Epilogue





こうして、俺のアラスカ旅行は終ったわけだが、この後ちょっとした後日談がある。


財布君(仮)にDoomのデモCDを渡した直後、財布君(仮)がかなりの速度で震えだしたので、どうしたのか聞いてみた。
「…………………………………………キタ━━(°∀°)━━!!!!」
あ、なんかぶっ壊れた。何故に2ちゃん語?
「…………どうしたよ?」
聞いてみたが、財布君(仮)は興奮したまま気絶していた。…………謎だ。



部長にも、打診していたようにデモCDを渡しておいた。果たしてどんな結果がかえって来るのやら、と思った矢先、俺が部屋を出ようとした瞬間に呼び留められ、
「………おい、こいつらの連絡先を教えろ」
部長、口、悪すぎ。まぁ教えたがな。



更に数日後、旅行のことを思い浮かべながら曲を四曲ほど作った時の事だった。
………ダダダダッ、ダダダダッ、ダダダダッ、ズーン………。
………こんな妙な音を出して走るのは………。
「た、大変です………ゴホゴホ」
やっぱり財布君(仮)か。しかも所々に擦り傷があるし。
「で、どうしたんだ?何が大変なんだ?」
仏滅…………と言う雰囲気ではなく、どちらかと言うと大安、と言った大変な事らしいが……。
………まさかな。
と考えながら財布君(仮)の返答を待つ。
「あの、ヤヨイ・クリシュバールが、来日リサイタルを開くそうです!」
まさかだった。まぁ来日ぐらいだったら
「それで、わが社の全面的なタイアップを要請したんですよ!」
………そりゃ驚くわな。
「あぁ、そうか。で、それが俺と何の関係が?」
あくまでも表面上は冷静に振る舞う俺に、興奮しながら財布君(仮)は叫んだ。

「その際に、前座演奏や伴奏役として、何人か頼みたいとの要望がありまして、そのうちの一人にあなたの名前が入っていたんですよぉ!」

…………わぉ。さすが世界のヤヨイ、やることが違うわ。
「…………来日はいつだ?」
「えっと………二ヶ月後です」
そう叫んだ後、財布君(仮)は、「他の担当者にも伝えなくてはばっ!」と異常に興奮しながら部屋を出ていった。



二ヶ月後か…………、楽しみだな。
そう思う俺の胸の上で、アクアマリンのペンダントが、静かに、揺れていた………。



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