Phase 2:Dangerous





「………まだ生きてるぜ、バーロー」
愚痴の回数、一回追加。寧ろ自分を奮おうと言ってるのに過ぎねぇが……。
オレは右腕につけた遊〇王のデュ〇〇〇ィス〇状の兵器を眺める。
オレが出て直ぐに、COREはL.E.D.のS.O.S.コールを受け取ったらしい。ちょうどその場に遊びに来ていたジェノが造った、多機能兵器がこれだ。
主な機能は三つ。
レーダー機能の『アンドロ君』。
薬剤処方の『スケープ君』。
そしてレーザーの『リソナ』。
『リソナ』には因みにガンモードとソードモードがある。
(こいつと………)
オレは左手を眺める。
発明家Xenonお手製のプラズマ式超小型砲弾誘導装置、通称『フォーチュン』と、METALIC MINDから預かった(らしい)特殊合金の盾。これで守りは完璧だ。当たる数も少ないわ当たっても通すことはないわで。
(こいつのお陰でな)
悲しいかな、時間がなかった所為もあって、多機能兵器にPC機能が入れられなかった。オレの十八番の電子攪乱が出来たら、多少はもうちょい速くカタが付くんだが……。
ドゴォンッ!
「うおっ!」
まったド派手にぶちこみやがって………ノータリンのデータ共が………。
「失せろっ!」
オレは『リソナ』をビームモードにして、敵の一体の――腰につけた爆薬を目がけて発砲した。
――命中!
爆風がオレの髪をかすめた。楯に篭りつつ『アンドロ君』で敵ユニット数を確認。
「27………」
巧い感じに二曲巻き込めたらしい。破壊された曲データは無害化され、やがて消去されるか別のデータの修理キットに変化する。
オレは弾を避けつつ、それを回収。『スケイプ君』にしまっていくのだ。
と、通信回線が繋がる。相手はL.E.D.の面々と――WARの奴だ。
「もしもし、こちらスネーク。敵基地前にて攪乱作戦実施ty」
「緊急事態だ。冗談を聞いている間ではない」
「………」
お硬いこって。こういう時に「冗談が言える口なら無事だな」とでも言えっつぅの。
「………で、何が緊急事態――」
ドガァンッ!
爆音の所為で一瞬通信が切れる。盾から顔半分出して確認すると、相手がこちらに向けているのは――ロケットランチャー!?
「っとと逝けやっ!」
『リソナ』で一発、銃口を狙うが、距離の所為で相手の肩をかすめるのみ。事前の報告では、痛覚は一切存在していないっつーから――反撃が来る!
予想通り、すぐさま二回目の衝撃が盾を震わせる。何とか吹っ飛ばされねぇように両手でしっかりと盾を持ち、次の一撃を確実に決めるため、『リソナ』の出力を一段階上げる。
「っるいがとっとと死んでくれやぁ!」
相手が打ち終り、弾を込める瞬間は意識が逸れる。その隙を狙い、オレは引金を引いた。
一瞬後――。

ドガァァァァァッ!

戦隊もののボス敵の如く爆発した敵を眺めながら、オレは「一撃必殺」と軽く呟き、通信機を取り直した。
「――大丈夫か?」
そこには変わりのないWARの声。少しムカついたが、オレはそれを抑えて尋ねた。
「大丈夫だがよ、緊急事態って何のこった?」
「そこに居てくれ。カ〇リー〇イ〇と武器を送る。そこに説明書きも入れてあるからそれを読め」
「なっ!説明しやがれ!」
まさか――通信回線がハッキングされてんのか!?それともあいつの無精か!?かだが、WARに限って無精はねぇ。絶対。そうじゃなきゃあのうるせぇ兄貴が「アイツは勤勉な奴だぜンメェェ〜モリィ〜ズ!」とかギターかき鳴らしながら言う筈ねぇからな。
ったく、で、何処から箱が――


ドスォゥンッ!


…………。
あ、あのアマ…………。
「よりによってオレのすぐ右横に自由落下で落とすかよ!?殺す気か!?」
ドガァン!
………まぁいい。一先ず――!
「残り26曲をとっととぶっ壊す!」
『リソナ』にエネルギーカートリッジをねじ込み、オレは相手目がけてぶっ放しまくった。



