2日目:パーティ




パパパパパパパパパパパンッ!
『H@ppy Birthd@y 2 U!!!!』
クラッカーが盛大にうち鳴らされ、俺達はもう一人の客、あの女性に叫んだ。主賓である彼女の方はあまり表情の変化が見られないが、幽かに口の端がつり上がっているところから、一応は楽しんではいるらしい。
『ほらほらぁ!ヤヨイちゃんはもうちょい笑いな!』
クレン氏が彼女の背中をバンッ!と叩く。彼女――ヤヨイ・クリシュバール――は少し戸惑ったような表情をしている。はっきり言って、《酔っぱらいに絡まれる美女》の構図だ。
………ん?ヤヨイ・クリシュバール?どっかで聞いた気が………。ま、いいか。後で思いだそう。
………そういえば、とニクスの腕を見る。やっぱり血管が浮いている。ヨール………タイミングは考えろよ?食事会の時に襲おうとするなよ?…………キース、だから笑顔でこっち見んな。マッキンは………わりと食べ方が丁寧だな………ドミナインはジャックに魚について絡んでやがる………いい迷惑だ。
『…………さ〜、あそこの氷の部分に穴あけりゃさぁ、なまらデカな魚が結構いるんだぜよさなっしゅ』
『…………』
…………本当に迷惑そうだ。しかしドミナインのあの語尾は何だ?妙の段階を遥かに越えて変だぞ?どこの訛りにもあるわけがない妙な言語が完成してやがる。
………って何冷静に観察してんだ俺は!?楽しもうぜ、折角のパーティなんだからよ。
………まぁポテトサラダは材料が揃ってたからそれなりに………ん!このヨールの肉料理、中々いいじゃねぇか!ワインと一緒に食べた時の味わいが!
「なぁ!これ、どんな味付けしたよ!」
既に少し酔っていた俺は、叫ぶような口調でヨールに尋ねた。
『あ?これかぁ?主に塩と胡椒だぜェ。旨いのは当然、オレサマが作ったからだなぁ!』
わぁお、自信たっぷり。
『ちなみに、ヨールの料理に合うように、私はワインを選んでますので、普段の四割増しほど旨くはなってる筈です』
わぉわぉ、こちらも自信たっぷり。
『それにしてもこのワインも中々いい味してんじゃねぇか』
『お誉め言葉、ありがたく受け取らせて』
『堅いぞ、キース』
『ソウダソウダ!』
「何で片言なんだよドミナイン!」
『MAZIDE!?』
「片言が酷くなってる!?」
『………ドミナインほ酔ひやすひ人種くぁ………』
『そういうお前はど〜なんだよぉ、ジャックちゃん』
『あーダメダメ。ジャックも滅茶苦茶酒に弱い』
『この根性無し共がぁ!俺様が直々に』
『アル中になりますからやめてくださいね、ヨール』
「『ハハハハハハ……………』」
こうして、騒乱のうちに食事会は終っていき………。



『HeY!Hey!Wasshoiwasshoi………………』
んで、結局この展開になるわけだな。主賓のヤヨイ氏を強引に巻き込んで(ウォッカで酔わせて)大カラオケ大会。つーかクレン氏、何でアニソン知ってんだ?
酒が入っているので、俺も少しハイになって普段は人前で歌わない曲もいくつか歌ったが………Doomのメンバーには敵わない。どっから仕入れてきたよ?その曲。
俺は、自室からギターをとってきて伴奏をした。そしたらヨールが、こんなことを叫びだした。
『Yeah!これから始まるKO*R@*V0.T@@@@@@@@ime!!!!早速行ってみようぜぇ!』
な、何だ?何をさせる気だ!?コラボ!?
『メイ!バスん中で弾いてたあの曲をやれ!キース!メイの伴奏に会わせてソロをやれ!そしてヤヨイさん、俺と素晴らしい一時を………って痛ぇっ!』
あ、成程。ライブ会場の続きを、俺が作ったあの曲でやるわけだな。よっしゃ。ヨールの抜け駆けは残り三人が征伐(マッキンは早々に酔い潰れている)しているから問題なし。


tirattarlar,tilatara,tilattarlarar………


kykykykykyouieeeen,kyuokyukilakyukilakyuorn,larar.....


しっとりムードだが、こんなコラボもありだな。激しいのばかりがそれじゃない。
その時、ふと、ヤヨイ氏の顔に陰が差したのだが………、舞い上がっていた俺は気付かなかった。まぁ………気付いたとしても、先のことは変わらなかっただろうがな。
この後、ヤヨイ氏は自分のヴァイオリンを持ってきて、俺らが別の曲をコラボした時に、合わせて演奏してくれた。
素人ではない、明らかなプロの手付きだった。………一瞬何かが頭に引っ掛かったが、酔いのせいか、頭が回らなかった。
兎も角、この今と言う瞬間が、楽しい一時なのだ。余計なことを考えず、音の波に埋もれていられる、この一時が―――。


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