けていた。
彼だけではない。彼の向かい側にいる男もそうだ。ただ己の尽きぬ欲望のままに、彼女のアナルに向けて自身の剛直をもって貫いていた。
教会による、『サバト及び売春宿デルフィニウム』に対する一網打尽の計画。近頃動きのおかしい一部強硬派の動きを、夫である元領主の情報網から突き止めた彼女は、久しく出していなかった性的衝動を解き放つ好機と捉え、迎え撃つことにしたのだ。
動機はさておき、教会が与えた暗示を突き破るレベルで大量の九尾の魔力を浴びた、内通者となる筈の教会の信者を逆スパイにしてわざとそれとなく情報を流し、こうして大量に教会兵士をおびき寄せたのだ。
結果――51Pと言う凄まじい野外プレイが宿周辺の森で行われていた。
尻尾を魔力で大量に増やしたハンスは、一部の尻尾を自分の人間部分に変化させ、教会兵士達を犯していた。四十八手+ハンスと周りの二人だ。
よくもまぁ、ここまで愛欲の空間を作り出せたと思わざるを得ない。が、しかしこれでもまだハンスには余裕があるようだ。まさに、『愛欲に限りなし』と言うことだろう。

「ふふ……っ♪もっと……気持ちよくなりましょう……♪」

その声に反応するかのように、兵士達は精を盛大に彼女に向けて放っていた。その顔に、屈辱や苦悶の表情を浮かべる者は、誰一人としていなかった……。


――数日後、何事もなかったかのように強硬派の面々はアジトに帰還したが、何故かここ数日間の記憶を完全に失っていた。スパイとして忍ばせたはずの男も含めて、全員覚えていなかったのだ。ただ一つ、何かを目指していたような感覚だけを残して……。
そしてその数週間後――件の強硬派の一派は突如崩壊。メンバーは全員、行方が分からなくなった。
教会側はすぐさま原因を探ったが、強硬派のアジトに資料はなく、未だに原因は不明だという……。

fin.








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