夢:救出、逃走、そして――
(戸を力強く叩き壊す音)
――……霜月っ!?――
――!治樹さん!?どうしてここに!?――
――霜月っ!逃げるぞっ!――
――え、あ、きゃっ!――
――待てぃ…………咎人よ…………!――
――我等は貴様を許しはせぬ…………永劫にな!!――
――咎人に誑かされし雪人よ…………貴様も同類じゃ!――
――この山から………生きて出れると思うな!――
――魂すら…………逃がしてなるものか!――
――…………時は満ちた。皆のもの!咎人治樹ならびに雪人…………咎人霜月を粛清せよ!――
――お姉さん!?何でお姉さんが!――
――長老からのお達しだ。咎人治樹ならびに咎人霜月を殺せ、とな――
――嘘よ!どうして霜月お姉さんが咎人なのよ!あの治樹とか言う咎人に誑かされただけでしょう!?だったらその男だけ殺せばいいじゃないの!――
――………誑かされたから、だろうな――
――…………そんなのって酷い!どうしてぇ………どうしてぇっ!どうしてなのよぉっ!せっかく村に戻ってきたのに!また一緒にいられると思ったのに!…………みんなあの男が悪いんだ!瀬戸治樹!あいつがお姉さんを殺したんだ!………あの男さえいなければぁぁぁぁぁぁぁぁっ――
――(霜月がこの村に戻ってきた時点で、長老は、もう霜月を殺すつもりでいたんだろうな。霜月がこの村に戻ってくる場面を見ていれば、あの子も、その覚悟は出来ていた………いや、出来る前に長老に歯向かうこともありえたから見せなかったのか。霜月が入った部屋、それは通称'極刑室'、死刑にするための罪人が余生を過ごすための場所………。
きっと長老は今頃、胸をなで下ろしているだろうな。咎人治樹がそこから彼女を連れ出した事で、公然と殺す口実が出来たのだから)――
――…………治樹さん、どうしてここに来たのですか?――
――…………どうして、だって?――
――…………ここに来たら、貴方も殺されてしまう。それは貴方も分かっているのでしょう?――
――………あのなぁ――
――…………はい?――
――お前が好きだからに決まってんだろっ!好きで好きでしょうがないからっ!別れてっ!離れてっ!生きている限りずっと後悔するくらいならっ!お前を連れて帰って呪われている方がマシだっ!殺されてしまう方がマシだっ!――
――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!――
――………正直、皐月には済まないと思ってる。だが、あのままだと、俺が俺じゃなくなってしまうような気がして――
――馬鹿ぁっ!――
――おうわっ!――
――どうして貴方はそういつも直情傾向型なんですか!向こう見ずで!何よりも………せめて自分を大切にしてよ!――
――…………すまん………――
――………嬉しかった………――
――…………え?――
――………来てくれて、嬉しかったの………――
――…………そうか………だが、今はそうも言ってられない事態だ………走るぞっ!――
――………ええ!――
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