「マジかよ………」
信じらんね〜。
全滅させた後、オレはカロリーメイトを食べながら、WARから届いた、L.E.D.の偵察記録を眺めていた。
IXIONからの偵察報告には、基地で何やら新たな動きがあったらしい。曲が慌ただしく動いて部品を持って行く姿を捉えた写真から――拡散粒子砲を創り始めてやがるな。こいつぁ。ジェノに見せてもらったミリマガの部品形状に似てやがる……いや、寧ろそっくりだ、ありゃあ……。
つまり、L.E.D.氏も協力させられてる、っつーこと………!?
そこまで考えていたオレは、次の写真資料、photongenicのそれを見て愕然とした。
「――黒い………冥?」
次に写っていたのは、連行されるL.E.D.氏と、その周りにいる四名の護衛。だが――その護衛は明らかに、オレの、いや?DX界隈で知らぬものはいない顔ばかりだった。
「――冥に………蠍嬢………パラリラに………?」
そこでオレは、絶対的にいる筈のない曲を発見した。
「嘆き嬢………?」
今朝――いや、つい今先程までオレと一緒の列車に乗っていたはずの、嘆きの樹の姿が写っていたのだ。
今朝着ていた服ではなく、普段の戦闘服を着て。
お側に、朱雀を引き連れずに。
「………」
おかしい。お嬢の性格だ。外に行くのにわざわざ普段の服で出る筈も無いだろう。嬢のトランクには、ありったけの外着が入っている筈だ。それに朱雀は意地でもお嬢についていくぞ?
「――そういや、お嬢は自宅警護にスクスカを雇ったとか白虎が前に言っていたな……」
それを考えると、冥もいる筈がない。しかし、ここに写るのは、いずれも真っ黒な――見慣れた曲達だ。
だとすると考えられる事は――。

「………レプリカかよ………」

バグ・データの野郎………どっかから皆伝曲のデータを調べて劣化版戦闘曲データを作り出しやがったな………。このネット全盛の御時世だ。データなんざどこにでも転がっちゃいるだろうさ。
しっかし………だとしてもこいつはマズいぞ……。四曲中三曲はオレの兄弟中でも選り抜きの曲。残り一曲はジェノの所為で食らい慣れてるとはいえ、攻撃力が半端ない曲だ。
助けに行くに当たって、電人は使えねぇ。でか過ぎるからL.E.D.氏が巻き添えを食らっちまう。となると………この展開なら行かされるのはオレだ。間違いなく。
だけど、オレじゃ劣化版の四曲に指すら立たねぇぞ。どうすんだよ………。
………そういえばWARのヤツ、『武器』を送るとか言ってやがったが……。
先ほど落下してきた箱を、今一度確認してみた。

箱の隅に置かれていたのは、武器のアタッチメントキット。
片方は、L.E.D.のロゴが入った多機能兵器。ディスク型兵器接着用のそれが持つ機能は、全て攻撃型だ。
至近距離用ドリル:LOVE IS DREAMINESS
中距離用ビームキャノン:ErAseRmoTor
遠距離用拡散レーザー砲:LASER CRUSTER
――完全にぶっ壊す気だな、こりゃ。
んで、もう一つは横にSOLITION BEAMと書かれた、盾に装着するタイプのスコープだ。こっちは使用回数が完全に決まってやがる。代えのバッテリーなど存在しやがらねぇらしい。だが――盾から体を出さずに攻撃できるのは魅力的だ。
「………」
敵さんお出まし前に、さっさとイクイップしとくかね。

アンドロ君のレーダーには、敵の情報はない。だが――妙に静か過ぎんだよな………電人が暴れてるなら、もう少しこちらに回ってきても良いもんなんだが。

――まさかな。
いや、でも有りうるか。
俺はErAseRmoTorをオンにし、直感で撃った。
カウントは………十。

ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「おわっ!」
何だよこの警報は!耳がぶっ潰れそうな程響くぞ!?
俺は片耳を押さえて伏せりながら、スケイプを開いた。
「――おうおう、便利なモン入ってんじゃねぇか」
そこにあったのは、対音波兵器用耳栓。しかもよく見るとsgの文字が――って俺のかい!勝手に改造すんなよ………ったく。
辺りを見回しながら耳栓をつけ、俺は重装備のまま移動を開始した。
時間は――17時。そろそろお天と様もお休みの準備を始める時間だ。相手が暗視ゴーグルやサーモゴーグルを完備していない限りは、オレのアンドロ君が俄然有利になってくる。
さっきの空発の影響か、黄色い塊があちこちにその姿を表している。お、電人を表すマークも表示されてら。アイツラ案外近くに居たんだな。
………試し撃ちしてぇな。幸い電人はそこまで近くにはいn
プルルルルル…………
何だ?回線がつながってら。チッ。お預けだな。

『炸裂』
「『電光チョップ』………もっとマシな合言葉を考えろ」
ばれるぞ?敵に。
『早々使えるわけじゃないからな。この無線も』
暁はやや疲れた声を出して俺に話しかける。相当キてやがるか?
「はいはい。んじゃとりあえず用件よろ。帰還命令か?」
冗談混じりのオレの言葉は、どうやら正解だったらしい。クソ。こうなるなら遠慮なく試し撃ちしときゃ良かったぜ。
『分かってんなら話は早い。今からエアフローモードを教えるからこっちに来い』
………は?
ちょ、ちょ待てやっ!
「なぁっ!迎えに来るんじゃねぇのかよ!」
どうして自力帰還なんだよ!疲れてんのはオレも一緒だ!
だが返ってきたのは怒声。それも相手を一発ですくませるような。
『生意気言うな!お前のさっきの一発で一気に敵が現れて対応できねぇんだよ!電光チョップは充電時間と使用後の反動のわりに範囲が狭いから使えない!』
た、対多数兵器ぐらい想定して装備しとけよこのスカタン半島!………って文句言ってもしょうがね〜か。帰らなきゃオレの身があぶねぇ。
「あぁ分かった分かった!何をプログラムすんのか教えてくれ!」
もはや怒鳴り合いに近いペースで叫び合うオレら。
「一度しか言わねぇからよく聞けよ!SOLITION BEAMについているボタンに『お前のSP+DPの難易度を全て足した数字』を打ち込め!ビギナーはいらないからな!」
そう一息で叫ぶと、暁は通信回線をいきなり切断した。切断寸前に爆音が聞こえたっつー事は――マジでドンパチやらかしてんのか、あっちは。
えーと?俺の全難易度合計?ビギナー除く?………成程な。よく考えたもんだ。オレ以外殆んど知る筈のねぇ情報を暗号に使うたぁな。
俺は早速言われた通り、盾につけたSOLITION BEAMに暗号を入力した。
――その瞬間だな。

「――ぉぉわわわぁっ!」

突然、盾の周辺の物質が浮かび上がった!その物質には盾自身も、そして俺も含まれているわけで。
とっさに盾を握り、体勢を立て直すと、盾の中心部分に、謎のスイッチが数個盛り上がっていた。その上には、特殊な文字――リソナのよく使う暗号だな。何々………。


『このスイッチは左からブースト、アクセル、ブレーキ、ウェポンだ。ウェポンは押すと、SOLITION BEAMを使用するものとする。
ブーストは使い過ぎると落下する。加減は右のメーターで調節してくれ。フルレッドになる前にブレーキを押せば、メーターは回復する。以上を用いて、目的地へと目指せ』



………何でゲームの解説書風なんだよ!作成者出てこい!
だがこの妙に親切な解説のお陰で、操作は何とかなりそうだぜ。っしゃ、まずはアクセルギア1で。lower worldの奴に借りたバイクの要領で――引く!

――フォウンッ!

「おわしっ!」
は――速……地上のスクラップがゴミのようだぜ………って元からゴミじゃねぇか。落ち着こうぜオレ。興奮自重。
アンドロ君を眺めながら、俺は電人のいる方向へと盾を切り――敵発見。
「うっしゃ」
試し撃ち実行!
「――標準良し、前方十二時の方角、固まっている敵兵の中心――」
そしてオレはスイッチを押し――叫んだ。

「ソリィトォォン、ビィィィィィィィィィィム!」

ビギュアォオンッ!

「おぉわっ!」
発射時の反動でオレは一瞬バランスを崩しそうになったが――何とか持ち堪えた。ところで………命中は――。

ENEMY DESTROYED!

盾に浮かんだ文字に、オレは思わずガッツポーズを決めた。


「…………っと、ようやくか」
盾の上でブーストを加減しつつ直進していたオレは、前方一時ににようやく目的機を発見した。……っつーか、あれだけキツそうな声出しといて、周辺が完全に屍屍類類じゃねぇかよ。しかも電人に目立った外傷もねぇし、言状不一致も甚だしいぜ。
………神経系統やられてる可能性が無きにしもあらずだが、さて、ど〜すんだオイ――ん!?
「ヤバっ!」
電人の死角の位置に、まだ敵がいやがる!しかも狙う場所は――!
暁!お前このままだとマジでfatal attackされっぞ!?
オレの盾のエネルギーは――ソリトン使えないほどにギリギリか。………なら仕方ねぇ!
オレは片腕で盾の取っ手を必死に握りつつ、利腕でアタッチメントキットをいじくり、そして――!

「――レェェェザァァァクラスタァァァァァァァッ!」

標準ロックオン。引金を引いた。
「――おわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
………反動デケェよ!これ曲が使うもんじゃねぇだろ!盾を掴んでいる片腕が千切れそうだぜ!何とか調整しとけよ……。
「――ま、でも、この威力じゃしょうがねぇか」
見渡す限り、地面にいる敵兵士は全滅したようだしな。全く、凄まじい威力だぜ。
うっしゃ。後は電人に乗り込むだけだ――と思ったんだが。
「んじゃラストに、ブーストォ!――って、あら!?」

盾のエネルギーメーターには、'empty!!!'の文字がはっきりと。

「――っつー事はこの展開――!」
オレの嫌な予感は的中した。いや、的中しない筈がなかった。

ガゥンッ!
「!?」
突然推進力を失い、傾く盾。そしてそのまま――!

「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ………」

荷物もろとも、オレを盾から放り出した!――やべっ………!この高さじゃ………っ!
オレの頭の中に、黒いローブを着てドクロの仮面をつけた死神の姿が浮かぶ。そういや、あの曲もこいつの家出身だったな………。
「くっ………」
万事休すか………そう思われたとき、オレの体が急に一気に引き上げれる。
「――ぐぁあぁっ!」
進行ベクトルが急激に逆転した事に、俺の体がついていけず、結果――Gで意識が吹き飛んだ。



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